日越外交関係樹立50周年記念認定事業
「持続可能な交通インフラ(鉄道、港湾、空港)の整備と運営」
~日本の経験を踏まえて~

  • その他シンポジウム等
  • 総合交通、幹線交通、都市交通
  • 鉄道・TOD
  • 航空・空港
  • 海事・港湾

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

主催 ベトナム交通運輸省
一般財団法人運輸総合研究所(JTTRI)
アセアン・インド地域事務所(JTTRI-AIRO)
後援 在ベトナム日本国大使館
ベトナム日本商工会議所
日時 2023/12/18(月)
会場・開催形式 ベトナム・ハノイ ホテルメリアハノイ (【オンライン併用、日越英同時通訳】)
テーマ・
プログラム
 【開会挨拶】 
   宿利 正史  運輸総合研究所 会長

 【来賓挨拶】 
   グエン ザイン フイ  ベトナム交通運輸省 副大臣
   渡邊 滋  駐ベトナム日本国大使館 次席行使

 【基調講演】 
   ファム ホアイ チュン  交通開発戦略研究所 所長代理
   上原 淳   国土交通省国土交通審議官

 【分野別講演】
   江口 秀二  鉄道建設・運輸施設整備支援機構 理事
   西村 拓   国土交通省大臣官房技術参事官(港湾)
   山腰 俊博  国土交通省大臣官房審議官(航空)

 【閉会挨拶】
   グエン ザイン フイ  ベトナム交通運輸省 副大臣


※詳細(英語)についてはこちらをご参照ください。

開催概要

 本年は日本ベトナム外交関係樹立50周年の節目の年であります。この良好な関係のもとで、両国は人流や物流を支える交通インフラの整備を進めてきました。本セミナーでは、ベトナムの重要な3つの交通インフラ(鉄道、港湾、空港)について、SDGsや気候変動に留意した持続可能な交通インフラの整備や運営に関する政策等を検討するうえで役立つ日本の経験を共有しました。これにより、ベトナムの更なる発展に寄与することを期待するとともに、今後も両国の一層の関係強化に貢献して参ります。


主なSDGs関連項目

プログラム

開会挨拶

宿利 正史  運輸総合研究所 会長

開会挨拶
講演者略歴

来賓挨拶

グエン ザイン フイ
 ベトナム交通運輸省 副大臣

講演者略歴


渡邊 滋
 駐ベトナム日本国大使館次席公使

講演者略歴
基調講演

ファム ホアイ チュン  
 交通開発戦略研究所 所長代理

講演者略歴

講演資料(日本語)
講演資料(英語)


上原 淳   
 国土交通省国土交通審議官

講演者略歴

講演資料(日本語)
講演資料(英語)
分野別講演及び質疑応答

<鉄道>日本の鉄道整備
 江口 秀二  
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 理事

講演者略歴
講演資料(英語)


<港湾>日本の港湾政策
 西村 拓   
 国土交通省大臣官房技術参事官(港湾)

講演者略歴
講演資料(日本語)
講演資料(英語)


<空港>日本の空港整備、運営及び脱炭素の取り組みについて
 山腰 俊博     
 国土交通省大臣官房審議官(航空)

講演者略歴
講演資料(日本語)
講演資料(英語)
閉会挨拶

グエン ザイン フイ  ベトナム交通運輸省 副大臣

当日の結果

■来賓挨拶
○グエン・ザイン・フイ ベトナム交通運輸省 副大臣

 ベトナムの経済や社会の発展、そして国の安全保障において、交通インフラは戦略的な要素の一つと位置付けられている。現在も重要な交通インフラの整備を目指して取り組んでおり、これまでの取り組みによって次のような成果を上げてきた。
・高速道路ネットワークは最初に29の高速道路ルートで構築され、全長1,729kmとなっていた。現在、約1,071km の建設が進行中であり、2025 年までに国内に3,000km以上の高速道路を整備することを目指している。
・鉄道について、1881年の敷設以来、整備と開発が行われてきた。カットリン~ハドン都市鉄道線を開業し、ホーチミンのメトロ1号線に加えて、他の線路の建設も進めている。ハノイとホーチミン市の都市鉄道プロジェクトの進捗を加速させる取り組みと同時に、南北高速鉄道プロジェクトの投資政策の進捗にも焦点が置かれている。
・港湾について、商品の輸送、輸出入の能力を確保するために、286の港を運営している。その中で、ラックフェン港が代表的な事業となっている。
・空港について、現在22の空港を運営している。ロンタイン国際空港(第1期)、タンソンニャット国際空港ターミナルT3の建設を着工した。
 その他、日本政府からは、これまでベトナム全国で様々な支援を受けている。例えば、ハノイではノイバイ空港の第2旅客ターミナルの整備、ニャッタン橋とノイバイ空港を結ぶ連絡道路整備などの支援を頂いた。北部ではクアンニン省にあるバイチャイ橋、中部ではハイヴァントンネルで最先端の技術支援を受けた。また、南部ではベンルックからロンタインまでの高速道路が2025年の開通を目指して建設されている。

