ユニバーサルデザインとユニバーサルツーリズム~東京パラリンピックのレガシーを活かす~

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第78回運輸政策セミナー(オンライン開催)

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2021/9/15(水)15:00~17:00
開催回 第78回
テーマ ユニバーサルデザインとユニバーサルツーリズム~東京パラリンピックのレガシーを活かす~
講師 1.講  演
「ユニバーサルデザインの意義~東京パラリンピックのレガシーとしてのユニバーサルデザイン~」
 講師:髙橋 儀平  東洋大学名誉教授、東洋大学工業技術研究所 客員研究員
「ユニバーサルツーリズムについて~観光庁の取組み~」
 講師:柿沼 宏明  観光庁観光産業課長
「ハードとソフトが充実したユニバーサルツーリズムの最新事例」
 講師:山崎 まゆみ 温泉エッセイスト、跡見学園女子大学兼任講師、観光庁Visit Japan大使


2.パネルディスカッション及び質疑
コーディネーター:山内 弘隆  一般財団法人運輸総合研究所所長
パネリスト:講演者

開催概要

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、平成 29 年 2 月に「ユニバーサルデザイン 2020行動計画」が策定され、誰もが気兼ねなく参加できる旅行、「ユニバーサルツーリズム」の普及・促進が進められてきた。
 今回のセミナーでは、だれ一人取り残さない共生社会の推進に向けた、実践型ユニバーサルデザインの考え方について、高橋教授からその意義と今後の課題についてご講演いただいた。また、観光庁からユニバーサルツーリズムの政策の意義、またその意義を踏まえ、どう普及促進させていくかについて、そして観光庁 Visit Japan 大使の山崎様より最新事例についてご紹介いただいた。

プログラム

開会挨拶
宿利 正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利 正史
 運輸総合研究所 会長


開会挨拶
講演1
髙橋 儀平<br> 東洋大学名誉教授<br> 東洋大学工業技術研究所 客員研究員

髙橋 儀平
 東洋大学名誉教授
 東洋大学工業技術研究所 客員研究員


講演資料『ユニバーサルデザインの意義

講演者略歴

講演2
柿沼 宏明<br> 観光庁観光産業課長

柿沼 宏明
 観光庁観光産業課長


講演資料『ユニバーサルツーリズムについて~観光庁の取組み~

講演者略歴

講演3
山崎 まゆみ<br> 温泉エッセイスト<br> 跡見学園女子大学兼任講師<br> 観光庁Visit Japan大使

山崎 まゆみ
 温泉エッセイスト
 跡見学園女子大学兼任講師
 観光庁Visit Japan大使


ハードとソフトが充実したユニバーサルツーリズムの最新事例

講演者略歴

パネルディスカッション及び質疑

<コーディネーター>
 山内 弘隆  一般財団法人運輸総合研究所所長
   
<パネリスト>
 髙橋 儀平  東洋大学名誉教授、東洋大学工業技術研究所 客員研究員
 柿沼 宏明  観光庁観光産業課長
 山崎 まゆみ 温泉エッセイスト、跡見学園女子大学兼任講師、観光庁Visit Japan大使
閉会挨拶
佐藤 善信<br> 運輸総合研究所 理事長

佐藤 善信
 運輸総合研究所 理事長


閉会挨拶
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公開期限:11月13日まで

一般向けの公開配信は11月14日~2022年3月15日を予定しております

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当日のプログラム

当日の結果

1.高橋儀平 東洋大学名誉教授、東洋大学工業技術研究所 客員研究員

バリアフリーやユニバーサルデザインを進める理由は、誰もが等しく学び、楽しみ、働けるようにするためである。

バリアフリーやユニバーサルデザインに立ちはだかるものとして以下の5つが挙げられる。物理的バリア(駅や車両へのアクセス、道路の整備)、制度・運用ルールのバリア(障害を理由に普通学校で学べない、資格が取れない、バリアフリー法の適用除外など)、サービス・接遇のバリア(合理的配慮がない、アルバイトや従業員の研修ができてない、ハードが悪くソフト面の負担が重い)、情報のバリア(WEB情報にアクセスできない、手話や文字の提供がない)、人々の意識(障害があるだけで差別や偏見を受ける、事業者や設計者は障害者等がどう移動し、生活したいのかの想像を働かせていない)。

近年のバリアフリーやユニバーサルデザインに関わる主な施策の動きとして、東京2020大会の強い影響が挙げられる。大会施設整備に向けて公表されたTokyoアクセシビリティガイドラインに基づいた整備により国立競技場などのユニバーサルデザイン化が達成できた。

しかし、街の中を見ると、依然として視覚障害者が利用しづらいと思われる点字ブロックの敷設がしばしば見られている。

国立競技場のユニバーサルデザイン化は、設計や施工の段階から高齢者、障害者団体及び子育てグループ等の参画を得てユニバーサルデザイン・ワークショップを開催し関係者の意見を集約しつつ業務を進めることにより実現ができた。

この経験から得られたものを今後どのように活かしていくかが非常に重要な命題であると思う。

ユニバーサルデザイン・バリアフリーの社会を作るうえで小さな時からの教育環境の整備が重要と考えている。インクルーシブ教育の実現に向けて障害者の権利条約やUD2020行動計画を踏まえると、インクルーシブ教育システムの構築、教育現場における合理的配慮の提供、障害のある教職員が働きやすい環境整備が挙げられる。

