モビリティシンポジウム「モビリティサービスの明日~その課題と可能性を多面的に考察する~」

  • その他シンポジウム等
  • 総合交通、幹線交通、都市交通

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

主催 主催: 一般財団法人運輸総合研究所
共催: 一般財団法人日本みち研究所
日時 2022/3/28(月)14:00~17:00
会場・開催形式 ベルサール御成門タワー+オンライン配信
講師 開会挨拶:宿利 正史 運輸総合研究所会長
<第1部> 新しいモビリティの実現方策に関する調査研究について
報  告:「新しいモビリティサービスの実現方策に関する調査研究について」
     安達 弘展 運輸総合研究所研究員
講  演:「モビリティサービスを取り巻く状況と実現への課題」
     石田 東生 筑波大学名誉教授、日本みち研究所理事長
<第2部> パネルディスカッション
「モビリティサービスの広がりとその導入に向けて
~地域の課題をモビリティサービスで解決しよう~」
パネリスト:河田 敦弥 国土交通省総合政策局モビリティサービス推進課課長
      野村 文吾 十勝バス株式会社代表取締役社長
      藤岡 健裕 ネクスト・モビリティ株式会社代表取締役副社長兼CSO
      細谷 精一 前橋市未来創造部参事兼交通政策課長
コーディネーター:石田 東生 筑波大学名誉教授、日本みち研究所理事長
閉会挨拶:佐藤 善信 運輸総合研究所理事長

開催概要

モビリティに関連した技術や工夫の多様化は、地域が抱える課題の解決を通じて人々を幸せにする手段としてのモビリティの取り組みに多様な選択肢をもたらし、従来では実現が困難と考えられていたサービスを実現できる可能性は飛躍的に高まりました。しかしながら、多様な主体の関与が必要であること、事業制度との調整など、実現の際には数多くの困難に直面しております。
2020年4月より運輸総合研究所では、高度化・多様化するモビリティサービスを全国の各地が抱える地域課題を解決する手段として活用を促進するための方策等について、事例調査などを含めて検討してきました。
このシンポジウムでは、その成果をご報告するとともに、モビリティサービスの課題と可能性についての議論を通じ、移動を工夫する手段として新しいモビリティサービスも活用した地域の課題解決について考察します。

プログラム

開会挨拶
宿利 正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利 正史
 運輸総合研究所 会長


開会挨拶
報告
安達弘展<br> 運輸総合研究所 研究員

安達弘展
 運輸総合研究所 研究員


「新しいモビリティサービスの実現方策に関する調査研究について」
報告資料
講演
石田東生<br> 筑波大学名誉教授<br> 日本みち研究所理事長

石田東生
 筑波大学名誉教授
 日本みち研究所理事長


「モビリティサービスを取り巻く状況と実現への課題」

講演資料

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パネルディスカッション

パネリスト
河田敦弥<br> 国土交通省 総合政策局モビリティサービス推進課<br>

河田敦弥
 国土交通省 総合政策局モビリティサービス推進課


「モビリティサービスに関する国交省の取組みについて」

講演資料

パネリスト
野村文吾<br> 十勝バス株式会社 代表取締役社長 

野村文吾
 十勝バス株式会社 代表取締役社長 


「今向かう未来、十勝バスが考える真の生活MaaS 」

講演資料

パネリスト
藤岡健裕<br> ネクスト・モビリティ株式会社 代表取締役副社長兼CSO

藤岡健裕
 ネクスト・モビリティ株式会社 代表取締役副社長兼CSO


「AI活用型オンデマンドバスを活用した地域課題解決に向けた取り組みについて 」

講演資料

パネリスト
細谷精一<br> 前橋市 未来創造部参事兼交通政策課長

細谷精一
 前橋市 未来創造部参事兼交通政策課長

講演資料

コーディネーター
石田東生<br> 筑波大学名誉教授<br> 日本みち研究所理事長

石田東生
 筑波大学名誉教授
 日本みち研究所理事長

閉会挨拶
佐藤善信<br>  運輸総合研究所 理事長

佐藤善信
  運輸総合研究所 理事長


閉会挨拶

当日の結果

報告

「新しいモビリティサービスの実現方策に関する調査研究について」
     安達弘展 運輸総合研究所 研究員

 本調査研究は、新しいモビリティサービスを実際のサービスとして持続可能な形で定着させる方策について検討してきた。調査は、国土交通省の先行モデル事業の実施主体等へのインタビュー調査等で事例収集を行い、筑波大学名誉教授の石田東生筑波大学名誉教授を座長とした委員会で検討・議論を重ね、「地域の課題をモビリティサービスで解決しよう」というタイトルで提言をとりまとめた。
 取りまとめのポイントは次の3点である。1点目は、地域課題の解決手段として、モビリティサービスを活用することを提案している。モビリティサービスはあくまでも、地域の課題解決の手段であるということが本調査研究で重視した点である。2点目は、取り組む際に直面する可能性のある課題を示し、その解決策を提示した。3点目は、モビリティサービスが根付く社会に向け、既存の仕組みをどのように改善したらよいかという視点での提案を行った。
 取りまとめた提言は、今後、書籍として出版することを予定している。