 今後、ベトナムの交通インフラの位置付けとして、道路、港湾、鉄道、空港、内陸水路の5つの分野別の計画をしている。2030年までのベトナムの目標は次のようになる見込みである。
・約5,000kmの高速道路の完成に努める。
・既存の鉄道路線の列車の安全性を確保するための改良と改修
・南北高速鉄道の優先2区間(ハノイ-ヴィン、ニャチャン-ホーチミン)への投資
・特にハイフォンとバリア・ブンタウ地域の国際ゲートウェイ港を結ぶ多くの鉄道路線の建設を優先
・ホーチミン市とカントー市を結び、中国、ラオス、カンボジアと国際的に結ぶ
・ハノイ市とホーチミン市の交通渋滞を緩和するための都市鉄道の拡充
114,000万トンから142,300万トンの貨物(うちコンテナ貨物は3,800万から4,700TEU)の貨物量と1,010万人から1,030万人の旅客に対応する港湾システムを完成させる
14の国際空港と16の国内空港からなる30の空港システムを形成させる
 上記の目標を達成するためには多くの資源の準備及び海外からの協力支援が必要である。特に、日本とベトナムの包括的戦略的パートナーシップへの格上げがなされたため、日本からの貴重な支援が計画の成功にとって不可欠である。

 本日のセミナーを通じて、日本からの経験を踏まえ、専門家同士がベトナムの交通インフラの5つの分野の実現に向けた議論を行うことは、非常に有益な取り組みになる。両国の外交関係が50周年を迎える本年は、「包括的戦略的パートナーシップ」になっている段階であり、本日の意見交換・議論が一層意義深いものになることが期待される。また、このような交流は、交通インフラ分野における両国の協会、企業、研究機関にとって、将来の協力やビジネスアイデアを共有し、交換し、結び付け、促進する非常に良い機会である。
 ベトナム交通運輸省を代表して、日本の国土交通省、運輸総合研究所、在越日本大使館、日本の専門家、企業の皆様に、これまでの多大なご支援とご協力に心より感謝申し上げる。本日のセミナーは、今後の両国の協力関係及びベトナム交通運輸省と日本の国土交通省の連携を一層発展させる機会になると思う。



○渡邊 滋 駐ベトナム日本国大使館 次席公使
 本年は日越外交関係樹立50周年という記念すべき節目の年で、年間を通じて素晴らしい交流が行われ、日越関係は政治、経済、文化あらゆる面において過去最高の状態にあることを実感した1年だった。
 2月には岸田総理とチョン書記長のテレビ会談が行われ、両国の関係を更なる高みに引き上げることが合意されている。また先月末、トゥオン国家主席が日本を訪問し、岸田総理との首脳会談において両国関係をアジアと世界の平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップに引き上げることに合意、そして共同声明が発出された。共同声明の中で両首脳は、日本の対ベトナムODA30年以上にわたりベトナムの社会開発に大きく貢献してきたとの認識を共有した上で、日本のODAを再活性化しベトナムにおける大規模で質の高いインフラ開発プロジェクトを促進するため、相互協力を一層強化することを確認している。
 先週末からは、チン首相が日アセアン特別首脳会議への参加のために訪日しており(タン交通運輸大臣も同行)、首脳会談ではインフラ開発に関する具体的な議論が行われた。例えばホーチミンメトロ1号線の第4期借款の署名、交換が行われた。これによって2023年は円借款の供与限度額である、2017年以来となる1,000億円を超えた。

 日本のODAは、質の高い持続可能なインフラという考え方に基づき、インフラ整備を支援している。今回のセミナーで取り上げる鉄道、港湾、空港に関しては、次のようなベトナムの持続可能なインフラの整備、運営を支援している。
鉄道:南北鉄道の改修、ホーチミンメトロ1号線の整備
港湾:カイメップチーバイ港、ティエンサ港、ラックフェン港の整備
空港:タンソンニャット空港、ノイバイ空港といった南北の主要空港の旅客ターミナルビルの整備
 本日のセミナーでは日本側から鉄道、港湾、空港の主要3分野における専門の方々から、SDGsや気候変動に留意した持続可能な交通インフラの整備、運営について日本の経験に根ざした話をしていただく。

 我が国の新幹線や港湾、空港の売りについて、一部私からも紹介したい。
新幹線:1時間あたり最大17本という世界でも類を見ない高頻度の輸送を、高い定時性・安定性を保って実現している。
港湾:臨海部の産業立地と港湾開発を一体的に推進する臨海部産業立地型の港湾整備・運営を官民連携し実施している。
空港:定時運行、安全性、清潔さを保ち、ユニバーサルデザインへの配慮もある。特に空港エリアに複合商業施設機能を備え、非航空系収入の増大にも取り組むといった空港運営の手法が強み。
 本日のセミナーの内容は、ベトナムにおける質の高いインフラの整備・運営のために大変参考になるものである。50周年のクロージングを飾るに相応しい、素晴らしいセミナーになると考える。


