新しいモビリティサービスに関する研究

  • 総合交通、幹線交通、都市交通
  • 新技術・イノベーション

研究概要

 モビリティサービスに関連した技術や工夫の多様化は、地域が抱える課題の解決を通じて人々を幸せにする手段としてのモビリティサービスの取組みに多様な選択肢をもたらし、従来では実現が困難と考えられていたモビリティサービスを実現できる可能性は飛躍的に高まっている。しかしながら、多様な主体の関与が必要であること、事業制度との調整など、その実現の際には数多くの困難に直面している。

 そのため、2020年度より、「新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会」(座長:石田東生筑波大学名誉教授)を設置して、モビリティサービスの新しい展開について、ケーススタディ・インタビュー等も行いつつ調査研究を深めるとともに、全国各地が抱える地域課題を解決する手段として活用を促進するための新しいモビリティサービスを実証実験段階を超えた実サービスとして持続可能な形で定着させる方策等について検討し、課題解決型の提言を行うことを目的として調査研究を行った。



成果


 2022年3月に、ケーススタディ等における分析と委員会での議論を踏まえて、地域課題の解決手段として、モビリティサービスを活用することを提案するとともに、取り組む際に直面する可能性のある課題を示し、その解決策の提示を行うなどの提言内容を委員会としてとりまとめた。概要は以下の通りである。(なお、2022年9月に書籍として出版することを予定している。)

(1)多様なモビリティサービスがもたらす可能性について
 本調査研究では、「モビリティサービス」とは(車両等のことではなく)「様々な交通機関と情報技術等を組み合わせることで創出される、『移動のしやすさ』に関わりのある無形の価値、および、その価値を提供する行為のこと」を指すものと定義した。このように捉えると、近年登場してきたモビリティサービスは、図表1で示す通り、大きく2つの軸で捉えることができる。1つめは横軸に示す輸送資源の多様化であり、従来の鉄軌道や路線バス等だけでなく、スペシャルトランスポートサービスのように特定の人を対象とした輸送やシェアリングサービスなど多様化してきている。2つめは縦軸に示す、高機能化・多機能化であり、輸送サービスは、それぞれ個々にサービスを上乗せすることで質を高め、さらに複数の輸送手段を統合するMaaS、目的地との連携のサービスにまでひろがりを見せつつある。このように、輸送手段が提供できる価値は従来と比較すれば遥かに高度化・多様化し、利用価値が従来よりも一層高まっているといえる。
また、「モビリティサービス」とは、必ずしも高度な新技術を活用しなければならないということではなく、モビリティサービスを移動に関連して提供される無形の価値として捉えれば、その価値をどう高めるかが重要であり、新技術を導入すること自体が目的になってしまうことなく、課題解決に即した技術や工夫を行うことが肝要であり、地域課題の解決のため、移動に関連したどのような価値が提供できるとよいのかという目的を見失ってはならないことを提示した。




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図表1



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図表2



(2)モビリティサービスで地域課題を解決するための8つのポイントについて
 ケーススタディの分析等を通じて、モビリティサービスで地域課題を解決するためのポイントを8つに整理し提示した。

ポイント1:ブームで終わらせない組織・人財づくり
 事業導入のための実証実験継続の予算がなくなったり、キーパーソンの人事異動等により、導入のための取組みが止まってしまうことがないようにすることが重要である。

ポイント2:実現するビジョンの共有
 地域が抱える課題を解決することを目的とし、その手段としてモビリティサービス導入に取り組むことが基本的スタンスとして重要であり、交通事業者、住民等の多様な主体が同じ方向を向ける原動力となるビジョンを共有し取り組んでいくことが重要である。

ポイント3:地域公共交通をリデザインする
 地域の課題を解決していく上では、様々なモビリティサービスの導入を進めるだけではなく、地域全体の公共交通全体をリデザイン(再編)することが求められる。

ポイント4:データエコシステムをつくる
 モビリティサービスが移動に新たな価値を加えられるよう、他のモビリティサービスが保有するデジタルデータに必要に応じてアクセスできるような環境の構築を目指すことが重要である。

ポイント5:行動変容を仕掛ける
 新しいモビリティサービスの実証実験や本格導入にあたっては、市民、交通事業者、利害関係者の意識変容や行動変容がサービス定着の観点から重要である。

ポイント6:データの活用、さらには都市経営へ
 地域の交通サービスの向上や課題を可視化しながら、地域の交通サービスを常に市民目線で改善していくような、エビデンスドベースな都市経営が求められている。

ポイント7:コトづくり・地域づくり
 地域住民の中には、かつての公共交通サービスの縮小や、自動車の運転をやめたことによって喪失した潜在的な活動ニーズが存在していることから、この潜在的な活動ニーズをコト需要として掘り起こすこと等も重要である。

