研究報告会 2021年冬(第50回)

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(会場・オンライン併用開催)

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

主催 一般財団法人運輸総合研究所
日時 2021/12/1(水)13:00~17:00(12:30開場)
会場・開催形式 ベルサール御成門タワー3F
開催回 第50回
講師 開会挨拶:宿利 正史 運輸総合研究所会長
来賓挨拶:藤井 直樹 国土交通省国土交通審議官
基調講演:「ポストコロナの交通像に関する一私論」
     福田 大輔 東京大学大学院工学系研究科教授/研究アドバイザー
報告概要:山内 弘隆 運輸総合研究所所長

報  告(報告25分+コメント10分+討論・質疑応答15分)
(1)「観光DMOの取組み及びガバナンス構造に関する分析~滞在型観光の推進に向けて~」
   後藤 孝夫 客員研究員/中央大学経済学部教授
   コメンテーター 鎌田 裕美 一橋大学大学院経営管理研究科准教授
   討論・質疑応答
(2)「大規模災害時の緊急支援物資供給の円滑化に関する研究」
   後藤 浩平 客員研究員
   コメンテーター 藤生  慎 金沢大学融合研究域融合科学系准教授
   討論・質疑応答
(3)「高齢者の増加に伴う東京圏の鉄道需要の将来~就業実態の変化に基づく分析~」
   嶋田 優樹 研究員 
   コメンテーター 岩倉 成志 芝浦工業大学工学部土木工学科教授
   討論・質疑応答
(討論・質疑応答)モデレーター 山内 弘隆 運輸総合研究所所長

閉会挨拶:佐藤 善信 運輸総合研究所理事長

開催概要

 今回は当研究所の研究アドバイザーをお願いしている福田大輔東京大学大学院工学系研究科教授よりウィズ/ポストコロナにおける移動活動の実態分析やシミュレーション分析等の研究成果を踏まえつつ、ポストコロナの交通像について基調講演を頂きました。
 また、研究員からは、ポストコロナにおける滞在型観光の推進に向けて観光DMOの取組みとガバナンス構造に関する分析、大規模災害時の緊急支援物資供給の円滑化に関する課題と方策、高齢者の増加に伴う東京圏の鉄道需要への今後の影響について報告しました。
 前回から研究員のそれぞれの発表にコメンテーターを設け、研究報告のポイントや意義についての解説、報告者への質問を行いましたが、今回はさらに、研究員とコメンテーターとの討論、参加者からの質疑応答を行うことにより議論の深度化を図ることとしました。

プログラム

開会挨拶
宿利 正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利 正史
 運輸総合研究所 会長


開会挨拶
来賓挨拶
藤井 直樹<br> 国土交通省国土交通審議官

藤井 直樹
 国土交通省国土交通審議官

講演者略歴

基調講演
福田 大輔<br> 東京大学大学院工学系研究科教授/研究アドバイザー

福田 大輔
 東京大学大学院工学系研究科教授/研究アドバイザー


「ポストコロナの交通像に関する一私論」

講演者略歴
講演資料

報告概要
山内 弘隆<br> 運輸総合研究所所長

山内 弘隆
 運輸総合研究所所長

報告およびコメント

報  告(1)
後藤 孝夫<br> 客員研究員/中央大学経済学部教授

後藤 孝夫
 客員研究員/中央大学経済学部教授


「観光DMOの取組み及びガバナンス構造に関する分析~滞在型観光の推進に向けて~」

講演資料

コメント(1)
鎌田 裕美<br> 一橋大学大学院経営管理研究科准教授

鎌田 裕美
 一橋大学大学院経営管理研究科准教授

講演者略歴
講演資料

回  答(1)

鎌田先生のコメントに対する回答
(後藤孝夫 客員研究員/中央大学経済学部教授)

講演資料

報  告(2)
後藤 浩平<br> 客員研究員

後藤 浩平
 客員研究員


「大規模災害時の緊急支援物資供給の円滑化に関する研究」

講演資料

コメント(2)
藤生  慎<br> 金沢大学融合研究域融合科学系准教授

藤生  慎
 金沢大学融合研究域融合科学系准教授

講演者略歴
講演資料

回  答(2)

藤生先生のコメントに対する回答
(後藤浩平 客員研究員)

講演資料

報  告(3)
嶋田 優樹<br> 研究員

嶋田 優樹
 研究員


「高齢者の増加に伴う東京圏の鉄道需要の将来~就業実態の変化に基づく分析~」

講演資料

コメント(3)
岩倉 成志<br> 芝浦工業大学工学部土木工学科教授

岩倉 成志
 芝浦工業大学工学部土木工学科教授

講演者略歴
講演資料

回  答(3)

岩倉先生のコメントに対する回答
(嶋田 優樹 研究員)

