2023年度を迎えるに当たって

新年度を迎え、皆様におかれましては、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。また、常日頃より、運輸総合研究所の活動に対しまして、温かいご支援、ご協力を賜っておりますことに、厚く御礼申し上げます
さて、2020年初から始まったCOVID-19のパンデミックですが、他のG7諸国と比べて遅きに失した感はあるものの、我が国においても昨秋からようやく水際対策が緩和され、徐々に国際的な往来が活発化してきております。また、この3月13日からマスクの着用については個人の判断が基本となるとともに、5月8日からCOVID-19の感染症法上の分類が見直されるなど、国内の社会活動や日常生活も平時を取り戻しつつあります。
一方で、昨年2月からのロシアによるウクライナへの武力侵攻は、長期化の様相を見せており、人道上の問題は言うに及ばす、世界は、冷戦後の国際秩序の不安定化や、グローバルサプライチェーンの下で如何にしてエネルギーや食糧を安定的に確保するかといった切実な課題に直面することとなりました。燃料価格など諸物価の高騰は、世界経済に大きな影響を与えています。このように混迷する世界の厳しい現実が白日の下にさらされる中で、自由や人権、民主主義、法の支配といった普遍的な価値を共有する国家間の多重的な連携の重要性が明らかとなったことも事実です
さらに、このような社会経済情勢の変化がもたらした社会や個人の価値観・行動の変容やエネルギー需給の逼迫は、人材不足などのパンデミック前からの課題と相俟って、交通運輸・観光産業の事業革新、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、脱炭素社会の実現の必要性をより一層際だたせました。これらの課題に対する取組については、中長期的視点に立ちつつ、国際的な知見を活かし、また、国際的な動向を見極めながら進めていくことが求められています。
以上のような認識に立脚して、当研究所では、今年度の活動について、
① 既にアフターコロナの時代下であることを前提として、内外の諸活動を実施すること。
② 国際的に取り組むべき普遍的な課題や、我が国における重要な政策課題に関連する活動に重点化すること。
③ 当研究所が行う国際的な諸活動と国内における研究調査等の活動との有機的な連携を徹底すること。
という3つの基本方針に則り、より一層皆様との交流・連携を深め、持続可能で活力に満ちた交通運輸・観光の実現に貢献すべく、研究調査、セミナー、コンサルティング等の活動に努力してまいります。
また、これらの活動については、東京の本部と米国のワシントン国際問題研究所(JITTI)及び2021年4月にタイ王国バンコクに設立したアセアン・インド地域事務所(AIRO)との連携を一層強化した上で、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために交通運輸・観光が果たすべき役割を常に意識して、北米から東南アジア・南アジアに至る地域において、かつ、欧州・豪州などの動向もしっかり把握しつつ、広域的かつ戦略的に進めてまいります。特に昨年再開した当研究所の国際的な往訪活動については、今年度は、国際的な人的交流の充実・拡大、持続可能な航空、物流の改善などをテーマとするシンポジウム等の開催をワシントンDC、バンコク、ハノイなどで予定するとともに、昨年度から日本財団のご支援により開始したグローバル基金を活用した調査研究活動のさらなる充実を図ってまいります。
当研究所の役職員・研究員一同、新年度のスタートに当たり心を新たにし、精一杯努力してまいる所存でございます。皆様におかれましては、今年度も引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
一般財団法人 運輸総合研究所
会長 宿利正史