インドネシアにおける鉄道整備と沿線開発に関する国際セミナー
- 国際活動
- 鉄道・TOD
主催 | 一般財団法人運輸総合研究所 |
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後援 | 国土交通省 在インドネシア日本大使館 インドネシア運輸省 独立行政法人国際協力機構(JICA) |
日時 | 2020/2/14(金)8:30~11:30 |
会場・開催形式 | プルマン・ジャカルタ・インドネシア(ジャカルタ・インドネシア) |
テーマ・ プログラム |
鉄道整備と沿線開発 |
講師 | 開会挨拶:宿利 正史 運輸総合研究所 会長 来賓挨拶:ヘル・ウィスヌ・ウィビウォ インドネシア運輸省 鉄道総局鉄道インフラ局長 石井 正文 インドネシア駐箚特命全権大使 日笠 弥三郎 国土交通省 大臣官房審議官(鉄道) 基調講演:森地 茂 政策研究大学院大学政策研究センター所長 運輸総合研究所アドバイザー 報 告:「鉄道整備と沿線開発」 武藤 雅威 運輸総合研究所主任研究員 パネルディスカッション: モデレータ:日比野 直彦 政策研究大学院大学 准教授 パネリスト:アリフ・アンワル インドネシア運輸省 研究開発庁企画協力課長 ベルナデッテ・E・S・マヤシャンティ インドネシア運輸省 企画局企画課長 森地 茂 政策研究大学院大学政策研究センター所長 運輸総合研究所アドバイザー スタント・ソエホド インドネシア大学教授 ジャカルタ首都特別州前知事補 閉会挨拶:奥田 哲也 運輸総合研究所 専務理事 |
開催概要
道路混雑や環境汚染などの問題に直面しているASEANの大都市では、鉄道整備が進められており、ジャカルタでも2019年3月に都市高速鉄道南北線が開業し、南北線延伸や東西線についても取り組みが進められています。
持続可能な鉄道整備においては、鉄道整備と沿線開発(TOD)を一体的に考えることが効果的な施策であり、日本はそのような鉄道整備と沿線開発に関する多くの知識・経験を有しているところです。
本セミナーでは、当研究所宿利正史会長の挨拶に続き、ヘル・ウィスヌ・ウィビウォ インドネシア運輸省鉄道総局 鉄道インフラ局長、石井正文 インドネシア駐箚特命全権大使、日笠弥三郎 国土交通省大臣官房審議官(鉄道)に来賓挨拶をいただきました。
前半は、政策研究大学院大学政策研究センターの森地茂所長に基調講演を行っていただき、武藤雅威主任研究員より研究内容について報告をしました。
後半は、アリフ・アンワル インドネシア運輸省研究開発庁企画協力課長、ベルナデッテ・E・S・マヤシャンティ インドネシア運輸省企画局企画課長、スタンド ソエホド インドネシア大学教授・ジャカルタ首都特別州前知事補、森地茂 政策研究大学院大学政策研究センター所長をパネリスト、日比野直彦 政策研究大学院大学准教授をモデレータとして、ジャカルタにおける鉄道整備と沿線開発に関する課題と展望について、パネルディスカッションを行いました。
プログラム
開会挨拶 | |
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来賓挨拶 |
ヘル・ウィスヌ・ウィビウォ 来賓挨拶 |
来賓挨拶 | |
来賓挨拶 | |
基調講演 | |
報告 | |
パネルディスカッション |
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モデレータ |
日比野 直彦 |
パネリスト |
アリフ・アンワル |
パネリスト |
ベルナデッテ・E・S・マヤシャンティ |
パネリスト |
森地 茂 |
パネリスト | |
閉会挨拶 |
当日の結果
森地所長から、アジアの大都市において何故TODが必要なのか、鉄道整備財源に開発利益を取り入れる際の課題、都市鉄道網を密に整備することで駅へのアクセス性を良くすることの重要性、アジアの鉄道プロジェクトにおけるPPP導入の失敗から何を学ぶべきか、について説明いただきました。次に、武藤主任研究員より、日本における鉄道整備と沿線開発連携の好事例、および鉄道整備財源確保に向けた国内外の開発利益還元手法、東京圏における都市鉄道の特徴と機能を紹介し、ジャカルタでの鉄道整備における課題とTODの方向性について、報告しました。
【森地 茂 政策研究大学院大学政策研究センター所長による基調講演のポイント】
・開発利益還元策には、税、債券、負担金、都市再開発スキームなど、様々な種類があるが、TODの履行により、開発利益を増加させる可能性がある。
・ASEAN諸国では、鉄道の沿線開発が限定的であった。
その理由は、TOD制度の脆弱性にある。都市計画システムの改善や、住民とコンセンサスを形成するメカニズムなどの制度改革を提言したい。
【武藤 雅威 運輸総合研究所主任研究員による報告のポイント】
・日本の田園都市線のTODでは、沿線での宅地開発が進み、鉄道旅客が増え、地価も上昇した。
その背景として、日本が高度成長期にあったこと、鉄道会社が統一したコンセプトにより都市開発計画を強力に推進したことが挙げられる。
・受益者負担金や空中権売却などの開発利益還元手法の各事例では、資金的に厳しい鉄道事業の立ち上がり時期に、これらの手法を有効に用いて、資金
調達をしている。
【パネルディスカッションのポイント】
ジャカルタにおける都市鉄道と沿線開発の課題と展望について、議論が行われました。
まず、ベルナデッテ課長から、ジャボタベック首都圏における人口および経済成長の様子、さらに交通問題として自動車の渋滞状況の説明があり、公共交通の容量が十分に賄えていないことが報告されました。アリフ課長から、交通関係の研究開発を職務としていることや、LRTおよびMRTの新設や延伸計画などのジャボタベック首都圏のマスタープラン、土地収用に関する問題について、説明がありました。スタント教授から、当地のモータリゼーションの状況と、鉄道整備の財源問題として、アベラビリティペイメントの仕組みについて、説明がありました。これらを踏まえて、森地所長から、マスタープランを確実に実行することが重要であり、駅前広場と駅へのアクセス道路の整備が鉄道利用を拡げ、社会的便益が増える、との指摘がありました。
続いて、都市鉄道の財源問題や用地取得、TODに関する具体的な課題について、議論をしました。ベルナデッテ課長から、アベラビリティペイメントでは、最終的に国家予算へ負担が跳ね返ってくること、アリフ課長から、土地収用が遅れるとプロジェクト自体が遅れてしまうことなどへの懸念がそれぞれ表明され、また、スタント教授から、TODではデベロッパーだけではなく、住民にも便益が行き渡ることが必要、との指摘がありました。森地所長は、日本における鉄道整備財源調達の方法に触れ、ガソリン税の転用や、容積率の緩和によって民間の都市開発投資を誘発する事例を紹介した上で、法制度の変更など柔軟な考え方を持った方が良いのではないか、とのアドバイスがありました。
また、会場参加者からの質問により、MRT整備による便益や、新首都移転時の交通計画に関する議論が行われました。モデレータの日比野准教授の「このセミナーで多くの課題が出されたが、TODの成功に向けた議論を進めて欲しい」という言葉で、パネルディスカッションを締めくくりました。