講演

「モビリティサービスを取り巻く状況と実現への課題」
    石田東生 筑波大学名誉教授・一般財団法人日本みち研究所理事長

 人間の生存、生きがい達成のために必須であるモビリティを取り巻く環境は厳しさを増している。この問題について、車両・空間・制度などのモビリティ技術の大変革と、実現を後押しする法規制やビジネス慣習等の社会システムの改変が必要不可欠である。
 日本版のMaaSは掛け算が特徴と考えている。それは府省の連携や、多様のサービス・担い手の連携であり、結果として数多くのプラットフォームやコンソーシアムが成立している。これからは素早く社会実装すべき段階にあり、その実現に向けた提言を取りまとめた。日本の公共交通は民間の知恵や努力が発揮され、コロナ禍においても新たなチャレンジが実施されており、我が国の先進例が世界モデルとなる可能性もある。地域のモビリティ資源を最大限活用し力強く前進することが必要である。


パネルディスカッション

コーディネーター
     石田東生 筑波大学名誉教授・一般財団法人日本みち研究所理事長
パネリスト
     河田敦弥 国土交通省総合政策局モビリティサービス推進課長
     野村文吾 十勝バス株式会社代表取締役社長
     藤岡健裕 ネクスト・モビリティ株式会社代表取締役副社長兼CSO
     細谷精一 前橋市未来創造部参事兼交通政策課長

 石田東生筑波大学名誉教授をコーディネーターとして、地域の課題を解決するためのモビリティサービスの広がりとその導入に向けて、人財・データ活用・クロスセクターという観点から議論を行った。主なやり取りは以下のとおりであった。

人材について
〇利用者ニーズを掴むに当たっては、AIで解決できる部分もあるかもしれないが、お客の行間を読むことが大切で、人間力が果たす役割が大きいと思う。市民の方は、バス等は不便であるというが、よく話してみるとしばらく利用していないから不安であるだけであるということも分かったが、その対策としてもこのような直接利用者と話をすることが大切であると思う。

〇交通分野においても、バックグラウンドを異にする多様性のある者が集まって取り組むことによって、価値、イノベーション、解決策が生み出されることがあると思う。多様性×人間力が重要なのだと思う。

〇地域住民、交通事業者、行政が情報共有を図りつつ連携することが重要だと思う。地域住民の方々に対して、行政や交通事業者が実態も明らかにしつつ、一緒に勉強会を開くなど、課題に対して、一緒に検討していくようにすることが大切なのだろうと思う。

〇交通事業者は担い手が減ってきているが、そのような中でも、新しいチャンスを感じてもらい、スタートアップのような方々にも関心をもってもらえるように、従来型を前提とした規制について、地域公共交通会議で合意が図られればその方向で取組みができるようにしていくというような仕組みもかねてよりできているものの、引き続き行政としても柔軟に運用していくことが必要なのだと思う。


データ活用について
〇データ連携におけるデータの新鮮さをどこまで必要かということがあると思う。新鮮さを求めればコストが上がるが、目的に応じてどこまでコストをかけるべきなのかというのが重要な視点になると思う。
〇デジタル化やデータ連携について理解が進むことが肝要だと思う。データのオープンについては関係者における信頼関係も重要であり、まずはこの信頼関係を高めることが必要である。また、民間事業者だけだと事業者間で損得という話になって進まないこともあり得るので、自治体など公の立場も関与することによってより進むのではないかと思う。

〇手間・費用というコスト見合いも勘案してどのように必要なデータをパブリックで出せるようにしていくかということかと思う。協調・協力してデータを提供することについて、無償で提供してもらうのが望ましいのか、契約で有償提供してもらうのが望ましいのかなどについて行政としてもガイドラインを示し、それを参照しながら進めてもらえるように取り組んできているところである。データ連携には手間・費用がかかるところ、どこまで必要なのか、民間からすると営業につながり得るものということも求めるので持続可能なものとするためにはどのようにあるべきなのか、公共としてどのようにお手伝いできるかなどについて議論を深めているところである。

〇公的セクターがどのように関与していくかは大きな課題である。協調・協力領域はどこなのか、都市基盤となるシステムをどのように構築していくべきかについて検討を行っている。モビリティ関係だけであればモビリティのプラットフォーム上でできると思うが、商業、医療、観光など他分野との連携をすれば、住民にとってかかわり深いものとなっていく一方、個人情報の管理の仕方が難しくなるなどの課題があるところである。

〇協調・協力領域をつくる、データ連携自体を目的化するということが無いように注意はしないといけないが、データ連携を進めるためには、小さくてもいいので、民間事業者等関係者にメリット・ベネフィットを感じてもらえるような成功事例を作っていくことが必要だと思う。


クロスセクターについて
〇交通事業者としても、路線上の商店等と連携を図る取組みをしてきたものの、最初はなかなか一緒に組んでもらえなかった。1、2例成功事例が出てきて、一緒に組んでくれるところや利用者の数も増えてきたということがある。また、必ずしもデジタルだけでなくアナログで行っていくという手もあると思う。

〇MaaSについては交通事業者が行うべきであるという意識を持っている方々も多いように見受けるが、交通事業者側はもちろんであるが、それだけではなくて、例えば医療などのコンテンツ側・目的地側の取組みにも広げることが必要である。

〇消費者・利用者も、目的地側も、実際に使ってみないとやってみようという気にならない。その意味で実証実験は重要である。実証実験の期間も短期間では意味がなく、浸透していくことまで見据えたものとして行えるようにすべきである。

〇交通モード毎ではなく、鉄道・バスなどの間での連携の検討を進めていく必要があると考えている。その際、福祉や教育も含め、いかにビジネス性を持たせるかが重要であると考えている。

〇モビリティツールや目的地側・コンテンツ側をどのように結び付けていくかということについては、行政としても、それぞれのレベルで、間をとりもつ仲介ができればと思うし、クロスセクターの効果が図れるように努力していきたいと考えている。