ポイント8:チャレンジできる環境づくり
 人々の活動を支え、地域づくりを行う際に、モビリティサービスが重要な基盤であるという観点からは、自立的、継続的なモビリティサービスの実現に近づけていくためにも、自治体が様々な支援策を考えていくことが求められる。




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図表3



(3)モビリティサービスが根付く社会に向けて
 (2)では、ケーススタディの分析等の結果から、モビリティサービスを導入する際に直面する可能性がある課題に対して、既存の仕組みの中でも、工夫を凝らすことで、その課題を乗り越えて解決するためのポイントについて提示を行ったが、モビリティサービスの導入に関わる取組みを一層普及・促進していく観点から、既存の仕組みの改善に向けた提示も行った(図表4、5参照)。




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図表4



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図表5



調査検討委員会の開催状況



2020/7/29  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第1回>を開催いたしました。
        【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)本調査研究、検討委員会の趣旨について
          (2)国土交通省新モビリティ推進事業などについて
          (3)地域のモビリティを取り巻く状況の現状と課題
             ・新しいモビリティサービスの動向及び関連情報の整理
             ・新型コロナによる交通影響に関する議論の紹介
             ・ケーススタディの進め方
          (4)各委員の方々による議論
          (5)その他(次回日程など)
         3.閉会


2020/9/11  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第2回>を開催いたしました。
        【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)東京大学生産技術研究所次世代モビリティ研究センター特任講師 伊藤昌毅氏発表
          (2)新しいモビリティに関する意見メモについての各委員からの発表・議論
          (3)ケーススタディ対象地域選定結果について(ご報告)
          (4)ケーススタディの進捗報告
         3.閉会


2020/10/28 新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第3回>を開催いたしました。
        【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)自治体・事業者の方々からの講演
             ・会津若松市地域つくり課 柏木康豪氏(Web
             ・前橋市政策部 交通政策課長 細谷精一氏
             ・みちのりHD代表取締役グループCEO 松本順氏
             ・WILLER株式会社代表取締役 村瀨茂高氏
          (2)ケーススタディ対象地域ヒアリング中間報告
             地区類型毎の整理について
          (3)その他
         3.閉会


2021/1/19  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第4回>を開催いたしました。
        【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)今年度調査のとりまとめと来年度調査に向けて
             ・ヒアリングを含めた調査状況報告
             ・令和2年度とりまとめ(骨子案)について
             ・意見交換
          (2) セミナーについて
         3.閉会
        【議事要旨


2021/5/19  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第5回>を開催いたしました。
        【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)今年度の調査研究の方針について
          (2)MaaS関連データガイドラインについて
          (3)R2年度日本版MaaS推進・支援事業について
          (4)意見交換
         3.閉会
        【議事要旨

2021/8/2   新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第6回>を開催いたしました。
       
 【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)調査研究方針と本日のテーマ
          (2)ご講演:十勝バス 野村文吾代表取締役社長
                :呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 神田佑亮教授
                :庄原商工会議所 本平専務理事
                :静岡鉄道株式会社 経営管理部経営企画課課長 岩本武範様
          (3)持続可能な新しいモビリティサービスの実現に向けた課題と解決の方向性について-テーマ「組織」
          (4)意見交換
         3.閉会
        【議事要旨

2021/9/29  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第7回>を開催いたしました。
       
 【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)調査研究方針と本日のテーマ
          (2)持続可能な新しいモビリティサービスの実現に向けた課題と解決の方向性について
             テーマ:サービス
          (3)ご講演:(株)アイシン 加藤智巳氏
                 (株)バイタルリード 森山昌幸氏
          (4)意見交換
         3.閉会
        【議事要旨

2021/11/5  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第8回>を開催いたしました。
       
 【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)ご講演
             ・ネクストモビリティ(株) 藤岡健裕 代表取締役副社長
             ・(株)ヴァル研究所 菊池宗史 代表取締役
          (2)取りまとめ方針について
          (3)提言について <テーマ:データ>
          (4)意見交換
         3.閉会
        【議事要旨

2021/11/24  新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第9回>を開催いたしました。
       
 【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)提言について <テーマ:効果と負担>
          (2)とりまとめについて
          (3)意見交換
         3.閉会
        【議事要旨

2022/1/18 新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第10回>を開催いたしました。
       
 【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)提言について <テーマ:周辺環境>
          (2)とりまとめについて
         3.閉会
        【議事要旨

2022/3/18 新しいモビリティサービスの実現方策検討委員会<第11回>を開催いたしました。
       
 【議事次第
         1.開会
         2.議事
          (1)とりまとめについて
          (2)資料の公表・出版について
         3.閉会
        【議事要旨



シンポジウムの開催


2021年度

モビリティシンポジウム「モビリティサービスの明日~その課題と可能性を多面的に考察する~」
日時:2022年3月28日(月)14:00~17:00
場所:ベルサール御成門タワー+オンライン配信