海運分野におけるCO2排出削減に関する研究
- 海事・港湾
- 安全・セキュリティ・防災・環境
研究期間:2020 - 2023
(竹内 智仁 ~ '24年3月) (鈴木 晋也 ~ '23年6月) 室井 寿明 (黒川 隆一 ~ '24年3月) (石部 雅士 ~ '24年4月) (松坂 かん奈 ~ '24年3月) 小松 大祐 (坂井 啓一 ~ '23年6月) (井上 慶司 ~ '23年3月) (竹島 晃 ~ '24年3月) (一森 純二 ~ '22年3月) (岩田 賢 ~ ’20年7月) (大釜 達夫 ~ ’21年5月) (岡本 泰宏 ~ '22年3月) (高橋 慶江 ~ '22年3月) (野宮 雅晴 ~ '22年6月) (松坂 真史 ~ '22年3月) (山形 創一 ~ ’21年3月) 谷口 正信 小林 渉
研究概要
世界規模での気候変動対策については、国連気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)の下で国別に検討が進められていますが、国際海運分野及び国際航空分野に限っては、国境を越えて移動する交通モードであることから、国別に対策を検討するのではなく、国際機関(それぞれ国際海事機関(IMO)、国際民間航空機関(ICAO))において検討が進められています。
国際海事機関(IMO)が2020年に公表した温室効果ガス(GHG)排出量などに関する第4次調査報告書(4th GHG study, GHG4)によれば、2018年の国際航海に従事する船舶からのCO2排出量は約9.19億トン、世界全体のGHG排出量の2.51%に相当する量となっています。これはドイツ1国分(世界第6位)のCO2排出量に相当しています。また、世界経済の成長につれて海上荷動量も増加しており、2012年の8.48億トンから、8.4%増加しています。
IMOでは、これまで2018 年 4 月に「GHG 削減戦略」を採択し、国際海運分野からの GHG 排出量を 2050 年に半減させ、今世紀中早期にゼロとすることを目指すこととしてきましたが、2023年7月の環境保護委員会(MEPC)においてこの目標を見直し、「2023GHG削減戦略」を採択しました。この中で、2050年頃のカーボンニュートラル等を目指すことが定められたところです。
船上でのCO2の年間排出量は,下記の式で表すことができます。
CO2 TtW = [燃料消費量( g-fuel /年)]×[燃料の変換係数(Cf) ( g-CO₂/g-fuel)]
(ここではCH₄,N₂O排出量を省略)
これまでのGHG対策としては、主に、右辺第一項に着目し、減速など船舶運航上の工夫や各種の省エネ技術の導入(船のハード対策)によるエネルギー効率の向上を中心に行ってきたもの、また第一項の改善は徐々に限界に近づくと考えられ、GHG削減戦略の目標達成のため、第二項の改善、すなわち、重油等の従来燃料からゼロ・低炭素燃料(LNG、アンモニア、水素など)、または、炭素を含んでいるが排出時のCO2のカウントが不要なバイオ燃料等の代替燃料ヘの転換が必要となります。
また、我が国においては国土交通省海事局を中心に、「国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ」を2020年3月に策定後、産官学が連携し、ゼロエミッション実現のため必要な船舶の研究開発、技術実証、関連規則の策定、ゼロ・低炭素燃料の評価といった様々なアクションが取られているところです。
参考 海事:国際海運GHGゼロエミッションプロジェクト (国土交通省HP) 海事:内航カーボンニュートラル推進に向けた検討会 (国土交通省HP) |
このような状況を踏まえ、運輸総合研究所ではその一翼を担うべく、「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会」を設置し、2020~21年度においては、「代替燃料CO2排出量評価手法小委員会」及び「代替燃料バンカリング施設整備促進小委員会」を設置し、それぞれ代替燃料のGHG 排出量に関するライフサイクル評価(LCA:Life Cycle Assessment)に関する調査研究及び我が国における代替燃料バンカリング施設整備のフィージビリティ・スタディ(FS)に関する調査研究を実施しました。
2021年より、IMOにおいて、船舶の燃料における炭素強度(エネルギー当たりのCO2排出量)をライフサイクルベースで評価し、その上限を設けることにより、低・ゼロ燃料への転換を促進し、IMOの削減目標の達成を目指すとする新たな規制案(GHG Fuel Standard: GFS規制案)の導入が検討されています。
このような動きを踏まえ、運輸総合研究所では、2022年度より上記委員会の名称を「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会」と改め、円滑な燃料転換の実現に向けた規制的手法の検討を調査研究の主眼とし、これまでの調査研究によるLCAに関する知見の活用、シミュレーションによる定量的な影響評価なども行いながら、合理的で実現可能な規制案に関する調査研究を進めています。
各成果の概要
代替燃料のGHG排出量に関するライフサイクル評価(2020-2021)
我が国が関連する低炭素・ゼロ炭素燃料(水素、アンモニア燃料)のサプライチェーンのプロセスを詳細に調査し、計画中の水素及びアンモニア燃料の製造プロジェクトをベースに使用エネルギー及びGHG排出量を試算の上、今後の課題として検討すべき事項を考察しました。
概要版 |
代替燃料バンカリング施設整備のフィージビリティ・スタディ(FS)に関する調査研究(2020-2021)
我が国が関連する低炭素・ゼロ炭素燃料(水素、アンモニア燃料)のバンカリング施設整備に関し、施設整備コスト、代替燃料船の投入状況・燃料需要等のシナリオを用いた検討を通じ採算性・実現性の分析を行い、今後の課題として検討すべき事項を考察しました。
概要版 |
海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査研究(共同研究)
(2022-2023)
国際海運からのGHG削減のためのIMOで検討されている船舶燃料中のGHG強度を段階的に引き下げる規制案を念頭に、IMOのGHG削減目標の達成に向けた燃料転換の見通しについてシナリオシミュレーションを用いて試算し、規制の在り方や対応策について考察、提言をまとめました。
報告書:令和5年度海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査研究(共同研究) 本編 附属書1:シミュレーション結果① 附属書2:シミュレーション結果➁ 附属書3:シミュレーションの詳細設定 附属書4:燃料シナリオの詳細設定 |
シンポジウム・セミナー等の開催
国際社会の脱炭素化を見据えた海運・航空分野の気候変動対策に関するシンポジウム
日時:2021年3月9日(火)13:30~16:30
場所:ベルサール御成門タワー
JTTRI国際海運セミナー 新たな船舶燃料のライフサイクルアセスメント
日時:2022年2月24日(木)19:00~
場所:オンライン配信
みんなで実現する船のCO2削減~新たな船舶燃料の導入に向けた国際動向の最前線と展望~
