日米国際交流・観光シンポジウム2023
~コロナ後における日米間の交流・観光の再構築・強化~

  • その他シンポジウム等
  • 観光

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

主催 一般財団法人運輸総合研究所 ワシントン国際問題研究所
日時 2023/3/24(金)04:00~07:00 (日本時間)
2023/3/23(木)15:00~18:00(18:00~レセプション)(米国東部時間)
会場・開催形式 米国ワシントンDC(ウィラード・インターコンチネンタル・ホテル)
言語:日英同時通訳
オンラインのライブ配信も併用(Zoomウェビナー)
※全米桜祭り(National Cherry Blossom Festival)の公式行事として開催
テーマ・
プログラム
【プログラム】
1.開会挨拶:宿利 正史 運輸総合研究所/ワシントン国際問題研究所 会長

2.来賓挨拶:冨田 浩司氏 駐米日本国特命全権大使

3.基調講演:昨今の国際情勢の変化と日米関係の重要性
       トーマス・シーファー氏 元駐日米国大使
       白石 隆氏 熊本県立大学理事長 元政策研究大学院大学学長

4.講  演:外交関係から見た国際交流の重要性と今後の観光交流
       ケント・カルダー氏 ジョンズホプキンズ大学 高等国際関係研究大学院(SAIS)
                 ライシャワー東アジア研究センター長
       清野 智氏 日本政府観光局(JNTO)理事長

5.パネルディスカッション:人と人との交流の意義とその強化・再構築に向けて
      
      <パネリスト>
       マーク・キーム氏 米国商務省次官補代理(旅行・観光)
        (代理出席)カート・コトル 連邦商務省国家旅行・観光室上級政策アナリスト
       相 航一氏 在米日本国大使館 公使(総務、広報文化)
       加藤 和世氏 米国法人日本国際交流センター(JCIE USA)エグゼクティブ・ディレクター

      <モデレーター>
       ケント・カルダー氏 ジョンズホプキンズ大学 高等国際関係研究大学院(SAIS) 
                 ライシャワー東アジア研究センター長

開催概要

 日本と米国の関係は、外交・安全保障を筆頭に、ビジネス、学術、文化、教育、観光など、多層的かつ広範にわたる人と人との交流によって支えられてきた。しかしながら、このような人と人とが対面で行う交流は、パンデミックにより大きな制約を受けた。
 この間、ロシアによるウクライナへの武力侵攻が発生し、また、積極的な海洋進出をはじめとした中国による覇権主義的な動きが進み、国際情勢が急激に変化する中で、日米関係を進化・発展させていくことが特に重要な課題となっている。当研究所は、昨年12月に、元米国国務副長官のリチャード・アーミテージ大使、元国家安全保障局長の谷内正太郎氏という日米の外交・安全保障の第一人者を招いて、第1回JTTRIグローバル・セミナー「急激に変化するコロナ後の世界秩序と今後の新たな日米関係」を、日米両国をオンラインで結んで開催した。
 そこで、今回は、このグローバル・セミナーの続編として、コロナ後における、新しい次元の日米関係を構築する観点から、多層的かつ広範にわたる人と人との交流をテーマとして、その意義を見つめ直し、日米間交流をより高い次元に再構築・強化することを目指し、日米関係、国際交流・観光に造詣の深い日米の有識者によるシンポジウムを、米国ワシントンD.C.において、対面にて開催する。



当日のプログラム

プログラム

開会挨拶
宿利 正史 運輸総合研究所/ワシントン国際問題研究所 会長

宿利 正史 運輸総合研究所/ワシントン国際問題研究所 会長

開会挨拶(日本語訳)

