船舶の代替燃料としてのLNGの可能性に関する調査研究

  • 海事・港湾

研究期間:2018 - 2019

(池田 隆之 ~ ’20年3月)

研究概要

従来、環境負荷低減の観点から、石油に代わるエネルギーの多様性が求められており、天然ガス、電気、水素等がクリーンなエネルギーとして注目されている。大きな推進力を要する船舶の燃料である重油の代替エネルギーとしては、熱源としての効率性が高く、液化により輸送しやすいLNG(液化天然ガス)が選択肢の一つであったが、我が国のLNGの価格は国際的に高い価格で調達されているため、油価との価格差が大きくならず、LNGの利用は経済的な優位性が出ない状況であった。しかし、近年、シェールガス等の供給源の多角化等により、LNG価格が安価となる見込みであり、LNGへの燃料転換が進展しやすい環境となる。また、LNGは、中東からの輸入に依存している石油と比べて、調達先の多様化により地政学的リスクが少ないため、エネルギー安全保障の面からも重要な役割を担っている。

船舶燃料のLNG化における海外の状況について、欧州では、先行的な特別海域の指定による厳しい環境規制の導入及び政策インセンティブの整備により、100隻以上のLNG燃料船が運航しており、バンカリング拠点の整備も進んでいる。また、中国では、欧州に遅れるものの、国内の深刻な大気汚染問題等から、2030年までに第一次エネルギー消費に占める天然ガスの比率を15%に引き上げる目標を掲げており、その一環としてLNG燃料船の普及やLNGバンカリング拠点の整備を進めている。

他方、我が国に目を向けると、世界最大のLNG輸入国であるにもかかわらず、LNG燃料船は1隻のみであり、バンカリング拠点の整備も事業の緒に就いたばかりである。貿易大国・海事大国である我が国において、このような世界的なLNGの潮流に乗って、海運のLNG化を推し進めていく必要がある。

 このような情勢を踏まえ、船舶燃料のLNG化への普及促進に向けて、コスト分析や我が国が今後取り組むべき方策等について調査研究を実施するとともに、国内外の有識者を交えた国際セミナーを開催した。

船舶の代替燃料としてのLNGの可能性に関する国際セミナー

研究成果の社会貢献