■基調講演
◎「持続可能なインフラの整備と運営に関する運輸セクター計画」

 ファム・ホアイ・チュン 交通開発戦略研究所 所長代理
●運輸セクター計画の概略
 ベトナムのGDP4,090億米ドルで、世界の経済規模としては37位に位置している。ベトナムは様々な条約に加盟しており、特にCOP26では2050年までのネットゼロ達成、国が決定する貢献目標(NDC)に向けて努力している。これにより、2030年までに温室効果ガス排出量を43%削減する計画である。また、ベトナムは世界の50の新興グローバルロジスティクス市場で上位の10位に入り、東南アジアで最もロジスティクスの発展が期待される。これらがベトナム交通インフラの開発にとって重要な条件になっている。
 交通運輸発展の特徴として、初めて5件の運輸計画が実施・決定された。計画では、各交通手段の利点と各地域の特徴を最大限に活かすため、全国各地の交通手段や地域間のつながりに重点が置かれた。特に南北線については鉄道整備推進をしていく予定である。同時に、臨海域や内陸水路の交通も促進され、物流のコストの削減が計画されている。2023年にベトナム国会で決定された決議81号に基づき、交通運輸省は道路・港湾・鉄道・空港・内陸航路の5つの分野別の計画が作成された。
 2030年までの交通インフラに対する総投資資金需要は約2兆690VND(約125億円)であり、そのうち鉄道、港湾、空港の分野が占める割合は約1兆110VND48.9%に相当)。持続可能な交通インフラを実現するため、1999年からJICAを通じ交通量の予測に関する支援を受けている。その調査結果に基づき交通網の計画が進められている。


●2021年~2030年の交通網整備基本計画と2050年までの見通し
・港湾
 全国の海岸線は3,000km以上あり、政府は海洋を重要な資源と位置付けている。現在は1,477隻の船舶(世界22位)を保有。取扱量は年々増加しており、輸出貨物量の約80%が港湾を経由する。港湾は5級のランクに分かれて、全国で63省のうち28省と市が海岸線を有しており、その全てが社会経済開発に貢献するための港湾システムを備える。今後経済の需要と貨物量の予測より、2030年まで全土で36の港湾を整備する予定である。また、2050年までのビジョンの計画において、港湾のグリーン化も推進していく。経済成長に伴い、港湾、道路、内陸水路の連携性を重視した計画が策定されている。

・鉄道
 機関車を191両、客車・貨車を3,122両保有している。旅客量はコロナの影響で一時的に減少したが、現在は回復し右肩上がりの傾向。鉄道運送は、経済成長の需要に対応していない状況であるが、積 極 的 な 発 展 が 見 ら れ る。鉄 道 イ ン フ ラ は 総 延 長 が 約3,143kmで、6%が標準基準(1,435mm)、9%が混合軌間、残りの85%は狭軌1,000mm軌間である。
 2030年までに4,820kmに相当する16路線(既存7路線、新規9路線)の鉄道を整備する計画が進行中である。この計画は中国との国境を経由して、ヨーロッパへの貨物輸出を目指す鉄道の整備や、ラオス、カンボジア等の国際鉄道接続を重点的に進める予定である。さらに、港湾専用の鉄道の整備も計画されている。南北高速鉄道の整備は鉄道開発の中で最も重要な事業となっており、2045年までに完成する予定で、交通運輸省が整備の計画の具体化を積極的に進めている。また、ハノイとホーチミン市の2つの鉄道ハブを結ぶ鉄道路線や都市鉄道の整備をTOD型で進める予定である。
・空港
 全国には22の空港(国際空港9、国内空港13)がある。これらの空港の収容能力は旅客数9,240万人/年、貨物100万トン/年である。コロナ禍の影響で旅客数と貨物量は一時的に減少したが、現在は回復しつつある。2022年には旅客数が約4,900万人、貨物量が30万トンに達している。空港の計画としては、北部はノイバイ、南部はタンソンニャットと建設中のロンタイン国際空港、中部はダナン国際空港、西南部ではカントー空港が中心になっている。これらのハブを中心にして空港のネットワークを計画している。2030年までに30の空港(国際空港14、国内空港16)を整備、2050年までに更に3つの空港を増やしていく予定である。


持続可能な交通インフラの整備と運営の方向性と解決策
資金:交通インフラの保守に資金をバランスよく適切に配分する。

テクノロジー:最新のテクノロジーと技術の研究と応用を強化し、デジタル変革を推進し、人工知能を活用する。
材料:持続可能で環境にやさしい新しい材料を使用する。
エネルギー:開発プロセスにおいて、グリーンエネルギーと再生可能エネルギーにシフトする。
人材:持続可能な開発に関する能力開発と人材育成を強化する。
 特にベトナムは2045年までに高所得先進国になるという目標を掲げており、その中で交通インフラの整備が大変重要な役割を果たすこととなる。



