研究報告会 2023年度冬(第54回)

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Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2024/1/29(月)13:30~16:50
会場・開催形式 運輸総合研究所2階会議室 (及びオンライン開催(Zoomウェビナー))
開催回 第54回
テーマ・
プログラム
報告1「観光資源としての鉄道の存在意義
       ―観光資源化へ向けた取組みと効果―」

    武藤 雅威 運輸総合研究所 主任研究員

コメンテーター
    西藤 真一 桃山学院大学 経営学部経営学科 教授
         
討論・質疑応答


報告2「コンテナターミナルにおける海と陸の情報連携
       ―東南アジアでのデジタル活用事例を踏まえ―」

    大森 孝生 運輸総合研究所 特任研究員

コメンテーター:
    石黒 一彦 神戸大学大学院 海事科学研究科 准教授                         

討論・質疑応答

   (討論・質疑応答)モデレーター  屋井 鉄雄 運輸総合研究所 所長


開催概要

主なSDGs関連項目

報告1



報告2

プログラム

開会挨拶
宿利 正史  運輸総合研究所 会長

宿利 正史  運輸総合研究所 会長



開会挨拶
資料
報告1
武藤 雅威  運輸総合研究所 主任研究員

武藤 雅威  運輸総合研究所 主任研究員

講演者略歴
講演資料

コメント
西藤 真一  桃山学院大学経営学部経営学科 教授

西藤 真一  桃山学院大学経営学部経営学科 教授

講演者略歴
講演資料

回答

西藤先生のコメントに対する回答

講演資料

報告2
大森 孝生  運輸総合研究所 特任研究員

大森 孝生  運輸総合研究所 特任研究員

講演者略歴
講演資料

コメント
石黒 一彦  神戸大学大学院海事科学研究科 准教授

石黒 一彦  神戸大学大学院海事科学研究科 准教授

講演者略歴
講演資料

回答

石黒先生のコメントに対する回答

講演資料

モデレーター・閉会挨拶
屋井 鉄雄  運輸総合研究所 所長

屋井 鉄雄  運輸総合研究所 所長

当日の結果

【報告1】
観光資源としての鉄道の存在意義 ―観光資源化へ向けた取組みと効果―
報     告:武藤雅威 MUTO, Masai  一般財団法人運輸総合研究所 主任研究員
コメンテーター:西藤真一 SAITO, Shinichi 桃山学院大学経営学部経営学科 教授

〇研究の概要

1.背景と目的
日本には営業路線,廃止路線を問わず,鉄道車両(レストラン列車,動態・静態保存等),インフラ(歴史的・技術的価値のある土木構造物,廃線跡等),駅(動物駅長,秘境駅等),沿線風景(撮影スポット等)にまつわる鉄道観光資源が数多く存在する.いわゆるメジャーな鉄道観光資源である観光列車以外の,秘境駅や廃線跡等のマイナーな鉄道観光資源により,オールドファン等の潜在的な観光需要を掘り起こすことが地域活性化策の一案とも考えられる.本研究ではマイナーな鉄道観光資源に焦点を当て,“資源化により地域の活性化が図られるのか(どのように図るのか)?”,“自治体や地域はどのように観光資源として活用すべきか?”を考察して,これらの鉄道観光資源としての存在意義を改めて評価し,地域の鉄道ならびに地域社会の活性化に向けた有益な情報を提供することを目的とする.

2.鉄道観光資源化に向けた取り組み事例
秘境駅,撮影スポット,鉄道遺構の鉄道観光資源化に積極的に取り組んでいる自治体や地元の関連団体の方々に対するヒアリング調査を実施した.

1)秘境駅~JR小幌駅
 JR室蘭本線の小幌駅(図1)は,三方が山に囲まれた狭い平地に小さなホームがあるだけの駅で,周囲に民家はなく,鉄道以外のアクセスが極めて困難な場所に立地する.地元の豊浦町がこの観光資源化を進めてきた.鉄道書籍「秘境駅へ行こう!」で同駅が取り上げられた一方で,2015年には利用実績が乏しくコスト削減のため,JR北海道から町へ駅廃止の意向が伝えられた.そこで町長の決断で,町で駅を保存する意思を固めた.JRが示した年間の必要維持費は百数十万円だが,町へのふるさと納税「小幌駅存続応援基金」で集めた基金でその保存・管理財源の全額を確保している.町は現地にトイレを設置,ホームに鉄板を敷く等の整備事業を実施した.日常管理として清掃や除草等の軽作業をシルバー人材活用センターへ委託,多客期には警備員を配置,冬季には除雪を行っており,これらは地元の雇用対策としての効果がある.ホーム上の監視カメラでAIを活用したシステムにより来訪者数を自動カウントしており,鉄道マニアのみならず家族連れやアジアからの訪日客等,年間3千人ほどの来訪者がある.“人口3千5百人程度のこの町に,年間3千人も訪れる貴重な観光資源”との思いのもと,町では精力的に保存・誘客活動を行っている.

