第19回 日韓JTTRI/KOTIジョイントセミナー

  • 他機関との交流

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日時 2024/11/27(水) 〜 28(木)

 2024年11月27日、運輸総合研究所2階会議室において、韓国交通研究院(KOTI)と当研究所(JTTRI)との間で第19回日韓ジョイントセミナーを開催しました。同セミナーは1993年以来、コロナ禍などの途中中断期間もありながら、年1回程度の間隔で相互開催しているもので、前回の第18回セミナーは昨年11月に韓国・済州島で行われました。19回目となる今年は東京の当研究所での開催となり、KOTIからキム新院長(本年5月に着任)はじめ6名が、当研究所から宿利会長、上原理事長及び屋井所長を含む多数が参加しました。
 会議では、「イノベーション」と「鉄道」をテーマとして相互に研究発表を行うとともに、議論と今後の更なる研究協力について意見交換を行いました。
 さらに、翌日28日には、高輪ゲートウェイ及び品川駅街区地区の現地見学会が行われました。次回は来年、韓国ソウルで開催される予定です。


〇ジョイントセミナーのプログラム概要

 開会挨拶   当研究所 宿利会長、KOTI キム院長
 セッション1「イノベーション」
  発表:「陸上交通における自動運転の社会実装の加速化」
        当研究所 鈴木淳 主任研究員
     「自動モビリティの時代における規制支援のための統合戦略」
        KOTI タク 究員
  討論者   KOTI ウー 研究員
        当研究所 藤﨑耕一 主席研究員・研究統括
 セッション2「鉄道」
  発表:「少子高齢化社会における持続可能な都市鉄道の運営と政策」
        当研究所 室井寿明 研究員
     「韓国における全国鉄道投資の整備過程と主な課題」
        KOTI キム副研究員
  討論者   KOTI シン主任研究員
        当研究所 田中健太郎 研究員
 総括・講評  当研究所 屋井所長
 閉会挨拶   KOTI キム院長、当研究所 上原理事長



□開会挨拶

 冒頭、宿利会長が歓迎挨拶で、キム院長のKOTI院長への就任に祝意を述べた後、韓国海洋水産開発院(KMI)及び高麗大学海上法研究センター(KUMLC)と日本海事センター(JMC)及び当研究所の間でMOUを締結し、今年から海事分野でも共同の活動を行うこととなり、運輸交通分野を網羅的に韓国と日本で連携して研究していく体制ができたことを報告した上で、交通運輸分野において高齢化・少子化、技術革新、脱炭素などに加えて、日・韓両国ともに大きなテーマとして経済安全保障を考えていくことが重要であり、今回のテーマである技術革新や鉄道インフラについては、経済安全保障の切り口でも取り組んでいくことが重要なテーマの1つであるとして、御礼と今後の期待を述べました。

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     JTTRI 宿利会長


 続いて、KOTIからキム院長が、開会挨拶の中で、来年は20回目の交流になるので盛大になるのではないか、本日扱うテーマ以外のテーマも含めて、継続的に交流を続けたい旨など、日韓交流に臨む意気込みを表明しました。

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      KOTI キム院長


□セッション1「イノベーション」

 当研究所から鈴木主任研究員が、「自動運転化の現状と課題」(原文は英文)と題して、当研究所における共同研究調査「運輸分野における自動運転導入の効果・影響と普及加速化」(2023年度~24年度)を基に発表しました。
 発表概要:欧州、米国、中国等における自動運転化の意義や導入状況。我が国の自動運転化の状況。また、日本における自動運転化導入・普及に向けた課題と対応策として、特に課題となっている緊急時の対応や開発に対する資金・コスト、社会的受容性等。
 なお、当該共同研究調査の中間報告については、本年9月の当研究所の「第55回 研究報告会」にて発表済み( https://www.jttri.or.jp/events/2024/sympo55.html を参照)。


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    JTTRI 鈴木主任研究員


 続いて、KOTIからタク研究員が、「自動モビリティの時代における規制支援のための統合戦略」(原文は英文)と題して、発表しました。
 発表概要:韓国において、高齢化による運転手不足により、自動車の自動運転が必要であり、現在、レベル3やレベル4を含む、技術開発と多数の実証実験を進めている。Automated Driving-based Mobility Services (ADMS)を促進するためにKOTIが考える3本柱は、①統合的な商業化政策、②自動運転車両のためのRoad Difficulty Map及び③Advanced Digital Road Infrastructureである。