◎「日本における持続可能な交通インフラの整備・運営」
 上原 淳 国土交通省国土交通審議官
 モノの交流の点では、両国間の貿易は順調に拡大、直近10年で双方の貿易量は約3倍に増加し、現在、ベトナムにとって日本は第4位の貿易相手国になっている。ヒトの交流の点では、両国間の人的往来はコロナ禍前の10年間で約4倍に増加、2019 年時点で双方の交流人口合計は約145 万人に達する。また、コロナ後の双方の往来は順調に回復している。ヒト・モノの交流を支える国際交通として、両国において多くの港湾・空港が定期的な航路・空路で直接つながっており、今後は両国の各都市間で交流が増加していくことも期待される。


日本における持続可能な交通インフラの整備・運営
 持続可能性という言葉は様々な意味を含むが、大きく経営の持続可能性と環境の持続可能性の意味があると思う。特にインフラ整備・運営には経営の持続可能性が重要。2000 年代以降になると、交通インフラのネットワークが概成したため、整備から運営へと政策の重点が移ってきた。公共インフラとして公的主体が関与し、戦略的に投資を行う一方で、民間の資金や活力も利用する様々な公民連携の形が模索されてきた。

・鉄道
 日本は1億人超の人口を有しながら、国土を占める可住地面積が狭く、多くの人口が集中して居住している。このような地理的な条件は、大量輸送機関としての優れた特性を発揮する鉄道に大変適している。このため、日本の鉄道では利用者負担による自立採算を基本とし、主に民間事業者により施設整備・輸送サービスの提供が行われている。
 日本の新幹線システムの特徴は、拠点都市間を直行する便と地方都市にも中継する便を組み合わせて、1時間最大17本という他国と比べ高密度での運行を行っている点である。また、大都市の2地点間を短時間で結ぶだけでなく、沿線一帯の発展を新幹線が支援し、日本の経済を大きく発展させる役割を新幹線が果たしているのが特徴。
 また、我が国の鉄道システムを支えているのは適正な利潤を前提とした運賃のスキーム。これにより、経営面での持続可能性が維持され、常に安全で快適なサービスを利用者に提供することが可能となる。まちづくりと一体となった鉄道整備(日本型TOD)では、鉄道整備と併せて拠点駅周辺の不動産等の開発を実施、郊外部の鉄道の沿線においても住宅地を大規模に開発した。こうした日本型TODは鉄道事業の持続可能性を飛躍的に高める。

・港湾
 2000年代に入り国際物流が増大し、コンテナ船を中心として船舶の大型化が進展。大水深・高規格のターミナルを有する拠点港湾の整備が重点的に行われた。重点的な拠点形成に対し民間の力を活用しながら整備をしてきたのが、日本の港湾整備の特徴。
 港湾の整備・管理運営主体は、地方自治体等の港湾管理者。一方、国の政策の方向性に沿って港湾整備等が進められるよう、その重要度に応じて、国からの補助や直轄整備等が行われている。整備費用の規模も大きいため、航路や防波堤、岸壁といった部分は国や港湾管理者が公共事業として整備する。一方で、その背後の港湾全体の機能を高めていくような、例えば荷捌き施設等の機能施設は港湾管理者が債権を発行して整備を行い、利用料や土地の収入でその債権を返済していくことになる。
 こうした整備・運営方式が基本形となるが、実際は時代の要請に応じた整備・運営を行うために適した制度が模索されている。例えばコンテナ港湾については、急速に増大するコンテナ貨物量を処理するため受益者負担による民間資金の導入が図られた。さらに事業規模が大きくなると公団・公社の方式でも事業費の負担が困難となるため、コンテナターミナルの一部を国や港湾管理者が公共で整備し、それを公社が運航会社へ貸し付けるという新しい方式が導入された例もある。

・空港
 高度経済成長を背景とした国内外の高速交通需要への対応として国内の航空ネットワークを整備してきた。現在は全国で 97の空港が整備されている。空港の整備・管理の主体について、国際・国内の航空輸送網の拠点となる空港は国または空港会社が設置・管理し、それ以外は地方公共団体が整備・管理主体となっている。
 空港施設は、大きく分けて、管制等の航空保安施設、滑走路や空港用地等の空港基本施設、空港ターミナルビル等の3種類。いずれも利用者負担の下、航空保安施設については国、基本施設については空港設置者、空港ビル等は民間事業者が維持管理をする。空港についても整備から運営へと政策がシフトしており、着陸料収入などの航空系収入と免税店売上などの非航空系収入の一体化、民間の知恵と資金を活用した効率的運営、地域や空港のポテンシャルを最大限活かした航空ネットワークの拡大などを目指すこととなった。このため民間事業者に対して、土地や基本施設の運営権を付与し、空港ビル等と一体的な運営を可能とするコンセッション方式が、国管理空港を主として順次導入されている。


脱炭素化に向けた交通インフラの整備、運営
鉄道:エネルギー効率の良い鉄道については、更なる脱炭素化に向け、水素燃料電池車両の開発・実証試験をJR東日本等が行なっている。

港湾:港湾施設の脱炭素化や臨海部の産業の脱炭素化に向けた取組みを進めている。
空港:各空港での炭素排出量を 2030 年度には 2013 年度比で46%以上削減する等の目標を設定(2022年度)。目標に向けた設備導入やモデル実証事業等への支援を開始している。


