米国における無人航空機政策の最新動向2021
~更なる利用拡大に向けた制度改正~

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第143回運輸政策コロキウム~ワシントンレポートXI~
(オンライン開催)

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2021/9/21(火)10:00-12:00
開催回 第143回
テーマ 米国における無人航空機政策の最新動向2021~更なる利用拡大に向けた制度改正~
講師 講 師:藤巻 吉博 ワシントン国際問題研究所主任研究員
コメンテーター:鈴木 真二 東京大学未来ビジョン研究センター特任教授
<質疑応答>
コーディネーター:山内 弘隆 運輸総合研究所所長

開催概要

小型の無人航空機の商用及び公共用としての利用は、コロナ渦に関わらず拡大を続けている。また、これらの利用の拡大をサポートするための制度改正が各国で進められている。
米国では、2021年1月にリモートIDに関する規則、夜間・第三者上空を運航する場合の規則という2つの重要な規則が公表された。
本コロキウムでは、米国の最新動向として、この2つの新しい規則の詳細を報告するとともに、目視外飛行の拡大に向けた規制の見直しの動向についても報告した。その後、無人航空機を始めとする航空のイノベーション技術に関する専門家である東京大学未来ビジョン研究センターの鈴木特任教授をコメンテーターに迎え、欧州における規則について紹介するとともに、更なる利用の拡大に向けた課題や方策等について議論を行った。
今回は大学等研究機関、官公庁、航空関係事業者など446名の参加者があり、盛会なコロキウムとなった。

プログラム

開会挨拶
宿利 正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利 正史
 運輸総合研究所 会長

開会挨拶
講   師
藤巻 吉博  <br> ワシントン国際問題研究所主任研究員

藤巻 吉博 
 ワシントン国際問題研究所主任研究員

講演者略歴
講演資料

コメンテーター
鈴木 真二 <br> 東京大学未来ビジョン研究センター特任教授

鈴木 真二 
 東京大学未来ビジョン研究センター特任教授

講演者略歴
講演資料

コーディネーター
山内 弘隆<br> 運輸総合研究所 所長

山内 弘隆
 運輸総合研究所 所長

閉会挨拶
奥田 哲也 <br> 運輸総合研究所 専務理事 <br> ワシントン国際問題研究所長<br> アセアン・インド地域事務所長

奥田 哲也 
 運輸総合研究所 専務理事 
 ワシントン国際問題研究所長
 アセアン・インド地域事務所長

閉会挨拶

当日の結果

ワシントン国際問題研究所の藤巻主任研究員より、「米国における無人航空機政策の最新動向2021~更なる利用拡大に向けた制度改正~」というテーマで発表がありました。発表のポイントは次のとおりです。

