ATRS(国際航空輸送学会)2026世界大会への参加報告

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日時 2026/6/30(火) 〜 7/4(土)

開催概要

2026年6月30日~7月4日に、ATRSの第29回世界大会が、中国の北京市北西部の高等教育公園地域のVision Plaza Shahe Bailingにて開催されました(6月30日はオンラインのみ)。当研究所からは、宿利会長、藤崎主席研究員・研究統括、神戸主任研究員及び中村研究員(JITTIからオンライン参加)が参加しました。


《ATRSについて》

 ATRSは、1995年にシドニーで開催された第7回World Conference on Transport Research Society (WCTRS)会議中に、同会議での航空輸送関連セッションの拡大や頻繁なシンポジウム又は会議を通じた研究のアイデアや結果についての意見交換を目的としてWCTRSの特別利益団体として発足しました。ATRS初代会長はTae Hoon Oum氏(WCTRS会長、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学名誉教授)、前会長(議長)はMartin Dresner氏(米国メリーランド大学教授)、会長はAnming Zhang氏(ブリティッシュ・コロンビア大学名誉教授)です。
 第26回世界大会神戸開催を記念して直前の2023年6月に当研究所が主催したセミナー「世界の航空業界における課題と展望」には、3名のATRS歴代会長を登壇者としてお招きした経緯があります。

プログラム

開会挨拶
ATRS A.Zhang会長

ATRS A.Zhang会長

開会挨拶
(ビデオメッセージ)
J.Zhan現地開催委員長<br>(北京理工大学大学評議会議長・教授)

J.Zhan現地開催委員長
(北京理工大学大学評議会議長・教授)

産業基調講演
Zhixiong Zhang<br>(北京民間航空機技術研究センター主任)

Zhixiong Zhang
(北京民間航空機技術研究センター主任)

産業基調講演
Wei Cong<br>(Variflight社最高情報責任者)

Wei Cong
(Variflight社最高情報責任者)

学術基調講演
Hai Yang<br>(香港理工大学土木環境学科教授)

Hai Yang
(香港理工大学土木環境学科教授)

学術基調講演
Mark Hansen<br>(カリフォルニア大学バークレー校教授)

Mark Hansen
(カリフォルニア大学バークレー校教授)

当日の結果

 今次大会の中では、当研究所から2名がそれぞれ研究調査について発表を行いました(各発表の概要は後述)。2026 JTTRI Best Paper Awardについて、受賞者に対する授与を宿利会長が行いました。

 なお、今大会では過去最多の362本の発表予定があり、469名が参加しました。発表トピック分野は、多い順に次のとおりでした。(件数増が顕著な分野は太字):
 都市航空モビリティ(UAM)/航空輸送における持続可能性/空港運営/航空とAI航空の安全とセキュリティ/航空輸送政策と規制/航空事業者の経済とパフォーマンス/航空事業者の戦略と経営/航空交通管制/航空と経済発展/航空輸送需要/空港の戦略と経営/航空ネットワーク開発/空港の経済とパフォーマンス/航空事業者運営/インターモーダル運営とモード間の競争/航空貨物/航空輸送におけるマーケティングと消費者行動/航空輸送事例研究


■2026 JTTRI Best Paper Award賞の授与

 7月3日の受賞式で、当研究所宿利会長から、当研究所の概要を紹介する中で出席者に向けて挨拶を行うとともに、第26回神戸大会のために創設し、第27回リスボン大会、第28回香港大会に続き、今大会でも提供する運輸総合研究所最優秀論文賞(JTTRI Best Paper Award)の今次受賞論文”Artificial Intelligence and Rent Sharing Between Airlines and Workers: Evidence from the U.S. Airline Industry”(ブリティッシュ・コロンビア大学名誉教授のAnming Zhang氏とパドュー大学助教授のFecri Karanki氏の共著)に対し、賞金目録贈呈を伴う表彰を行いました。

 今大会の総会において、第30回は、2027年7月4日~7日にトルコのイスタンブールで開催することが承認された。なお、今大会の終了時に、Dresner議長が退任し、Zhang会長が退任して議長に就任し、新会長にGianmaria Maritini氏(イタリア・ベルガモ大学教授)が就任した。


 [受賞論文の概要]:
本研究は、2000〜2024年の米国航空業界において、人工知能(AI)が労使間のレントシェアリング(利潤分配)に既にどのように影響を与えているかを検証している。2層確率的フロンティア(two-tier stochastic frontier)モデルに埋め込まれたナッシュ利潤分配枠組を用いて、実現可能な賃金指標を推計し、かつ、実際の賃金がそれからどの程度乖離しているかを計測している。分析の結果は、コロナ禍後に賃金が大幅に上昇したものの、労働者による短期的な利潤の獲得割合は2022年以降の市場移行とともに減少していることを示している。特に格安航空会社(LCC)で、AIへの曝露度が高いほど、実現可能な指標に対する賃金不足が大きく、生成AIへの期待が、労働力不足の局面でも航空事業者の交渉力を強めていることが示唆されている。