講演資料

閉会挨拶
佐藤 善信<br> 運輸総合研究所理事長

佐藤 善信
 運輸総合研究所理事長


閉会挨拶

当日の結果

当日の発表概要は以下の通りです。

【基調講演】

「ポストコロナの交通像に関する一私論」

福田 大輔 東京大学大学院工学系研究科教授/研究アドバイザー
COVID-19の流行を通じてリアル空間における日常の移動・活動は大きく変化し、その代替としてオンラインでの交流や業務活動によるバーチャル空間上での経済集積が顕在化してきた。講演者が取り組んでいるウィズ/ポストコロナにおける人々の移動活動の実態分析やシミュレーション分析等の研究成果の紹介を踏まえつつ、ポストコロナの交通・都市・国土像についての一私論が述べられた。
“コロナが終焉しても、以前の都市や交通の状況に戻るとは考えにくいのでは?”
テレワーク等で「物理的に通勤をしなくても意外と仕事ができる」と人々が実体験してしまったことが大きい。
“物理的な都市はバーチャル空間上の都市でどこまで代替されるのか?”
 「パンデミックの経験とその後に普及しつつあるリモート化・バーチャル化が一極集中型の国土構造を崩すだけの強い分散力となるか?」は、中長期的な国土構造を考える上での新しい視点となる。


【報  告】

(1)「観光DMOの取組み及びガバナンス構造に関する分析~滞在型観光の推進に向けて~」

後藤 孝夫 客員研究員/中央大学経済学部教授
コメンテーター 鎌田 裕美 一橋大学大学院経営管理研究科准教授
〈報  告〉
本研究は、滞在型観光の供給主体の1つである観光DMOの取り組みやコーポレートガバナンスの要因が、観光DMOの必須KPIである延べ宿泊者数にどの程度影響を与えているのかについて,公表データを用いて定量的に分析した。分析の結果、二次交通の存在が延べ宿泊者数に正の影響を与えている可能性を示唆し,その影響の度合いも明示した。あわせて、観光DMOへの民間的手法の導入のあり方についても今後さらなる検討が必要であることも指摘した。

〈コメント〉
公表データを用いて観光DMOを分析した点を評価しつつも、①「延べ宿泊者数」をKPIとしているが、KGIではないか、および②Tourism Area Life Cycle (TALC)モデルにあるような、観光地の認知度や成熟度を考慮した分析が必要ではないかとの2点のご指摘があった。

〈討論と質疑応答〉
2点のご指摘はごもっともであり、今後の研究のなかで、指標や変数の適切な設定について検討すると回答した。一方、フロアからは、「最寄りの空港や新幹線駅からの二次交通の視点」ならびに「観光資源の種類・範囲の視点」といった、示唆に富んだ今後の分析の視点を複数頂戴した。


(2)「大規模災害時の緊急支援物資供給の円滑化に関する研究」
後藤 浩平 客員研究員
コメンテーター 藤生  慎 金沢大学融合研究域融合科学系准教授
〈報  告〉
被災地への緊急支援物資の供給は被災者の生活を支える重要な役割を果たしており、今後、大規模災害の発生が懸念される中、物資の円滑な供給が求められている。本研究は、まず、過去の災害時の実態のレビューにより支援物資の円滑な供給を阻害する要因を特定する。その上で、先行研究、既往調査、関係者へのインタビューを通じてこれまで提案された方策の課題を整理、供給円滑化に向けた方策を提案する。

〈コメント〉
災害時の物資供給は、これまでの災害で毎回、課題として挙げられるがなかなか解決されない。例えば、地域の家庭や小売店には食料のストックが存在し、災害時には自助・共助を通じて活用できる可能性がある。多様な主体の参画や新しい技術の活用を含めて広い視点で検討を深める必要がある。

〈討論と質疑応答〉
災害時、地域内で必要な物資を確保できることは重要であり、地域で不足するものは外部からの供給が課題となる。物資供給に関わる多様な主体の役割分担、自助、共助、公助のバランスなども考慮しながら、コメントのご指摘のように広い視点での対応が望まれる。
参加者から提示された次の論点について、ディスカッションがなされた。
・支援物資供給の訓練
・緊急物資輸送における港湾の位置づけ
・物資の備蓄の活用


(3)「高齢者の増加に伴う東京圏の鉄道需要の将来~就業実態の変化に基づく分析~」
嶋田 優樹 研究員 
コメンテーター 岩倉 成志 芝浦工業大学工学部土木工学科教授
〈報  告〉
高齢化の進展を背景に、高齢者雇用安定法の改正等による高齢者の就業支援が行われ、60歳前後から人々の働き方は近年大きく変化している。このような状況を踏まえ、高齢者の就業や移動の実態を把握することは、今後の鉄道経営を考える上で非常に重要である。本研究では東京圏の高齢者を対象に雇用形態や就業日数、通勤先の変化を把握し、高齢者の鉄道通勤利用の実態を分析することで、今後の輸送需要への影響について考察する。

〈コメント〉
・男女別に世代ごとの人口差にも考慮した上で、高齢者の鉄道通勤利用を定量的に把握した点で意義のある研究である。
・今後の展開の視点として、①高齢者の就労意欲を減退させない年金制度等の労働条件の研究、②女性,高齢者活躍をサポートするための家族アクティビティ分析技術の開発、③高齢者世帯の交通行動分析のためのデータ収集方法の研究などが考えられる。

〈討論と質疑応答〉
今後の鉄道通勤需要を考えるうえで高齢者、特に団塊ジュニア世代の動きが重要であると認識できたが、新たなサービスや施策など提言はあるか。
→今後も鉄道通勤利用者に占める高齢者割合は増加するものと想定され、駅のバリアフリー化、さらにはバリアフリールートの最短経路化などは極めて重要であると考える。

 

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