■分野別講演
◎「日本の鉄道整備」

江口 秀二 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 理事
我が国の高速鉄道(新幹線)の整備状況
・これまでに約2,830kmの新幹線が整備され、営業運転が行われている。また、現在 612kmが建設中で、今後整備予定の路線もある。
・最初に整備された東海道新幹線は1964年に開業し、続いて山陽新幹線が1975年に博多まで開業した。東海道新幹線や山陽新幹線は、当時輸送力がひっ迫していた在来線の線増事業として整備された。線増の方法として、
第1案:既存の在来線に併設して狭軌で整備
第2案:別線として狭軌で整備
第3案:別線として標準軌で整備
 の3つの案について、輸送力や工事費、工期、安全性等の観点から比較検討された結果、第3案(別線を標準軌で整備)が採用され、現在の新幹線は全て標準軌で整備されることになった。
・東海道新幹線の計画段階では貨物列車を夜間に走らせる構想もあったが、夜間の線路保守作業の時間が十分確保できないため、この構想は実現しなかった。
・その後1970年に新幹線の整備についての法律が制定され、その後の新幹線はこの法律に基づいて整備している。


新幹線の特徴
・新幹線の特徴として安全性、信頼性、高密度、大量輸送、高速性、環境配慮の6つが挙げられるが、本日は時間の関係で、次の3つについて説明する。

大量輸送:旅客輸送人員は年々増加を続け、現在は1日当たり100万人以上を輸送。
高速性:新幹線の最高速度は東海道新幹線の開業当時は最高時速210km。その後技術開発等により向上し、2013年からは東北新幹線で時速320kmで走行、現在は時速360kmでの営業運転を目指した走行試験が進められている。
環境配慮(騒音対策):速度向上する際の最大の課題は騒音対策。日本では環境省が定めた厳しい騒音基準を満たすため、車体を流線形にして凹凸を無くす、パンタグラフの数を減らすなどの対策を行っている。


新幹線の整備方法

 現在整備している新幹線は国の公共事業として行われており、上下分離方式で下物(構造物)を公的機関である鉄道・運輸機構(JRTT)が整備し、営業するJRに貸し付けている。新幹線の建設財源としては、国・地方・JRが負担。JRは開業30年間で一定の定額貸付金を支払うことになっており、その貸付料を除いた残りを国と地方が2:1で負担する。

新幹線の開業効果
 2015年に金沢まで開業した北陸新幹線の例では、東京から金沢までの所要時間が1時間20分短縮され、観光客の増加や地価の上昇等の効果が見られた。

ベトナムへの参考情報
 ベトナムと日本では、面積はそれほど変わらず、形もよく似ている。日本の高速鉄道網を見れば、将来のベトナムの高速鉄道網がイメージできるかもしれない。高速鉄道の整備を目指すベトナムに参考になると思われる事項を2つ説明する。
①軌間の相違
 新幹線の軌間は標準軌、在来線はベトナムと同様に狭軌(ベトナムの軌間は1000mm、日本は1067mm)で、新幹線の車両と在来線の車両は相互に乗り入れることができず、両者の間は乗り換えが必要。この軌間の相異への取組みとして、在来線の軌間を狭軌から標準軌に広げる改軌による直通運転化や、乗換抵抗を軽減するための新幹線と在来線の同一ホームでの乗換等を行っている。
②新幹線と貨物列車の関係
 本州と北海道とを結ぶ海底トンネルである青函トンネル(全長約54km)では、日本の中で唯一新幹線の線路を貨物列車が走行している。このトンネルを新幹線と貨物列車が共用しているが、貨物列車が走行している時間帯は、新幹線は高速走行せずに時速160kmで走行している。理由は車両の整備水準の違い等。一方、貨物列車の走行本数が少ない年末年始等の時期は、トンネル内を貨物列車が走行していない時間帯に時速210kmで走行している。

都市鉄道の整備
 日本の都市鉄道の多くは民鉄事業者によって整備されている。民鉄事業者の収入構造は、不動産業、百貨店や小売事業、ホテルや旅行業等の非運輸業が主で、子供から高齢者までの沿線住民に対して、鉄道を中心とした総合的なサービスを行っている。こうした都市鉄道では、TODと呼ばれるまちづくりと一体となった整備方法が多く用いられている。具体的な事例を3つ紹介する。
土地や固定資産への課税:日本では固定資産税などは地方自治体の税収となる。鉄道整備に伴う地価上昇により税収が上がるため、地方自治体が鉄道整備の一部を負担する根拠にもなる。
受益者負担:鉄道整備により直接受益する受益者の負担。御堂筋線やみなとみらい線(MM線)で用いられた。
土地区画整理:土地区画事業によって生み出された用地を鉄道の整備用地に充てる方法で、東急田園都市線や、つくばエクスプレスなどで活用された。