講演者略歴

来賓挨拶
冨田 浩司氏 駐米日本国特命全権大使

冨田 浩司氏 駐米日本国特命全権大使

講演者略歴

基調講演

『昨今の国際情勢の変化と日米関係の重要性』

トーマス・シーファー氏 元駐日米国大使


講演者略歴


白石 隆氏 熊本県立大学理事長 元政策研究大学院大学学長


講演者略歴
講  演

『外交関係から見た国際交流の重要性と今後の観光交流』

ケント・カルダー氏 ジョンズホプキンズ大学 高等国際関係研究大学院(SAIS)/ライシャワー東アジア研究センター長


講演者略歴
講演資料


清野 智氏 日本政府観光局(JNTO)理事長


講演者略歴
講演資料
パネルディスカッション

『人と人との交流の意義とその強化・再構築に向けて』

<パネリスト>
マーク・キーム氏 米国商務省次官補代理(旅行・観光)
講演者略歴
(代理出席)カート・コトル 連邦商務省国家旅行・観光室上級政策アナリスト


講演資料



相 航一氏 在米日本国大使館 公使(総務、広報文化)


講演者略歴


加藤 和世氏 米国法人日本国際交流センター(JCIE USA)エグゼクティブ・ディレクター


講演者略歴
講演資料


<モデレーター>
ケント・カルダー氏 ジョンズホプキンズ大学 高等国際関係研究大学院(SAIS)/ライシャワー東アジア研究センター長

当日の結果

1.来賓あいさつ
冨田 浩司氏 駐米日本国特命全権大使
・日米の架け橋となる駐米日本大使として、あらゆる機会に全米の都市や地域を訪れ、一人でも多くの方々と交流してきた。先日はハワイを訪れ、知事やビジネスリーダーの方々と観光産業の意義について話し合った。日本からの観光客は徐々にハワイに戻ってきているが、その数はパンデミックの前の20~25%に過ぎない。実際に旅をし、人と出会い、歴史や文化を直に体験することが重要であり、それが変化をもたらすと信じているので、これからも日米間の国際交流と観光の復興と発展を支援していきたい。
・日本政府は、インバウンドの本格的な回復に向けた観光再始動プロジェクト「Open the Treasure of Japan!」を発表した。このプロジェクトでは、日本の自然や歴史、文化を存分に体験できるよう、官民が一体となって観光の拡大を図っている。また、このプロジェクトは、相互の信頼、理解、そして協力関係を構築することを目的としており、観光は、日米関係をさらに発展させるうえで重要な、人と人とのつながりを培うことにつながる。
・ロシアのウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがし、インド太平洋地域では力による現状変更の一方的な試みが行われている。そして、かつてないほど地政学的緊張が高まっている。戦略的利益を共有し、普遍的な価値を持つ日米同盟は、これらの課題に取り組む世界的な取組みの重要な一部であり、さまざまな分野やチャンネルで日米交流を深めることで、より強固なものにできると信じている。
・その中でも、観光は重要な役割を担っている。本シンポジウムが、観光振興における両国の協力関係を深め、日米のパートナーシップのさらなる発展に寄与することを心から願っている。