日時:2022年5月20日(金)13:30~16:30
場所:ベルサール御成門駅前+オンライン配信
カーボンニュートラルに向けた燃料転換の戦略~空・海・陸 各交通モードの最前線~
日時:2023年3月28日(火)14:00~17:00
場所:ベルサール御成門タワー3F+オンライン配信
その他
国際海事機関(IMO)第80回環境保護委員会(MEPC80)への
情報提供文書(Information Papar)提出
「Asia and Pacific Transport Forum 2024」での講演
日時:2024年5月14日
場所:アジア開発銀行本部(マニラ)
調査検討委員会の開催状況
2020/10/9 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会」<第1回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1)趣旨説明
(2)海事分野の温室効果ガス排出削減を取り巻く現状について
① 国土交通省 海事局
② 国土交通省 港湾局
③ (一財)日本船主協会
(3)検討の方針について
① 調査検討の進め方について
② 代替燃料バンカリング施設(FS)関係の進め方
③ 代替燃料LCA分析関係の進め方
(4)今後の予定
2020/12/7 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料CO2排出量評価手法小委員会・代替燃料バンカリング施設整備促進小委員会
合同小委員会」<第1回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 海運分野のCO2排出削減の取組全体像と当調査研究の位置づけについて
(2) 代替燃料導入促進に係る取組について
① 水素導入の取組
② アンモニア導入の取組
③ カーボンリサイクル燃料導入の取組
(3) 各国港湾におけるバンカリングの現状について (経過報告)
(4) 海運分野の代替燃料のLCA分析について (経過報告)
(5) 今後の予定
2021/2/8 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料バンカリング施設整備促進小委員会」<第2回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 海外港湾の動向について
(2) 代替燃料バンカリング施設のFSに必要な観点について
(3) 今後の予定
2021/2/12 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料CO2排出量評価手法小委員会」<第2回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 代替燃料のサプライチェーン事例調査について (経過報告)
(2) 海運分野の代替燃料のLCA分析について
(3) 今後の予定
2021/3/2 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会」<第2回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 今回の議論のポイントについて
(2) 本年度検討内容の報告
① 代替燃料のサプライチェーン事例調査について
② 代替燃料バンカリング施設のFSに必要な観点について
③ 海運分野の代替燃料のLCA分析について
(3) 今後の進め方について
(4) 今後の予定
2021/6/4 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会」<第3回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 海事分野の温室効果ガス排出削減を取り巻く現状について
① 国土交通省 海事局
② 国土交通省 港湾局
(2) 令和3年度調査方針について
① 今年度の調査について
② 代替燃料CO2排出量評価手法に関する調査について
③ 代替燃料バンカリング施設整備に関する調査について
(3) 今後の予定
2021/7/12 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料CO2排出量評価手法小委員会」<第3回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) CO2排出削減促進に関する最近の状況について
・代替燃料に関する取り組み
・船社における取り組み
・その他
(2) 調査方針について
2021/7/20 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料バンカリング施設整備促進小委員会」<第3回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) CO2排出削減促進に関する最近の状況について
・国土交通省港湾局における取り組み
・船社における取り組み
・港湾当局における取り組み
・その他
(2) 調査方針について
2021/9/15 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料CO2排出量評価手法小委員会」<第4回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) LCAの評価手法の一例及び試算について
(2) LCAにかかる調査とりまとめの方向性について
2021/10/21 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会」<第4回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 令和3年度調査について(中間報告)
① 今年度の調査について
② 代替燃料サプライチェーン調査について
③ 代替燃料バンカリング施設整備に関する調査について
④ 代替燃料CO2排出量評価手法に関する調査について
(2) 今後の予定
2022/2/3 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料CO2排出量評価手法小委員会」<第5回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 今年度調査について
(2) IMO他国際海運関係者向け発表について
① IMOで議論されるLCAガイドラインについて
② LCAガイドラインに対する日本政府の考え方
③ 運輸総合研究所における試算並びにその結果に対する考察及び課題
2022/2/24 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会
代替燃料バンカリング施設整備促進小委員会」<第4回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 代替燃料バンカリングの事業採算性と課題の分析結果について
