新型コロナウイルスが鉄道輸送と都市構造に及ぼす影響に関するシンポジウム

  • 総合交通、幹線交通、都市交通
  • 鉄道・TOD

(オンライン配信および会場参加の併用開催)

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

主催 一般財団法人運輸総合研究所
日時 2020/10/26(月)15:00~17:00
会場(所在地) ベルサール御成門タワー※人数限定 (東京)
テーマ 新型コロナウイルスが鉄道輸送と都市構造に及ぼす影響
講師 基調講演:森地 茂 政策研究大学院大学客員教授 名誉教授

パネルディスカッション:
コーディネータ:山内 弘隆 運輸総合研究所 所長
パネリスト  :太田 雅文 株式会社東急総合研究所 主席研究員・東京都市大学都市生活学部非常勤講師
        岸井 隆幸 一般財団法人計量計画研究所 代表理事・日本大学理工学部土木工学科 特任教授
        坂井  究 東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役総合企画本部長
        城石 文明 東急電鉄株式会社 代表取締役副社長執行役員鉄道事業本部長
        野焼 計史 東京地下鉄株式会社 常務取締役鉄道本部長
        森地  茂 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授    (50音順)

開催概要

 コロナ禍の影響により、鉄道は、時差出勤、テレワーク等の大幅な拡大、更には失業・休業による需要の時間帯変化又は大幅な需要減に直面している。また、利用者の居住地の転換及び企業事務所の立地変更、本社事務所の縮小などについても、その萌芽が見られる。この傾向は、コロナが収束した後も、昨今の働き方改革や企業の生産性向上と相俟って、多少は元に戻るものの、コロナ感染拡大以前の状況と比較して相当進んだ形で常態化することが見込まれる。
 このため、個人及び事業者におけるこのような行動変容が、鉄道の利用需要や都市のあり方に与える影響を見極め、これらの相互作用も踏まえつつ、鉄道事業者による対応及び都市のあり方を含めた交通・地域施策を検討していくことが必要である。
 そこで、コロナが必ずしも収束していない時期ではあるが、行動変容の萌芽が観察されるこの時期に、このテーマに関して、現時点での情報共有と問題意識共有を図るための本シンポジウムを主催開催した。
  

プログラム

開会挨拶
宿利正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利正史
 運輸総合研究所 会長


開会挨拶
基調講演
森地 茂<br> 政策研究大学院大学客員教授 名誉教授

森地 茂
 政策研究大学院大学客員教授 名誉教授


「新型コロナウイルスが鉄道輸送と都市構造に及ぼす影響」

講演資料

パネルディスカッション

<コーディネータ>
 山内 弘隆
  運輸総合研究所 所長


<パネリスト>-発言順-

岸井 隆幸
 一般財団法人計量計画研究所 代表理事・日本大学理工学部土木工学科 特任教授
 講演資料 「with/after COVID-19


坂井  究
 東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役総合企画本部長
 講演資料 「ウィズコロナ、ポストコロナに向けて


城石 文明
 東急電鉄株式会社 代表取締役副社長執行役員鉄道事業本部長
 講演資料 「コロナを踏まえた最近の状況等について(東急電鉄)

野焼 計史
 東京地下鉄株式会社 常務取締役鉄道本部長
 講演資料 「ポストコロナを見据えた東京メトロの取組みについて

太田 雅文
 株式会社東急総合研究所 主席研究員・東京都市大学都市生活学部非常勤講師
 講演資料 「with/afterコロナのTOD(鉄道とまちづくり)

森地  茂
 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授
閉会挨拶
佐藤善信<br> 運輸総合研究所 理事長

佐藤善信
 運輸総合研究所 理事長


閉会挨拶

当日の結果

【森地 茂 政策研究大学院大学客員教授・名誉教授よる講演のポイント】
・新型コロナの都市構造への影響に関する多くの議論をブレーンストーミング的意味合いで把握しておくこと、また、政府、大学、シンクタンク等で行われている多くの実態調査から将来の影響をどう読み取るかの2点が重要。
・歴史からの教訓として、コレラ、ペスト、スペイン風邪などは流行後も都市への集中は続き、下水道整備や郊外ニュータウンなどの都市構造や都市政策の変化をもたらしたが、新型コロナについても現在のIT技術、医療、グローバル化などの進展が、今後どのように影響するかを見ていかなければならない。
・ポストコロナに関する議論として、生活者や企業の意識と行動の変容、国土構造への影響、都市構造への影響を考慮する必要がある。
・今後、経営判断していく時には、様々な社会の変化に対し、新型コロナの影響を重ね、見極めたうえでの判断が必要になる。その際は、1社だけのデータではなく、必ず他の企業や全国的なデータとの比較をしないと、判断を誤る可能性がある。