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      KOTI タク研究員


 これらの発表に対して、KOTIからウー研究員が、日本のトラック運送における自動運転の導入状況と旅客運送との違いを質問したほか、当研究所から藤﨑主席研究員・研究統括が、Road Difficulty Mapの用途について質問するなど、討論者による討論を行いました。

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     KOTI ウー研究員


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 JTTRI 藤﨑主席研究員・研究統括


 続く自由議論では、韓国の大きな交差点での歩行者による飛び出しの検知の仕方、低速と中高速との違いの整理の仕方、韓国の物流におけるモーダルシフト、米国の投資が大規模な中で日・韓両国の目指すべき方向等について議論がなされました。


□セッション2「鉄道」

 当研究所から、室井研究員が、「少子高齢化社会における持続可能な都市鉄道の運営と政策」(原文は英文)と題して、当研究所における共同研究調査「今後の東京圏を支える鉄道のあり方」(2012年度~ )を基に発表しました。
 発表概要:東京圏では外国人居住者の増加もあり、人口が増加している。地方部では人口が減少している。女性の社会進出やインバウンドで利用が増加している。建設費の増加に対して運賃の上昇が追い付いていない。バリアフリー、駅の高度化、防災・減災等の対応も求められている。

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     JTTRI 室井研究員


 続いて、KOTIから、キム副研究員が、「韓国における全国鉄道投資の整備過程と主な課題」(原文は英文)と題して、発表しました。
 発表概要:向こう10年間の鉄道の整備計画を5年ごとに策定している。人口減少を背景に、巨大都市と周辺都市を束ねて、1つの経済圏とするための都市をつなぐ鉄道を整備する。既存鉄道施設の地下化を行う。

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     KOTI キム副研究員


 これらの発表に対して、KOTIからシン主任研究員が、選択と集中の必要性、65歳以上の運賃無料化等について質問したほか、当研究所から田中研究員が、運営費の赤字の考え方、鉄道整備に対する国民の理解、地下化の考え方等について質問するなど、討論者による討論を行いました。

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    KOTI シン主任研究員


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     JTTRI 田中研究員


 続く自由議論では、上原理事長が鉄道局長の経験を踏まえた、赤字の鉄道は建設しないなどの鉄道整備の考え方を紹介しました。また、日本でも法律に基づく計画により鉄道整備を行う時期があったこと、連続立体交差の考え方、日本で地下化を行うことになった理由、コンパクト+ネットワークの考え方等の紹介が行われたほか、BRTと韓国の首都圏広域急行鉄道(GTX)との違い等について議論が行われました。


□総括・講評

 当研究所から屋井所長が、高齢化と人口減少が両国で共通する課題である中で、イノベーションと鉄道という重要なテーマについて大変有意義な議論ができたこと、KOTIからの今回発表内容は、日本にはないイノベーションに関する具体的発想や鉄道の中長期計画体系を示しており、大変参考になったこと、今後も継続して両研究所間で議論を続けていきたいことを述べました。

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     JTTRI 屋井所長


□閉会挨拶

 KOTIから、キム院長が、JTTRIとの交流の意義を再確認できたこと、ジョイントセミナーの開催と並行して研究員同士でもコミュニケーションを取っていけることを述べ、研究の専門家として政府に対して提案する役割について触れつつ閉会挨拶をしました。
 最後に、当研究所 上原理事長から、今回のKOTIからの来日参加に対する感謝の意を改めて表するとともに、日韓両国の共通の課題について両研究所間で情報・意見交換することの意義を実感したこと、KOTIとの連携を継続強化したい旨を述べ、閉会挨拶をしました。

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     JTTRI 上原理事長



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フォトセッション(前列左からキム副研究員、タク研究員、シン主任研究員、キム院長、宿利会長、上原理事長、屋井所長、金山研究統括)


□現地見学会

 高輪ゲートウェイ及び品川駅街区地区を訪問し、東日本旅客鉄道株式会社 グループ経営戦略本部 品大部門の吉永ユニットリーダー等から、鉄道サービスのイノベーションと一体化した駅周辺開発の状況と今後の計画等について説明をしていただきました。

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        高輪ゲートウェイ駅