持続可能な鉄道の在り方
 日本が直面する大きな課題の一つが人口減少と高齢化。そのような中で鉄道を引き続き持続可能な交通機関として維持・発展させていくための取組を二つ紹介する。
・一つ目は、保線業務における新技術の活用。鉄道分野では特に保線分野の人材確保が難しくなっており、夜間の保線作業の負担を減らすために、営業列車にカメラをつけてモニタリングし、カメラ画像を解析することによってレール締結装置の緩みなどを確認するもの。夜間の点検作業が日中のオフィスでの確認作業になり、働き方改革にもなっている。
・二つ目は、新交通システムで導入されている自動運転技術の一般の鉄道路線への適用。運転士不足に対応するため、運転は自動で行い、運転免許を持たない係員が異常時の操作を行う方法。

最後に
 JRTTは国際業務も行っている。本日のセミナーを通じて、ベトナムとJRTTとの関係が深まることを期待する。


◎「日本の港湾政策」
西村 拓 国土交通省大臣官房技術参事官(港湾)
日本の港湾の概要
 我が国の港湾は、背後地に東京、大阪などの大都市やみなとまちを抱える。港湾周辺の町に人口の約半分が住み、物流・産業機能が高密度に集積していることが特徴。
 我が国経済の高度成長が続いた1950年代から1970年代までは、「日本の経済成長を支えるための物流及び産業機能の量的拡充」を図ることを目的として、港湾整備を推進してきた。その後、高度経済成長期に生じた交通の混雑、環境の悪化等の反省を踏まえ、1985年に、「21世紀への港湾」と題する長期港湾政策を策定し、物流、産業、生活の3つの機能が調和良く導入された「総合的な港湾空間」の形成を図ることとし、全国でウォーターフロント開発を進めてきた。直近では2018年に「PORT2030」と題する中長期的政策を策定し、ブランド価値を生む空間形成など、新たな施策に取り組んでいる。

日本の港湾整備と管理・運営スキーム
 日本の港湾の基本方針と港湾計画について、まず国が「港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針」を作成する。そして、国が作成した基本方針をもとに、港湾管理者が港湾の長期的な開発、利用及び保全に関する港湾計画を作成。そして、作成された港湾計画をもとに、国と港湾管理者等は港湾施設を建設し、改良し、維持し又は復旧する工事を行う。
 日本の港湾管理のスキームについて、国は基本方針の策定を行うとともに、予算配分や大規模な施設の建設を行う。港湾管理者である都道府県又は市町村は、港湾計画の策定、港湾施設の建設および維持管理、運営を行う。なお、一部の港湾では、港湾法に基づき民間事業者が業務を行う。そして民間のターミナルオペレータが港湾運送事業などのサービスを提供している。
 港湾の整備に係る事業区分について、防波堤、岸壁、航路・泊地等は、国または港湾管理者が公共事業である港湾整備事業として整備を行う。ふ頭用地や上屋等、それと、港湾関連用地・工業用地等については、地方債を発行して行う事業として、港湾管理者等が整備を行う。これらの他、民間事業者等が自ら必要となる港湾施設の整備を実施。
 港湾整備事業における国費の負担率・補助率について、基本的には、国際輸送の拠点として重要度が高い港湾の施設ほど、国の負担率が大きくなる。たとえば、国際戦略港湾の大水深岸壁は、国の負担率が7/10であり、地方港の岸壁は、国の負担率が4/10となっている。
 一つの事業の中でも、国と港湾管理者が工事対象や費用を分担しながら港湾整備を進めることが特徴となる。

最近の港湾分野の政策紹介
・カーボンニュートラルポート(CNP)構想
 カーボンニュートラルポート(CNP)に関する政策を進めている。CNPを通して、ターミナル運営の脱炭素化、港湾周辺に立地する産業の脱炭素化の2つの目標を達成したいと考えている。
ターミナルオペレーションの脱炭素化:ゼロエミッションおよびゼロエミッションに近い荷役機械や船舶用陸上電源設備の導入など、港湾運営の脱炭素化を図るCNP政策を推進している。
港湾周辺に立地する産業の脱炭素化:日本の総CO2排出量の60%が港や沿岸地域に立地する製油所、発電所、製鉄所、化学工業から排出されている。これらの産業で使われるエネルギーを新エネルギーに転換していくため、水素やアンモニアの受け入れ環境の整備により、港湾や沿岸域からの温室効果ガス排出削減を支援することが必要。
・洋上風力発電の導入促進
 港湾エリア内での洋上風力発電の導入を促進するため、2016年に港湾法を改正し、2019年に一般海域での導入促進のための新たな法律を経済産業省と共同で制定した。加えて、洋上風力発電の設置や維持管理に不可欠な「基地港湾」の整備及び維持管理を円滑に行うための新たな制度を導入するため、2020年に港湾法を改正した。
・「命を育む港のブルーインフラ拡大プロジェクト」
 国土交通省では、カーボンニュートラルの実現のため、ブルーカーボン生態系を活用した、CO2吸収源の拡大を目指している。これらの取組の一環として、藻場・干潟などを「ブルーインフラ」と位置づけ、全国へ拡大することを目指し、取組を加速化している。