【太田 雅文 (株)東急総合研究所主席研究員・東京都市大学都市生活学部非常勤講師による講演のポイント】
・コロナ禍の状況では、これから「どうなるか」を考えるよりも「どうあるべきか」「どうしたいのか」というビジョンやシナリオを考えるべきだと思う。この変化は既存事業には痛みを伴うものの、乗り切ることができれば新しいビジネスチャンスが開拓できる絶好機となるであろう。

【岸井 隆幸 一般財団法人計量計画研究所代表理事・日本大学理工学部土木工学科特任教授による講演のポイント】
・COVID-19による鉄道需要の減少は、リモートワークやEコマースの普及のほかに教育機関のオンライン授業化が大きく影響している。後者はいずれ復活するが、前者はある程度継続する。これからは「職住の分離から緩やかな融合へ」、「WEBの増殖から無法地帯化へ」というCOVID-19以前の傾向が加速化すると思われる。
・今後はWEBとリアルの使い分けが重要になる。情報収集はAIが担えるが、信頼性のある情報の特定や重要な決断はFace to Faceの下で生じる。オフィスは、業務机の集積場所ではなく「働く人達が想いを共有する空間」としての意味が重要であり、都市においても同様に共有空間、コミュニティのスペースが重要になるであろう。

【坂井 究 東日本旅客鉄道(株)常務取締役 総合企画本部長による講演のポイント】
・新しい暮らしへの取り組みとして、テレワークに対応したサテライトオフィスの整備や、オフピーク通勤の推進として2021年春頃からJREポイントの付与を予定している。また、利用者の動向を見ながらオフピーク定期券なども検討している。まちづくりについても、新宿や渋谷、品川周辺の開発について、コロナを意識した対応をしていく。
・新領域への挑戦としては、新幹線を活用した物流を検討している。観光の振興をはじめ、地方中核駅のまちづくりなどを推進し、地方の活性化と新幹線を活用した交流の強化に繋げていきたいと考えている。

【城石 文明 東急電鉄(株)代表取締役副社長 執行役員 鉄道事業本部長による講演のポイント】
・今後も分散乗車の取り組みを進めていきます。
・東急線アプリ利用者や東急グループの協力企業を対象に働き方に関するアンケート調査によると通勤時間帯は、朝方はピーク後にシフトし、帰宅時間は前倒しになる傾向がある。今後も時間の経過と共に変化していくと想定されるため、継続的に見ていく。
・感染防止対策としては、窓開けや抗菌加工を行う他、混雑の見える化として、LED一体型防犯カメラを活用した混雑状況の配信を検討している。
・まちづくりの取り組みとして、City as a Serviceを考えている。個人のニーズやライフスタイルに合わせたサービスを提供し、リアルとデジタルの融合による次世代のまちづくりを推進していく。

【野焼 計史 東京地下鉄(株)常務取締役 鉄道本部長による講演のポイント】
・ポストコロナに向けて、人口減少やデジタル化の加速が想定される中で、「安心な空間」、「パーソナライズド」、「デジタル」の3つのキーワードを設定し、取組みを推進していく。「安心な空間」としては、浸水対策や耐震対策、ホームドア、オフピークプロジェクトに加え、まちと一体となった駅改良や、駅・車両の抗菌、混雑の見える化を一層の推進、「パーソナライズド」「デジタル」に関連した取組みの一つとして、MaaSアプリを用いて、エレベータールートや雨に濡れないルート、密を避けるルートなどの提供を検討している。
・今後も、東京の発展に貢献するとともに、安心で持続可能な社会の実現を目指す。

【パネルディスカッション・質疑応答のポイント】
①都市構造の変化
・郊外での高齢者の増加、社会参加など地域の魅力にかかわる都市構造の変化が生じる。
・私事行動は都心に出ずに郊外に変化している。
・都心内の多方向への移動、日中時間帯の需要喚起策、交通結節点の整備が今以上に重要になる。
②働き方の変化
・コロナ禍以前よりは増加したものの、現時点ではテレワークを縮小する企業も増加。
・鉄道の新たな付加価値の提供が必要。
・駅スペースの活用も拡がっている。1駅でも利用を促すことが重要。
③運賃のあり方
・東京近郊の鉄道運賃についても言及することが必要ではないか。
・オフピーク通勤が進むと需要が平準化され、コスト面でもメリットがある。
・コロナ禍の状況だからこそ運賃の議論ができるといい。

【森地 茂 政策研究大学院大学客員教授・名誉教授よる総括】
・今後、路線間の競争が益々激化すると考えられる。職場の郊外化、沿線での商業核の有無、確実に戻るインバウンドをどう考えるかが重要。
・首都直下地震や南海トラフ地震など防災に対する備えも重要。
・大阪圏や福岡圏の鉄道事業者は、東京圏より旅客が少なくても新線整備を実施している。東京圏の鉄道事業者もさらに頑張るべき。

以上、交通事業者、大学等研究機関、コンサルタントなど、幅広い分野から会場、オンライン合わせて1000名を超える参加者があり、盛会なセミナーとなりました。



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