地震災害時における外国人旅行者の情報収集と避難行動
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第132回運輸政策コロキウム
日時 | 2019/9/18(水)16:00~18:00(開場15:30) |
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会場・開催形式 | 運輸総合研究所 (東京) |
テーマ・ プログラム |
地震災害時における外国人旅行者の情報収集と避難行動 |
講師 | 崔 善鏡 (運輸総合研究所研究員) |
コメンテータ | 藤生 慎 (金沢大学理工研究域地球社会基盤学系准教授) |
開催概要
観光は国の重要政策として位置づけられ、インバウンド観光客数の急速的な増加は続いている。しかし、地震や風水害などの災害が多い日本では、外国人に関する災害対応の具体的な備えはまだ最近のことである。特に、過去の対応により情報収集の課題と避難開始まで遅れが出たという問題が指摘されている。本研究では、外国人旅行客の地震災害時における情報収集及び避難行動傾向の特徴を明らかにすることを目的とする。情報発信側におけるヒアリング調査及び東日本大震災時における外国人の情報ニーズを分析する。また、外国人旅行客の避難行動傾向と経験・知識・リスク認識などとの関係性を明らかにする。以上の分析により、訪日外国人に対する防災対策のより具体的な方向性について示唆を得た。
プログラム
開会挨拶 |
宿利 正史 |
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所長挨拶 |
山内 弘隆 |
講 師 | |
コメンテータ | |
質 疑 |
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閉会挨拶 |
佐藤 善信 |
当日の結果
当日のコロキウムでは、崔研究員より日本国内での訪日外国人旅行者への情報提供は、多言語化の取り組みに重点が置かれているが、消防庁、観光庁、観光地域組織など訪日外国人の観光危機管理に関わるステークホルダー間での連携が弱く、真に必要な情報が提供されているかは課題があることが示された。
更に研究成果から訪日外国人の情報収集行動、災害時における情報ニーズ、防災認識と避難行動に関する以下の分析が示された。
・東日本大震災時における訪日外国人の情報収集行動を見ると
①1日目には多くの訪日外国人は、家族や友人の安全確認の情報収集を実施
②交通運行情報に関しては、1週目以降に情報の重要性が向上
③年齢層が高い旅行者は安否確認を、若い年齢層は被害情報を求める傾向にある
⇒異なる国籍では、情報収集傾向や避難行動に違いがある可能性が示された。
・外国人旅行者の避難行動は2種類が想定される
①災害直後に深く考えることなくすぐ行動する
②知識と経験等を生かしてすぐ行動する⇒リスクを認識し、現状把握を行うことができる
・年齢層が若いグループは避難行動に十分注意をしていない可能性がある
・外国人旅行者の避難行動の傾向は現在地により影響がある
①観光地を回っている時・交通手段利用時:観光客はすぐ行動を取る必要がある(パニックに落ちやすい)
②宿泊施設にいる時:宿泊施設のスタッフによる情報提供を含め、意思決定をするまで相対的に時間がある
・日本人に比べ外国委人旅行者(韓国人)は災害の経験や地震に関する知識が少ない
・災害シナリオでの情報源と避難行動の分析
①どの場所でも情報源のインターネットと電話が多く利用されている
②観光地と乗り物の利用時には韓国人は周囲の行動に従う傾向がある
③乗り物利用時の一時停電の場合、日本と韓国両方とも周囲の行動にしたがうため、現場での情報提供側の多言語対応がさらに求められる
④宿泊先では日本と韓国両方とも災害直後と1日後もスタッフを情報源とする
上記を踏まえ、訪日外国人旅行者に対する観光危機管理には、包括的なアプローチが必要であり、「観光計画学」「災害管理」「情報提供」などを組合わせ、避難計画と情報提供を一体で検討する情報管理の一元化と共有する「観光災害情報マネジメント」の重要性を示した。
コメンテータの金沢大学藤生准教授より、GPSを用いたビックデータ解析に基づいた訪日外国人の避難実態として、訪日外国人の分布が時間帯別に把握可能であることが示された。また、「ひらがなは読める」、「簡単な漢字まじりの言葉が読める」レベルの訪日外国人旅行者もいることから、日本語での情報発信も「やさしい日本語」化の必要性もあることが提言された。
参加者との質疑では、その他さまざまな意見や質問が出るなど活発な議論がなされました。当日は、大学等の研究機関、国土交通省、鉄道事業者、交通事業者、コンサルタントなどから113名を超える参加者があり、盛会なコロキウムとなりました。
【 メディア掲載 】
交通新聞に第132回運輸政策コロキウム「地震災害時における外国人旅行者の 情報収集と避難行動」の開催記事およびコラム「墨滴」が掲載されました。
更に研究成果から訪日外国人の情報収集行動、災害時における情報ニーズ、防災認識と避難行動に関する以下の分析が示された。
・東日本大震災時における訪日外国人の情報収集行動を見ると
①1日目には多くの訪日外国人は、家族や友人の安全確認の情報収集を実施
②交通運行情報に関しては、1週目以降に情報の重要性が向上
③年齢層が高い旅行者は安否確認を、若い年齢層は被害情報を求める傾向にある
⇒異なる国籍では、情報収集傾向や避難行動に違いがある可能性が示された。
・外国人旅行者の避難行動は2種類が想定される
①災害直後に深く考えることなくすぐ行動する
②知識と経験等を生かしてすぐ行動する⇒リスクを認識し、現状把握を行うことができる
・年齢層が若いグループは避難行動に十分注意をしていない可能性がある
・外国人旅行者の避難行動の傾向は現在地により影響がある
①観光地を回っている時・交通手段利用時:観光客はすぐ行動を取る必要がある(パニックに落ちやすい)
②宿泊施設にいる時:宿泊施設のスタッフによる情報提供を含め、意思決定をするまで相対的に時間がある
・日本人に比べ外国委人旅行者(韓国人)は災害の経験や地震に関する知識が少ない
・災害シナリオでの情報源と避難行動の分析
①どの場所でも情報源のインターネットと電話が多く利用されている
②観光地と乗り物の利用時には韓国人は周囲の行動に従う傾向がある
③乗り物利用時の一時停電の場合、日本と韓国両方とも周囲の行動にしたがうため、現場での情報提供側の多言語対応がさらに求められる
④宿泊先では日本と韓国両方とも災害直後と1日後もスタッフを情報源とする
上記を踏まえ、訪日外国人旅行者に対する観光危機管理には、包括的なアプローチが必要であり、「観光計画学」「災害管理」「情報提供」などを組合わせ、避難計画と情報提供を一体で検討する情報管理の一元化と共有する「観光災害情報マネジメント」の重要性を示した。
コメンテータの金沢大学藤生准教授より、GPSを用いたビックデータ解析に基づいた訪日外国人の避難実態として、訪日外国人の分布が時間帯別に把握可能であることが示された。また、「ひらがなは読める」、「簡単な漢字まじりの言葉が読める」レベルの訪日外国人旅行者もいることから、日本語での情報発信も「やさしい日本語」化の必要性もあることが提言された。
参加者との質疑では、その他さまざまな意見や質問が出るなど活発な議論がなされました。当日は、大学等の研究機関、国土交通省、鉄道事業者、交通事業者、コンサルタントなどから113名を超える参加者があり、盛会なコロキウムとなりました。
【 メディア掲載 】
交通新聞に第132回運輸政策コロキウム「地震災害時における外国人旅行者の 情報収集と避難行動」の開催記事およびコラム「墨滴」が掲載されました。