2.基調講演
(1)トーマス・シーファー氏 元駐日米国大使
・我々は、ここ百年間に発生した最悪のパンデミックからようやく脱却してきたように思う。パンデミックの間、貧富の格差が加速し、多くの国民、特に地方に住む人々は、デジタル世界へのアクセスが悪く、仕事の機会が減り、そして、仕事のスキルが時代遅れになり、取り残されているというふうに感じた。
・世界中で民主主義が台頭しているように見えたが、パンデミックが起こる頃には、権威主義者たちは民主主義ではもう統治は不可能であると主張し始めた。まるで過激主義、そして、偏向主義、暴力といった別の毒素が政治を感染させているかのようだった。破壊をたくらむフーリガンが平和的な政権交代を阻止するために、連邦議会議事堂を襲撃するのを恐怖の目で見たが、このようなことはアメリカ独立以来初めてのことだった。多くの米国民と世界の市民が落胆した。
・今日、ある朝起きたら仕事がなくなっているのではないか、と心配する人々もいるが、技術の進歩によって、これまでの雇用がなくなるということは、あまり考えられない。テクノロジーによって雇用が失われ続けていることだけではなく、技術革新は誰も想像しなかったような新しい雇用も創出しているからだ。テクノロジーが生み出した新しい仕事や機会を求めて、これまでに農村部の多くの米国民が都市に移住し、その結果、彼らの経済状態が改善されたことからも明らかである。
・プーチンのウクライナ戦争は、習近平氏が台湾に対抗しようと考えていることに一石を投じた。中国がもし侵略を行えば、自由世界からの対応により、中国の長期的な野心に深刻な影響を与える可能性があることは、今や明らかである。
・私たちが直面する経済的課題は、安全保障上の課題と同様に重要だ。炭素ベースのエネルギーからクリーンなエネルギーへと移行するための世界的な努力に参加しなければならない。1カ月ほど前、世界のエネルギーの中心地であるヒューストンに行ったとき、その都市や地域のビジネスリーダーや政治家たちは、エネルギーとして石油やガスだけでなく、風力、太陽光、水素、炭素隔離など、これから起こるかもしれないあらゆるものを視野に入れていた。エネルギーに関する新しいチャンスはすでに広がっており、これまで存在しなかった新しい仕事のチャンスも広がっているのだ。そのような仕事に就くためには、より多くの教育が必要かもしれないが、私たちはそれに対応することができる。教育は、これまでも、そしてこれからも、社会の流動性を高めるための梯子であり、その価値を評価し続けることで、拡大し続けるだろう。
・私たちは今、歴史の転換期を迎えており、多くの場所でやるべきことがあり、私たちにはその機会がある。私たちの未来に、より良い未来が近づいていることを期待したい。

(2)白石 隆氏 熊本県立大学理事長 / 元政策研究大学院大学学長
・2021年の岸田政権成立以来、総理は防衛、防衛産業、新興技術、サイバー、エネルギー、外交などの多岐にわたる分野において非常に重要な意思決定を行なった。
・2021年10月、総理は、国会での演説で、新しい国家安全保障戦略の策定を約束した。2022年12月には自助と共助を強調する安全保障戦略等、防衛3文書が提出され、防衛予算をこれから5年で60%増とすることが決められた。また、日本の安全保障にとって自由で開かれたインド太平洋地域が決定的に重要であること、そのために米国との同盟関係、豪州他との事実上の同盟関係を強化し、この地域の安全保障における米国の継続的なコミットメントが重要であることが確認された。ここでの鍵は、日本が自国を防衛する意思を持って初めて、米国に同盟国としてのコミットメントを期待できるということである。
・経済安全保障においては、21世紀の安全保障と産業の鍵となる新興技術に対する投資、半導体など、日本の経済と安全保障に決定的に重要なサプライチェーンの強靭性と不可欠性をいかに守り、強化するか、これを同盟国、戦略的パートナーと協力して強化していかなければならない。これによってはじめて、他国が希少資源、サプライチェーンの脆弱性を武器として使うことを防ぐことができる。インフラ防衛のためのサイバー・セキュリティ強化、民間企業・大学から知財が摂取されないためのシステム構築も課題である。新興技術投資、サプライチェーンの脆弱性・不可欠性については新しいシンクタンク設立も検討されており、将来、アメリカ等のシンクタンクとの協力も考えていく必要がある。日米民間企業の連携による次世代半導体技術開発、TSMC(台湾積体電路製造)投資などもこの一環として実施されている。
・防衛産業政策では、米国との技術共有、英国・イタリアとの次世代戦闘機共同開発がすでに合意されている。防衛装備移転に関わる協定もEU、ASEAN諸国と締結されている。防衛産業強化は日本の防衛力強化と同義である。同盟国、事実上の同盟国と連携し、戦略的パートナー国を支援し、ロシアのウクライナ侵略のような事態が起こらないよう、国際規範蹂躙、国際法違反事態に対応しなければならない。
・気候変動対策においても、2013年比で二酸化炭素を2030年までに46%削減する目標が設定され、2050年までにカーボンニュートラリティを達成することとされた。これを踏まえ、岸田政権は原子力エネルギー政策を転換した。日本のエネルギー政策は安全(Safety)、環境(Environment)、エネルギー・セキュリティ(Energy security安定供給)、効率性(Efficiency)を4つの柱とするS+3Eを基本としてきた。しかし、エネルギーをめぐる地政学的状況が大きく変化する中、日本のエネルギー政策は S+3E から 2E(エネルギー安全保障+環境)+SE(安全+効率性)に転換している。
・中国の大国・大国主義化と北朝鮮の核・ミサイル実験はすでに重大な安全保障上の脅威となっている。しかし、今回、岸田総理が安全保障ほか、いくつかの分野で大きく政策転換をしたのは、ロシアのウクライナ侵略を受けて、日本の多くの人たちが衝撃を受けたことが大きい。日本はこれからも平和主義も維持する。しかし、この平和主義は確実に安倍元首相が訴えた「積極的平和主義」である。日本は中国と向き合う「前線国家」である。日本は太平洋からインド洋にわたる、この広い地域を「自由で開かれた地域」として守るため、国際的規範を守り、同盟国・事実上の同盟国・パートナー国と連携していく。日米同盟はその礎石である。