・無人航空機(UAS)は、用途別の分類として、模型飛行機などの娯楽用、空撮や測量などの商業用、災害時の状況把握などの公共用の3つに大きく分けられる。コロナ禍において、娯楽用の機体数はコロナ前の予測を上回って増加したものの、近いうちに飽和に達すると予測されている。一方、商業用や公共用の機体数はコロナ前の予測を下回ったものの、今後は増加すると予測されている。
・米国における無人航空機の登録及び識別に関する規制としては、これまで、2015年に公表された無人航空機の登録及び表示に関する規則により、オンラインシステムによる登録と機体への識別番号の表示が義務付けられていた。しかし、機体への識別番号の表示では飛行中の機体の識別は不可能であることから、遠隔での識別を可能とするためのリモートIDに関する規則が2021年に公表された。
・また、米国における商業用の無人航空機による夜間・第三者上空の運航に関する規制としては、これまで、2016年に公表された商業用の無人航空機に関する規則により、夜間・第三者上空の運航などが原則禁止とされ、これらは規制の免除の申請に基づき個別に許可を受けた上で運航が行われていた。この商業用の無人航空機に関する規則における夜間・第三者上空の運航に関する規制に対し、一定の安全基準を満たす場合には規制の免除の申請を不要とするため、夜間・第三者上空を運航する場合の規則が2021年に公表された。
・娯楽用の無人航空機については、安全ガイドラインに従うことなどを条件として個別の手続きなしに一定の飛行が認められているが、機体及び操縦者の両面で近年環境が大きく変化していることを鑑み、2021年6月より操縦者に対する知識テスト(TRUST)が開始され、この知識テストに合格することが必要となった。
・リモートIDに関する規則において、規則への適合方法には、新造機へ機能の組み込みを行う「標準リモートID」、既存機や自作機へ機能を有するモジュールの取り付けを行う「リモートID放送モジュール」及びエリアを限定してリモートIDなしに飛行を行う「FAAが認識した飛行エリア(FRIA)」の3通りがある。また、2022年9月16日(製造基準日)以降に製造される機体については標準リモートIDの方法に従うことが必須となり、2023年9月16日(運航基準日)以降は上記の3通りのいずれかの方法により無人航空機を飛行させることが必須となる。
・夜間・第三者上空の運航に関する規則において、夜間を運航する場合については、操縦者への知識の付与と機体への衝突防止灯の装備が要求されている。また、第三者上空を運航する場合については、墜落時のリスクに応じて小型の無人航空機を4つのカテゴリー(カテゴリー1~カテゴリー4)に分類した上で、各カテゴリーに対して要件が設定されている。全備重量が250グラム以下であるカテゴリー1では機体の要件に係るFAAの承認手続きは不要とされているが、全備重量が250グラムを超えるカテゴリー2及びカテゴリー3では機体の要件への適合を申告した上で、FAAによるその承認が必要とされ、さらに衝撃の運動エネルギーがカテゴリー3の閾値を超える場合にはカテゴリー4として機体の耐空証明が必要となる。
・目視外(BVLOS)飛行については、規制の免除の申請件数が約3,000件に上る一方で、許可された件数は少数に留まっている。また、小型貨物の有償運送を目視外飛行で実施するための認可についても、その実績は3社のみとなっている。この目視外飛行の拡大に向けて、新たな実証プロジェクト(BEYOND)の実施及びアドバイザリー委員会(UAS BVLOS ARC)における検討が進められている。
・前述した運航の方法に関する見直しの他、機体の耐空証明の前提となる機種別の型式証明に対する安全性基準の策定、将来的な有人の航空機との空域の統合に向けたリモートIDの情報の利用方策、無人航空機に関する性別限定的な用語のジェンダー・ニュートラルな用語への変更が現在検討されている。
・日本では、2021年6月に成立した改正航空法により、第三者上空での目視外飛行が可能となるが、機体認証に加えて個別の手続きが必要となる。米国において、規制の免除を必要とする目視外飛行はその許可件数が少数に留まっていることから、第三者上空での目視外飛行の本格的な拡大のためには、個別の手続きや実証プロジェクトの結果を踏まえて規則の継続的な見直しを行い、個別の手続きに依らない一般ルール化が必要と考える。
・また、航空業界における人材には性別の偏りが存在しているところ、今後の更なる人材の需要に対応しつつ、イノベーションを起こし世界における先進的な立場を維持・拡大するためには、人材の多様性を向上させることが必要であり、特に将来のキャリアを決定する早期の段階からの教育的取組みが必要と考える。