 [受賞者のコメント]:
共著者であるパデュー大学のフェクリ・カランキ教授と私は、この賞と寛大な資金支援について、JTTRIに心より感謝する。この栄誉は、航空業界におけるAIの影響に関する研究を継続していく上で、大きな励みとなる。本研究へのJTTRIのよる支援、そして航空輸送における技術的な変化がもたらす機会と課題への理解を深める革新的な研究の促進に対し、深く感謝する。



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2026 JTTRI Best Paper Awardの受賞者Anming Zhang氏と共に

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 全参加者に向けて挨拶する宿利会長


〇当研究所からの各発表の状況

■プリコンフェレンス(オンラインペーパーセッションⅠ)「空港の運営と管理」
●発表『米国主要空港における適切なゲート割り当てのあり方について』」(原文は英語)
 中村由季子 研究員

 6月30日のオンラインによるPaper Session「空港の運用と管理」では、ワシントン国際問題研究所(JITTI)の中村研究員が当研究所で実施した個別研究調査「米国主要空港における適切なゲート割り当てのあり方について」(2025年度~)の成果を踏まえ 、米国の大規模空港におけるゲート割り当てに関する規制や特徴、現状のルールの傾向等に関してまとめた調査結果について発表を行いました。米国においては、主に航空会社間の競争環境の確保による消費者利益の促進のため、空港におけるゲート等の施設への航空会社の非差別的なアクセスを担保することが空港に求められていますが、そのような背景の中で、特にゲートの混雑が激しい空港において、各空港の運営主体が、実際にどのようなゲートの割り当てに関するルールを定めているか、その傾向や影響について発表しました。
 出席者からは、ゲート割り当ての見直しの頻度やゲートの種類ごとの割合等ルールの詳細部分について、またゲート使用の料金体系等について質問があり、それぞれ回答を行いました。

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          中村研究員の発表の様子

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          中村研究員の発表スライド

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   セッションチェアからの質問に回答する中村研究員


■メインコンフェレンス(ペーパーセッションⅡ)「航空会社の戦略と経営1」
●発表『持続可能な観光と地域づくりのための航空会社による貢献の可能性』(原文は英語)
 神戸 正憲 主任研究員

 7月2日のPaper Session「航空会社の戦略と経営1」では、神戸主任研究員が、持続可能観光地域経営のために航空会社が送客を超えて貢献できる可能性についての研究調査に基づく成果を発表しました。
 観光需要と人的交流が世界的に回復する状況は、気候変動・地域疲弊・オーバーツーリズムと不可分な関係にあり、特に航空会社はCO2排出、観光集中の助長といった負の面も強く認識されており、国際的にも「送客を超えた役割」が求められています。この研究では、国と国、都市と地方を直接結ぶという航空事業者の特徴に着目し、持続可能観光地域経営に貢献している世界中の6つの航空会社の異なるアプローチ事例について定性的な比較と分析を行い、就航先のDMO制度の有る無しに関わらず、これからの航空会社が持続可能観光地域経営に貢献し得る可能性についての提言を発表しました。
 出席者からは、ユニークな研究テーマに興味が示されるとともに調査の進め方等の質問があり、特に航空会社に対する直接インタビュー調査の重要性について回答を行いました。

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         神戸主任研究員の発表の様子

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        神戸主任研究員の発表スライド

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  質問に回答する神戸主任研究員


■大会会場でのJTTRIの宣伝

 当研究所は、現地開催委員会の支援により会場のレセプション横に設置したデスクを用いて、
航空関係の最近の個別活動の紹介チラシ(QRコードから各内容のサイトに遷移)と最新版のパンフレットの配布を行いました。

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   JTTRIパンフレットの配布

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           大会受付レセプション


■現地見学会

 ATRS最終日の午後、当研究所からは首都機場集団(Capital Airports Holdings Limited: CAH)、の運航監視・情報データセンター(Operation Supervisory and Information Data Center)の現地見学会に参加しました。
CAHは、中国の中央政府機関である民用航空局(Civil Aviation Administration of China: CAAC)の管理下にある国有企業です。国家の航空政策を空港運営、空港支援事業、商業施設、航空エコシステムの4つを軸に展開し、北京首都国際空港などの巨大ハブ空港の運営だけでなく、地方空港の買収・統合やインフラ開発など、広域にわたる空港事業を手がけています。
運航監視・情報データセンターは、CAHグループ全体のスマートクラウドプラットフォームの管理業務、情報システムおよびデータの安全確保業務等を統合管理しており、データ活用(データエンパワーメント)や新技術の導入を推進する「技術リソース・データ共有の中核」として機能しています。

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 首都機場集団有限公司、運航監視・情報データセンターの正面玄関

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       運航監視・情報データセンターの大画面


■現地交通事情

 北京市内地下鉄を乗り継ぎ乗車し、北京駅舎を見学しました。
現北京駅舎は、中華人民共和国建国10周年の記念プロジェクトで1959年に完成しました。

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            北京市鉄道路線網

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            国鉄の北京駅舎

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 クレジットカードタッチ決済改札機

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 北京市地下鉄の利用した各駅では、ホームドアが設置されていた

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地下鉄駅によっては、
プラットフォームの空間は十分に広い