2025年 年頭のご挨拶

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 旧年中は、運輸総合研究所の活動に対しまして、温かいご支援、ご協力をいただきましたことに厚く御礼申し上げます。

 さて、我が国の経済は、緩やかに回復しつつあり、好調な企業収益が、物価上昇を上回る賃上げ、設備投資などの前向きな支出につながり、個人消費が増加していくという経済の好循環の実現が期待されます。
 一方、世界に目を向けると、昨年は、民主主義を基盤とする国々において政権の不安定化や交代が続きました。また、米・中間や中・台間の緊張、ロシアによるウクライナへの武力侵攻、予断を許さない中東情勢をはじめ、不安定で不確実な国際情勢が今後とも続くことが予想され、今や世界は、分断と協調が複雑に絡み合う新たな時代に入ったと言っても過言ではありません。
 このように混迷する世界の厳しい現実が白日の下にさらされる中で、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値を共有する国家間の多重的な連携がますます重要となっています。
 他方、我が国では、逼迫する労働市場、頻発する自然災害、一層高まる地政学リスクなどを背景に、交通運輸・観光産業の事業革新、デジタルトランスフォーメーション(DX)の展開、脱炭素化(GX)の加速、サプライチェーンの強靭化や経済安全保障の必要性が一層際立つこととなりました。
 これらの課題に対する取り組みについては、中長期的視点に立ちつつ、国際的な知見を活かし、また、国際的な動向を見極めながら、確固たる信念に基づいて進めていくことが求められています。

 以上のような認識の下、当研究所では、今年1年、豊かな国民生活、活力ある持続可能な経済社会の実現、都市や産業の国際競争力の強化につながることを目指して、より一層皆様との交流・連携を深め、持続可能で活力に満ちた交通運輸・観光の実現に貢献すべく、研究調査、セミナー・シンポジウム、コンサルティング等の活動に取り組んでまいります。

 当研究所の国際的な活動については、国際情勢の動向や各国・地域の経済・社会情勢を見極めつつ、関係各国・地域との連携の強化につながる質の高い研究調査やセミナー・シンポジウム等の開催に努めてまいります。
 これらの国際的な活動については、当研究所の本部と米国のワシントン国際問題研究所(JITTI)及びタイのアセアン・インド地域事務所(AIRO)との連携の下、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために交通運輸・観光が果たすべき役割を常に意識して、北米から東南アジア・南アジアに至る地域において、かつ、欧州の政策の動向にも十分配意しつつ、広域的かつ戦略的に進めてまいります。

 また、日本財団のご支援により実施している「持続的発展基金事業」、「グローバル基金事業」、「海事・海洋基金事業」を有効に活用し、全体として有機的な連携を図りつつ、最も効率的で質の高い事業が実現できるよう取り組んでまいります。

 新年を迎え、当研究所の役職員・研究員一同、心を新たにし、精一杯努力してまいる所存でございます。皆様におかれましては、本年も引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2025年1月1日
一般財団法人 運輸総合研究所
会長 宿利正史