2024年 年頭のご挨拶
2024年の年頭にあたり 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
まず、元日に発生しました能登半島地震によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された多くの皆様に心からお見舞い申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染症の拡大により大きな困難に直面した3年間を乗り越え、我が国の経済・社会活動は徐々に改善を見つつあります。本年は、好調な企業収益が、物価上昇を上回る賃上げ、設備投資などの前向きな支出につながり、個人消費が増加していく経済の好循環、デフレからの完全脱却を実現できるか正念場を迎えることになります。
一方、世界は、米中間の緊張、ロシアによるウクライナへの武力侵攻、イスラエル・パレスチナ情勢をはじめ、不安定で不確実な安全保障環境が今後とも続くことが予想され、今や世界は、分断と協調が複雑に絡み合う新たな時代に入っています。このように混迷する世界の厳しい現実が白日の下にさらされる中で、自由や人権、民主主義、法の支配といった普遍的な価値を共有する国家間の多重的な連携の重要性がひときわ明らかになりました。
さらに、コロナによる社会経済情勢の変化がもたらした社会・個人の価値観・行動の変容や加速する労働人口の減少は、交通運輸・観光産業の事業革新、デジタルトランスフォーメーション(DX)の展開、脱炭素化の加速、いわゆる「2024年問題」など人手不足への対応の必要性をより一層際だたせました。
これらの課題に対する取組については、中長期的視点に立ちつつ、国際的な知見を活かし、また、国際的な動向を見極めながら進めていくことが求められています。
以上のような認識の下、当研究所では、今年1年、より一層皆様との交流・連携を深め、持続可能で活力に満ちた交通運輸・観光の実現に貢献すべく、調査研究、セミナー・シンポジウム、コンサルティング等の活動に取り組んでまいります。
また、これらの活動については、当研究所の本部と米国のワシントン国際問題研究所(JITTI)及び2021年4月にタイのバンコクに設立したアセアン・インド地域事務所(AIRO)との連携の下、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために交通運輸・観光が果たすべき役割を常に意識して、北米から東南アジア・南アジアに至る地域において、かつ、欧州の動向にも十分配意しつつ、広域的かつ戦略的に進めてまいります。
当研究所の国際的な活動については、コロナ後の各国・地域の経済・社会情勢を見極めつつ、①観光・文化・学術をはじめとする幅広い分野での国際的な人的交流の充実・拡大、②東南アジア・南アジアにおける質の高い交通インフラの整備・運営や人材育成など、関係各国・地域との連携の強化につながる調査研究やセミナー・シンポジウム等の開催に努めるとともに、日本財団のご支援により実施している「持続的発展基金事業」、「グローバル基金事業」、「海事・海洋基金事業」を有効に活用し、全体として有機的な連携が図られ、最も効果的な事業が実現できるよう取り組んでまいります。
新年を迎え、当研究所の役職員・研究員一同、心を新たにし、精一杯努力してまいる所存でございます。皆様におかれましては、今年も引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
一般財団法人 運輸総合研究所
会長 宿利正史