また、小・中学校の94.9%が避難所に指定されているため、防災機能の強化と共にバリアフリー化を進める必要がある。

まとめとして、ユニバーサルデザインは特別なことではなく日常であり、そのためには長期的な整備計画を立案し優先順位を明確にする必要がある。東京2020大会のレガシーとは「本当に共生社会を作る」強い意志を持つことである。


2.
柿沼宏明 観光庁観光産業課長

観光庁では平成18年から観光立国推進基本法、平成29年には観光立国推進基本計画、令和2年には観光ビジョン実現プログラム2020を実施し、ユニバーサルツーリズムの促進を図っている。

令和2年度のユニバーサルツーリズム促進事業では3つの活動を実施した。1つ目はバリアフリー旅行のための地域におけるサポート体制の強化として、サポート体制が顕著である地域や団体等の運営方法や取り組み事例に関する調査。2つ目はサポート体制の強化に係る実証事業の実施。3つ目はユニバーサルツーリズム促進事業オンラインシンポジウムの開催である。

令和212月にはバリアフリー法の改正に伴い、観光施設における心のバリアフリー認定制度を設けた。認定条件として、バリアフリー施設の充実や社員の教育訓練の実施、バリアフリー情報の積極的発信等があり、それらの基準を全て満たした施設には認定マークを付与している。

心のバリアフリー認定制度の件数増加方策として、申請をサポートする動画を作成し、公表しているところだが、認定件数は現在のところ70件程度のため、実効性のある方策立案が今後の課題となっている


3.山崎まゆみ 温泉エッセイスト、跡見学園女子大学兼任講師、観光庁Visit Japan大使

島根県しんじ湖温泉「なにわ一水」では、従来、客室稼働率61%・客単価16,000円と経営は苦しかった。そこで、バリアフリー化により稼働率・客単価が改善し、同73%・20,000円にアップした。高齢者など一般の方にも使いやすくなり、予約が入るようになったため。さらにプレミアムルームとして改修。1部屋の宿泊者数を増やしたところ同93%・23,000円になり、1か月前には完売する。部屋は様々な工夫がなされており、そのひとつに車椅子の方が利用しやすい半露天風呂が付いている。これはデザイン性が高い設備のため、一般の方にとっても最も人気の高い部屋である。さらに、あいサポーター認定を受けており、従業員の教育も進んでいる。

温泉地での最先事例として、佐賀県嬉野温泉が挙げられる。佐賀・嬉野バリアフリーツアーセンターが、無料で利用者の体の状態に応じて、適切な旅館や立ち寄り場所を案内してくれる。また、ソフトの面では「トラベルヘルパー」も例に挙げたい。普段、高齢の両親が介護施設で生活している場合、いざ旅行に行った際には何が必要か分からないことが多い。その際、トラベルヘルパーを頼めば、希望に応じて介助してくれる。

アメリカのパゴサホットスプリングスを紹介したい。大河の横に23の温泉プールがあり、風を感じられる施設である。ここではアクセシビリティゲート・ルートがあり、予約なしでブザーを鳴らすとスタッフが案内してくれ、温泉プールにはリフト付きの入浴用の椅子が設置されている。それにもかかわらず、実際にはリフト付きの入浴用の椅子が使われている様子は見かけなかった。身体の不自由な方が階段を利用しようとする場合、スタッフではなく利用者が素早く支えてくれるため、リフト付きの入浴用の椅子が必要がないのだ。このように利用者がサポートしあうような、心理的バリアフリーが進んだ社会こそが目指すべき姿ではないか。

4.パネルディスカッション

運輸総合研究所山内所長をコーディネーターとして、ワーケーションを通じた働き方と地域活性化に向けた取組や今後の展開について議論した。主なやり取りは以下のとおり。

<心のバリアフリーとして、一般の人の理解を促進させる対策について>

・明確な答えはまだなく、試行錯誤が必要。

・ホテル、旅館ともバリアフリー客室はまだ1%が数値目標に過ぎない。都市施設や公共交通機関のバリアフリーを引き上げ、出会いを増やす環境整備が必要。

<ソフト面を含めた地域でのサポートが実施されている状況について>

・嬉野温泉はバリアフリーツアーセンターがあり、コーディネーターが配備され、交通も整備されており、地域全体でのサポートが進んでいる大変稀有な例である。しかし、地域全体としては課題がある観光地が多いのが現状。

<性的マイノリティ、ジェンダー平等で考慮すべき事項について>

・沖縄県内の動きが進んでいる。そこから全国に波及していくことを期待している。ただし、施設整備を伴うとなると時間がかかる。共用トイレの整備など、学校の中など公共空間でも共用化ということを考える時に来ている。

<訪日外国人のためのガイドブックやピクトグラムの世界標準について>

・トイレや交通の乗り場など最低限の共通的な部分では、例えばISO基準に合致したものを掲出していくことはある。その一方で、地域の特性を生かし、楽しく豊かなサインやピクトグラムがあっても良いと考えている。

・心のツーリズム。オリンピックでボランティアを通じ、啓発ビデオの中にバリアフリーが取り上げられており、素晴らしかったという意見がある。ハードが進んできたが、心のバリアフリー化は時間がかかるものの、今後最も大事なことと考えている。

本開催概要は主催者の責任でまとめています。



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写真左から、山内弘隆、山崎まゆみ、髙橋儀平、柿沼宏明(敬称略)