(図1)JR小幌駅


2)撮影スポット~JR只見線只見川第一橋梁
  図2は第一只見川橋梁を俯瞰できるビューポイントから撮影した写真である.この撮影スポットへの道は元々,電力会社の鉄塔点検用通路であったが,地元の三島町が遊歩道として整備,階段や柵,ベンチ,本数の少ない只見線の通過時刻を示した案内板を現地に設置した.コロナ禍初期までは,只見線撮影の目的で台湾等からこの撮影スポットへ多くの訪日客が詰めかけた.台北駅で「雪景色を走る只見線列車」の巨大懸垂幕が掲げられて評判となり,台湾からのブロガーの招聘やSNSで情報を発信・拡散させたことが大きな効果となった.地元は来訪者に伴う地域活性化を図るべく,その環境整備とPR活動を精力的に行っている.

(図2)第一只見川橋梁を渡る只見線列車


3)鉄道遺構~広浜鉄道今福未成線
 広浜鉄道今福未成線は広島と浜田を結ぶ都市間鉄道として着工後,二度の工事中断(戦中,国鉄末期)で営業線に至らず未成線となり,トンネルや橋梁等の遺構が残存している. 地元の浜田市では知る人ぞ知る存在であったが,2008年に今福線のコンクリートアーチ橋群(図3)が土木学会の選奨土木遺産に認定されて,地域の宝と認識された.その後,市長も関心を抱き,2015年には「広浜鉄道今福線を活かすシンポジウム」を開催し,今福線を活かす連絡協議会(支援団体)を設立,今日まで継続的な活動を行っている.主なトンネルや橋梁は市の普通財産(特定の行政目的に用いられるものでない財産)であり,予算をとった維持・管理をしていない.市から連絡協議会へ管理活動のために年間数十万円の補助金を交付している.PR活動として,ガイドの会結成,旅行会社によるツアー企画,ロケ地誘致,地元小学生に対する勉強会を実施している.このように地元の方々が主体となり,限られた予算内で施設保全や安全対策等の環境整備,観光案内の活動を精力的に行っている.

(図3)今福線コンクリートアーチ橋


3.鉄道観光資源化から観光PR活動展開への過程
 マイナーな鉄道観光資源の資源化から観光PR活動展開へ至る過程を図4に示す.発掘のきっかけとしては地元提案型もあるが,鉄道書籍への掲載を含めてその価値を見出す鉄道ファンの力が大きい.映画ロケやアニメ聖地化等により名所となる事例もある.マイナーな鉄道観光資源の秘めた価値に地元は気づきにくく,外部の人から評価され発掘されることが多い.観光資源化に向けては地元住民の協力や首長の賛同が要件で,それから資源化整備へと進む.PR活動として観光協会等が主導してHP掲載やイベント開催等が行われる.また日常管理として除草,樹木伐採,獣害対策,多客期警備等が施される.特に鉄道遺構では年々と朽ちていく姿も観光資源とみなし,現物のままで来訪者に見てもらうという資源保存の考え方が一般的である.財源としては,自治体の一般財源の投入もあるが,鉄道遺構のような普通財産には保全費用を支出しにくい.ふるさと納税の使い道の選択肢にあげれば大きな収入効果がある.ガバメントクラウドファンディングで廃線跡でのトロッコ列車の運営費を確保した例がある.グッズ販売は一般のファンを増やす効果がある.

(図4)観光資源化から観光PR活動展開へ至る過程


4.まとめ
 本研究では,鉄道施設・風景・遺構等に対して,観光資源としての存在意義を見出して,地域活性化につなげているベストプラクティスを把握した.観光客来訪に伴う直接的な効果以外にも地域活性化につながる副次的な効果も大きく,雇用・活動機会の創出(シルバー人材活用やボランティア活動)があり,学校教育では郷土史の教材として扱われ,ソーシャルキャピタルとして地域コミュニケーションや郷土愛の形成,まちの知名度アップにつながっている.自治体が主導するも,地域住民参加型の取り組みで活性化が図られていることが明らかとなった.鉄道観光資源としての活用法については,資源化に際しては歴史や経緯等のストーリー性を持たせ,来訪者に「自分なりの楽しみ方」を見出させる観光資源づくりに努めることが肝要と考える.SNSでの口コミや「映える」映像・画像を用いたPRが有効で,メジャーな観光資源にはない独自の魅力をいかに広く伝えるかが課題と考える.

〇研究報告へのコメントと回答

【コメント】本研究は,インフラの観光資源に注目している点,観光資源としての有用性を検討している点,観光資源化のプロセス/ステークホルダーの関係を調べている点に意義がある.「マイナーな観光資源」をどのように価値づけるか?今後の研究に向けた視点としての知見を問いたい.

【回答】まさにこれからの研究課題であるが,観光が地域にもたらす効果として,観光客来訪に伴う経済効果の他に,雇用の創出,地域まちづくりが進むこと,地域ブランディング,交流の拡大等があるものと考えている.メジャーな観光資源ほどではないものの,その地域にとっては大きく,かけがえのないものと評価できるほどの効果を生み出すことがある.このようなマイナーな鉄道観光資源の価値を見出す研究を深度化させていきたい.

<報告1の様子>


<報告2の様子>