2022/3/9 「海運分野におけるCO2排出削減促進に関する調査検討委員会」<第5回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1) 令和3年度調査について
① 今年度の調査について
② 代替燃料CO2排出量評価手法に関する調査について
③ 代替燃料バンカリング施設整備に関する調査について
④ 代替燃料サプライチェーン調査について
<2022年度>
2022/8/31 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第1回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. IMOの議論の状況について
2. 調査研究の概要・体制(検討会及びシミュレーションWG)について
3. シミュレーション(シミュレーションのロジック及びインプット
・アウトプットデータ等)について
4. その他
2022/10/24 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第2回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 最新のIMOの議論の状況等について
2. シミュレーションの内容について
3. 第1回検討会の開催に向けた今後について
2022/11/14 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会」
<第1回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1)研究の背景・目的等について
(2)国際海運の脱炭素の動向、IMOにおける議論の状況について
(3)今年度の調査研究内容について
(4)その他
2022/12/5 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第3回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 第1回検討会の結果等を踏まえた今後の主な作業について
2. 作業の進捗状況と今後の予定について
3. 今年度のWGの開催日程等について
2022/12/12 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第4回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. MEPC79の結果概要について
2. シミュレーションの活用方法・シナリオ設定等について
3. シミュレーションの実施結果について
4. 燃料関係データについて
5. 燃料供給シナリオ案について
2023/2/6 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第5回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 第2回検討委員会に向けて
2. 燃料関係データについて
3. 燃料供給シナリオ案について
4. シミュレーションの実施結果について
2023/2/24 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第6回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. シミュレーションの設定について
2. シミュレーションの実施結果について
3. その他(船社へのヒアリング結果、第2回検討委員会の準備等)
2023/3/8 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会」
<第2回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1)前回委員会の論点及び指摘事項への対応
(2)2050年に向けたGHG削減の海運分野の取組み(海運関係委員プレゼン)
(3)GFS規制案の影響評価シミュレーションについて
(4)その他
<2023年度>
2023/5/29 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第7回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 今年度の調査研究の内容について
2. シミュレーションツールの構築について
3. その他
2023/6/20 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第8回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 今年度の調査研究の内容について
2. シミュレーションツールの構築について
3. その他
2023/7/19 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会」
<第3回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1)研究の背景・目的等について
(2)IMO MEPC80の結果について
(3)今年度の調査研究内容等について
(4)その他
2023/9/11 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第9回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 2023年度の調査研究内容について
2. 燃料シナリオ案について
3. シミュレーションについて
4. 今後の検討の進め方について
・ 地域性を考慮した検討状況
・ 制度の検討状況
2023/10/31 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第10回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 前回SWGからの進捗について
2. 燃料シナリオ改訂案について
3. シミュレーション結果について
4. 制度等検討状況について
5. その他
2023/11/29 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会」
<第4回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1)前回会議での指摘事項にについて
(2)シミュレーション結果について
(3)今後の課題について
(4)その他
2024/1/24 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会
シミュレーションWG」<第11回>を開催しました
【議事次第】
議事
1. 地域性検討について
2. 制度検討について
3. その他
2024/2/13 「海運CO2排出削減のための燃料転換に関する調査検討委員会」
<第5回>を開催しました
【議事次第】
議事
(1)WGでの検討報告
(2)本調査検討のまとめについて
(3)その他