「World Ocean Forum 2025」への参加報告

  • 国際活動
  • 他機関との交流

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2025/10/22(水) 〜 24(金)

開催概要

 2025年10月22日から24日まで、韓国海洋漁業省、釜山市及び日刊釜山ニュースが主催し、韓国海洋産業協会が運営する” World Ocean Forum 2025”が釜山市内のホテルで開催されました。このうち23日に開かれた海洋交通セッション「グローバルな海上輸送ネットワークの確保のための戦略」において、主催者からの招待により、当研究所の藤﨑主席研究員・研究統括及び日本海事センターの中村上席研究員がそれぞれ基調講演及び講演を行うと共に、パネルディスカッションに参加しました。


<World Ocean Forum 2025について>

 World Ocean Forumは、韓国で2007年以来毎年開催されており、今回は第19回目で、「不確実性の波を乗り超えて」を開催テーマとして、海洋産業関係者、政府代表、研究者等が参加しました。個別セッションのテーマは、海洋交通の他に、海洋生物、クルーズ、漁業、ブルーエコノミー、海事金融、造船、国際海洋政策等と多岐にわたっています。当研究所及び日本海事センターは昨年4月に、韓国海洋水産開発院(KMI)と高麗大学海事法研究センター(KUMLC)とMOUを締結して交流を開始しましたが、KUMLC所長のKim教授が今回フォーラムの企画委員長を務め、KMI等が協賛です。

プログラム

開会及び導入[モデレーター]
Kim Gyou-bong<br> HMM海洋サービス有限会社CEO<br>

Kim Gyou-bong
 HMM海洋サービス有限会社CEO

基調講演1
『グローバル海上サプライチェーンにおける安定のための碇としての港』<br><br>Song San-keun<br> プサン港湾公社総裁兼CEO<br>

『グローバル海上サプライチェーンにおける安定のための碇としての港』

Song San-keun
 プサン港湾公社総裁兼CEO

基調講演2
『国際海上輸送の戦略的確保に向けて』<br><br>藤﨑耕一<br> 運輸総合研究所 主席研究員/研究統括

『国際海上輸送の戦略的確保に向けて』

藤﨑耕一
 運輸総合研究所 主席研究員/研究統括

講演1
『安定的海上輸送確保のための海運及び造船産業の振興又は再生のための日本の努力』<br><br>中村秀行<br> 日本海事センター 上席研究員

『安定的海上輸送確保のための海運及び造船産業の振興又は再生のための日本の努力』

中村秀行
 日本海事センター 上席研究員

講演2
『サプライチェーンの混乱と海運企業』<br><br>Han Jong-khil <br> Sungkyul大学教授

『サプライチェーンの混乱と海運企業』

Han Jong-khil
 Sungkyul大学教授

講演3
『IMOのNet Zero Frameworkに対応するための海運企業の戦略』<br><br>Kim Young-sun<br> HMM有限会社研究開発チームリーダー

『IMOのNet Zero Frameworkに対応するための海運企業の戦略』

Kim Young-sun
 HMM有限会社研究開発チームリーダー

講演4
『アメリカのためのSHIPS法の分析を通じた国家的に重要な海洋職員の育成計画』<br><br>Kim Jin-kwon<br> 韓国海洋大学教授

『アメリカのためのSHIPS法の分析を通じた国家的に重要な海洋職員の育成計画』

Kim Jin-kwon
 韓国海洋大学教授

パネルデスカッション

上記登壇者に加え、

Kim Chang-jin
 韓国海運協会東南地域本部長

当日の結果

■当研究所藤﨑主席研究員・研究統括による当該セッション基調講演の概要

 「国際海上輸送ネットワークの戦略的確保に向けて」(原文は英語)と題して、当研究所の共同研究調査「我が国経済を支える国際海上輸送ネットワークの戦略的確保」(2024年度~)に基づき、講演を行いました。我が国の海事産業の概況とシーレーンのリスク例を紹介しつつ、外航海運、造船、物流、港湾、船員、船舶及び船員、外交、防衛及び海上保安の各視点で想定等がされる課題を共有しました。併せて、2024年に米国で当研究所が共催した「経済安全保障のためのシーレーンの安全確保とサプライチェーンの強靭化シンポジウム2924」の議論から関連する内容を抽出して紹介しました。


■日本海事センター中村上席研究員による当該セッション講演の概要

 「安定的海上輸送確保のための海運及び造船産業の振興又は再生のための日本の努力」(原文は英語)と題して、日本における海運業の重要性、海洋基本法などにおける海事産業の位置づけ、海運支援策としてのトン数標準税制、これまでの造船業支援と海事産業強化法、トランプ政権誕生後の海事産業支援の在り方の考察について、話をしました。


■パネルディスカッションの状況

 藤﨑主席研究員に対する「韓国と日本ではリスクが共通すると思われるが、日本が意識するリスクは何か」との質問に対して、同主席研究員から「気候変動、海賊と国際紛争が国際海上輸送ネットワークの自由と安全に不確実性をもたらしている。パンデミックとサイバーセキュリティーの問題も日本は経験した。これらに備えた必要な対策を検討するため、当研究所でこの共同研究調査を実施中である」旨を改めて答えました。また、中村上席研究員に対する「米国の造船関係法に対して、日本はどう対応するのか」との質問に対して、同上席研究員から「現状、日米交渉の情報は外から得ることはできないが、日本の造船業には余力がないし、人材も不足していて、米側から協力要請があっても、政府による大きな支援の約束でもなければ対応は難しい。準備は必要でも、できることはあまりない。」旨を答えました。

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パネルデスカッションの様子