ベトナムとのトピック
 ベトナムへの港湾管理制度の導入について、2005年から2009年までのJICA技術協力プロジェクトでは、港湾管理能力強化や効率的な港湾運営について支援を行った。その成果として、ベトナム海事法が2015年に改正され、港湾管理制度が導入された。
 ベトナムでの港湾技術基準の策定について、長い歳月の協力を行ってきた。本年からはJICA技術協力によって、港湾技術基準の策定とその普及を行っていくが、引き続き国土交通省としても支援していく。
 ラックフェン港は、日本とベトナムの官民連携により、整備・運営が行われる二国間の協力関係を象徴するプロジェクトの一つである。上下分離方式により整備され、円借款により防波堤、航路浚渫、埋め立てが行われ、桟橋や荷役機械は民間企業が整備し、運営も民間企業が行っている。


◎「日本の空港整備、運営及び脱炭素の取り組みについて」
 山腰 俊博 国土交通省大臣官房審議官(航空)
我が国の航空輸送の動向
 国内線の旅客数は我が国の経済成長の程度に関わらず一貫して増加傾向を示す。2008年のリーマンショック、2011年の我が国での震災の影響を受け一時減少したが、その後回復し、2017年度に1億人を突破した。国際線について、2001年の米国同時多発テロ、2003年のイラク戦争と、2008年のリーマンショック、2011年の地震で一時的に落ち込みはあったものの、訪日外国人旅行者等の増加も影響し2018年に1億人を突破している。いずれも新型コロナの影響で旅客数は大幅に減少したが、2021年以降は再び回復をしており、国際線では便数べースではコロナ前の85%程度に回復している。

日本における空港整備の計画、予算及び整備プロセスについて
 1967年から五ヵ年計画を合計7回策定し、計画的に実施している。この空港整備5か年計画には、計画額、空港整備の目標及び具体的な整備事項等が盛り込まれている。
 五ヵ年計画に基づき空港を整備した結果、現在の空港数は全国で合計97に達する。国内への空港の配置という観点では完了と言える一方、航空需要の増加は続いているため、空港政策の課題は整備から運営にシフトしている。
 空港整備に必要となる費用の国の負担率や補助率について、羽田空港は首都の空港として国が管理する空港であるため、国が100%負担する。地方が管理する空港は、基本的には国の負担率は50%となっている。一般的な空港整備(滑走路の延長など)を新たに決定するプロセスについて、日本の空港整備手続きで透明性の確保の観点から、調査計画の検討段階から住民の方々に情報を公開して透明性を図るという特徴がある。

空港運営のコンセッションについて
 空港の所有権を国、運営権を民間事業者に設定し、民間事業者が運営をするという形態。コンセッションにより、滑走路等の航空事業から空港ビル駐車場等の非航空事業を民間事業者が一括して一体的に経営するということが可能になる。受託した民間事業者は安定的で自由度の高い施設運営ができることから、利用者ニーズを反映した質の高いサービスを提供できる。
 例えばコンセッションの事業者が着陸料を引き下げればエアラインの就航の意欲が高まる。また、空港の売り込みを強化する事によって、路線数の増加、旅客数の増加につながる。民間事業者のノウハウを活かし、ターミナルビルの施設等に投資をする事で空港ビルとしての売上の増加も見込まれるようになる。結果として空港を基点とした地域への訪問客も増え、地域経済の活性化も期待される。
 具体例として、熊本空港では国内線と国際線で一体的に新しい旅客ターミナルを整備し、免税店が大幅に拡張され売り上げも伸びている。高松空港では空港を基点としたリムジンバスの路線が拡充された。福岡空港ではそれまで地方自治体が行っていた空港セールスについて、事業者に専門部署が立ち上げられ、路線の誘致活動や地域への広報活動が積極的に行われた結果、路線数が著しく増加している。

空港における脱炭素化について
 2021年に学識者などで構成される「検討会」「官民連携のプラットフォーム」を立ち上げ、その翌年(2022年)には空港管理者自ら計画的に取り組めるような制度を導入(法律を改正)した。各空港におけるCO2削減等の目標数値を設定し、日本全体でカーボンニュートラルを目指すこととした。空港施設や空港車両等からのCO2排出の削減、太陽光等の再エネルギー拠点化が主な施策。
 脱炭素化を進めていく制度として、まず国が脱炭素化の基本方針を策定し、その方針に合うように空港管理者、航空運送事業者が脱炭素化の計画を作る。国はその計画が基本方針に沿うか審査をし、問題がなければ認定をする。空港には関係者が多数いるため、空港ごとに協議会を設定し、計画策定やフォローアップを確実に行う体制を構築することを推奨している。
4つの空港(成田、中部、関西、伊丹)で、本年12月1日に、空港管理者によって推進計画が策定。他の43の空港では協議会を立ち上げ、推進計画を作る準備をしている。
 空港の脱炭素化のためには、幅広い立場の関係者が協力して取り組む必要がある。これまで一緒に業務を行うことがなかった関係者で情報共有を促進する場としての官民連携プラットフォームの設置をしている。ここでは地方自治体も含めて、300以上の関係者が登録をしており、情報共有の場としてセミナーを過去8回開催している。
 国としても支援をしており、例えば空港管理者が計画策定をするための支援、事業者が色々な取り組みをするための支援、さらに省エネ・再エネシステムを導入する空港事業者への支援など、様々な支援を行っている。
 ベトナム交通運輸省と我々国土交通省との間では、環境に配慮した「エコ・エアポート」について、人材育成を含めて取組みを進めているところ。その他にも騒音対策の技術、空港(滑走路)の舗装技術について今後早々に検討していくこととしている。航空分野での協力によって、両国の関係がさらに強化するよう取り組んでいる。