その後、コメンテータである東京大学未来ビジョン研究センターの鈴木特任教授から、以下の説明と質問がありました。

【説明】
・欧州において、無人航空機に関する規制は各国毎に行われていたところ、2019年のEU規則により、EU加盟国等(スイスやノルウェーなどを含む)における規制を統合し、民間無人航空機をそのリスクに応じて「OPEN」、「SPECIFIC」及び「CERTIFIED」の3つのカテゴリーに分類することが定められた。このEU規則では、運航事業者(オペレータ)の役割と操縦者(リモートパイロット)の役割を区分していることが特徴となっている。
・「OPEN」カテゴリーは、高度120mまでを運航の認可なしに飛行する場合であるが、機体の重量および、第三者や第三者物件への近接度によりA1~A3のサブカテゴリーに更に分類され、それぞれのサブカテゴリーを飛行可能な機体の要件がC0~C4の機体クラスとして定められている。機体重量が250グラム未満のC0クラスでは機体の登録や操縦者の訓練・試験が必要とされないが、250グラム以上のC1~C4クラスでは機体の登録や操縦者の訓練・試験が必要とされ、特にA2のサブカテゴリーで人の近くを飛行するC2クラスの機体の操縦者には、各国における理論試験が追加で要求される。
・「SPECIFIC」カテゴリーは、高度120m以上の飛行、目視外(BVLOS)飛行、又は重量が4kg以上の機体で都市部上空の高度120mまでの飛行など「OPEN」カテゴリー以上のリスクを伴う飛行を行う場合であり、個別にリスク評価を実施した上で、運航の認可を受ける必要がある。ただし、運航の標準的なシナリオを相当する機体の要件を満たした機体(C5又はC6クラス)により飛行する場合には、個別のリスク評価を行うことなく運航を行うことが可能である。この運航の標準的なシナリオとして、4kg以上の機体で都市部上空の高度120mまでの飛行を行うシナリオと、高度120mまでかつ操縦者から2km以内の範囲での目視外飛行を行うシナリオが定められている。また、操縦者については、標準的なシナリオの場合には当該シナリオに対応する訓練・試験を経て認定を受けることが必要であり、それ以外のシナリオでは個別に提案した訓練コースについて管轄当局の承認を受け、その訓練を行う必要がある。なお、操縦者の認定については、各国当局によりその発行を認められた組織において行うことが可能とされている。
・「CERTIFIED」カテゴリーは、リスクが高いことにより、運航者としての認可、機体の認証及び操縦者の技能証明がいずれも必要と判断される場合であるが、その詳細は検討中である。

【質問】
①FAAでは第三者上空、夜間飛行などに関して知識の試験だけでなく技能の試験も義務付けられているのか?
②FAAのカテゴリー4の型式証明に関して、航空機のようなプロセス認証ではなく、実機試験を重視する方法も検討されているようだが、国際的なハーモナイゼーションに関する各国間での協議などは進んでいるのか?
③第三者上空、夜間飛行など、一般の人の受け入れの状況はどうか?また、安全に対する懸念以外に、騒音、プライバシーやセキュリティーの懸念はどうか?

この質問に対し、藤巻主任研究員は以下のとおり回答しました。  
①夜間・第三者上空を運航する場合の規則の施行に対応するため、無人航空機の操縦者の試験の内容に見直しが行われた。ただし、その内容は引き続き知識の試験のみであり、技能の試験は義務付けられていない。  
②FAAは型式証明に対する安全性基準の案において、機体レベルでの試験により信頼性を実証する“Durability and Reliability (D&R)”のプロセスを導入している。欧州のEASAが2020年12月に公表した安全性基準である「Special Condition Light UAS」(SC-Light UAS)自体には、D&Rのプロセスは記載されていないものの、併せて公表されたコメントへの回答において、安全性基準に対する適合性証明手法としてD&Rのプロセスを許容する方針を示しており、ハーモナイゼーションに向けた協議が進みつつある。  
③夜間の運航については、数千件にのぼる規制の免除の承認実績があるが、一般からの大きな懸念は聞こえてこない。この理由として、夜間は日中よりも目視内で飛行可能な範囲が狭く、影響が限定されていることが考えられる。
第三者上空の運航については、規制の免除の承認実績が少数であり、規制見直し後のカテゴリー2~4の機体の承認もこれからであるため、今後の運航件数の増加に伴って懸念があがる可能性がある。一方で、リモートIDの義務付けが、必要性の低い第三者上空の運航を抑制する働きをするものと考えられる。
なお、無人航空機の運航に係るプライバシー、透明性及び説明責任への対応について、連邦レベルでは、国家電気通信情報管理庁(NTIA)が優良事例を示す程度に留まっている。

最後に、視聴者からの質問を受け付け、無人航空機に関する交通管理、リモートIDによる情報発信の詳細、リスク管理を含む運航の管理、操縦者ライセンスの発行に係る組織の認定などについて更に議論が行われました。