■質疑応答
Q:日本の地形はベトナムと似ていると考えます。ベトナムでは南北高速鉄道の整備を検討しており、様々な議論がされているところです。日本もベトナムと同様、国土が南北に細長いという特徴を持ちますが、高速鉄道整備の技術面、例えば最高速度や駅の位置にはどのような影響があるのでしょうか。
A(江口理事):東北新幹線の最高時速は320kmであるのに対し、1番最初に整備された東海道新幹線は285kmです。この理由は、東海道新幹線の最小曲線半径が2500mであるためです。他の新幹線の最小曲線半径が4000mに対し、東海道新幹線は曲線がネックとなり速度が出せないという事情があります。多くの都市を結ぼうとすると線形が悪くなり、直線で結ぶとトンネルが多くなります。また、駅の位置については、人口が集中する街での設置を検討しますが、線形の関係で街へ入っていけないところもあります。その場合は「新大阪」や「新横浜」のように街から少し離れたところに駅を設けた事例があります。

Q:昨今の厳しい国際情勢の中、サイバーアタックやテロなどに対して、運輸インフラとしても十分に備える必要があります。日本において港湾運営におけるセキュリティ対策や半導体などの重要物資のサプライチェーンを確保するための取り組みについて教えてください。
A(西村参事官):サイバーテロ、物理的なテロの2つに対応する必要があります。まずサイバーテロにつきましては、日本でも2023年7月、名古屋港(4番目にコンテナ取扱量が多い港)のターミナルオペレーションシステムにサイバーテロがあり、3日間ほどコンテナの搬入・搬出することが出来なくなりました。これを受けまして、国交省としてはターミナルオペレータが使用するシステムと、そのセキュリティ対策を国がチェックできるような仕組みを作っていく予定で検討しています。物理的なテロにつきましては、SOLAS条約に基づき、港湾への制限区域の設置、区域内の監視、ゲートを出入りする人の管理に取り組んでいくことに尽きると考えます。

Q:ベトナムでも、民間資金を空港整備に活用する方針を検討しております。コンセッション方式導入のルールや基準はあるのでしょうか。空港全体を委託するか、空港の特定の施設だけを委託するかといった委託範囲の決め方についてお聞きしたいです。
A(山腰審議官):空港の航空事業の部分とそれ以外の部分(例えばターミナルの店舗や駐車場など)を一体的に、航空系と非航空系の事業を合わせて行うことがコンセッションのポイントとなります。その範囲は、空港によって若干違うこともありますが、現状では、関係者で話し合い問題がなければ合意して民間委託をしています。


■閉会挨拶
グエン・ザイン・フイ ベトナム交通運輸省 副大臣
 本日のセミナーはベトナム交通運輸省と日本の国土交通省が両国の外交関係50周年を記念し、計画した3つのイベントの最初である。今日のセミナーではベトナムの鉄道・港湾・空港に関する2030年までの計画概要について、チュン所長から説明があった。また、上原審議官をはじめとして皆様からは、日本がこれまでの交通インフラ整備に関する貴重な経験、特に鉄道・港湾・空港の3つの分野での取り組みについて共有して頂いた。私も開会挨拶で述べた通り、ベトナム共産党と政府は経済発展において、交通インフラを重要視しており、それは戦略的突破口の3つのうちの1つの柱となっている。先進国を目指す上で、近代的な交通インフラ整備が不可欠である。一方、ベトナムは国際社会の一員としてCOP26で約束した通り、2050年までにネットゼロを達成したいと考えている。その責任を果たすため、交通インフラ整備を促進し、持続可能な交通にすることが必要である。この点を強調したいと思う。

 ベトナムと日本の協力関係には非常に古い歴史がある。我々の先輩にあたるベトナム革命活動家のファンボイチャウ氏も日本に留学して色々なことを学んだ。今の若い世代も特に近代的かつ持続可能な国に発展させるため、日本で学ぶことを志している。本日セミナーで共有していただいた知識、経験は、ベトナムの交通運輸省にとって非常に有益なものである。多くの質問が出たと思うが、それを両国の協力の具体的な形に落とし込んでいただきたいと思う。
 やはり、持続可能な交通インフラ整備においてに最も重要なのは資源である。これには資金的な側面があるが、交通運輸省としては、それよりも人材が重要だと考えている。本日頂いたお話を第一歩として、今後さらに議論を深め、持続可能な交通インフラの整備に向けて、交通運輸省が目指す方向性を検討していきたいと思う。