3.講演
(1)ケント・カルダー氏 ジョンズホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(SAIS)ライシャワー東アジア研究センター長
・私のメンターである、エドウィン・ライシャワー氏が、日米関係に関して著した有名な本の中で、日本とアメリカは大きな海原を挟んで、向かい合っているということが文字通りにも比喩的にも言われている。日米の関係というのは、形を変えながらもずっと継続してきた。
・ライシャワーもそのように言うだろうが、この関係というものは脆弱な側面もあると認識している。異なる国々の同盟というものは、例えば、経済的な側面もあり外交的な側面もあり、世界のシステムの中に新しい力が台頭してくるとまた関係も変わってくるだろう。しかし、この長年の歴史の間、私たちはこの日米関係というものを保つことができた。ただし、脆弱性があるということを忘れてはいけないということだ。
・文化的な交換の役割について話したい。色々な政権で日本と米国の関係というものは危機を感じながらも、何度も回復してきた。そして、政治的なもの、歴史的に共通する経験、そして、コミュニケーションの欠如ということを考えると、そのように共通の歴史の中でも脆弱性が生まれてしまうということが言える。こうした際に、旅行であったり、スポーツであったりといった文化的な交換とういうのが本当に重要な役割を担うこととなる。
・実際に大使たちと働く中で、直に得た経験としても、やはり文化的な交換というのがどれだけ意味があるかということを学んだ。カルコン(日米文化教育交流会議)の活動は文化的・学術的な交換を日米間で行うもので、在京米国大使館の中の文化担当公使という役職を作ったライシャワーの時代から続いている。
・ライシャワー財団においては、宇宙研究も今後も展開されていく予定である。その際には、日米の協力のもと、研究が進められていく予定だ。これは、ライシャワー・ヘリテージにとって重要な分野である。さらに、多角的な外交ということで、このG7広島において話し合われたイノベーション等をどのように、今後、繋げていくかということも考える必要があるだろう。
・教育分野においても、国際教育、特に重要なこととして、日本の留学生をどのようにもっと米国に呼び込むのかということがある。米国における日本の留学生の数というのは、かつての20年前と比較すると3分の1までに落ち込んでしまっている。
・いくつかの興味深いプロジェクトとしては、「トビタテ!留学JAPAN」というのがあるが、これは助成金を受けた官民のプロジェクトであり、補助金を受けて、日本の若者が海外に留学するというもので、もちろん米国もその対象に入っている。そして、イノベーションプログラム、STEMプログラム、そして、アート・コミッティプログラムというものもある。とても創造性豊かで、興味深く、有望なものだと考えている。「トビタテ!教員プロジェクト」というものもあり、日本から日本語教師などといったような教師を、米国の大学・大学院等に派遣するものだ。また、マンスフィールド財団プログラムというのもある。これは日米関係において、大変うまくいっている取組みであり、現在、まさに、米国に日本からの政府の方が派遣されている。また、JETプログラムもしかりだ。色々な可能性というものがある。
・結論として、ライシャワーの言葉の中で言われている両国の間の大きな海原を、ある意味小さくする、もしくは、その距離を超越するためになすべきこと、これが日米関係の強化だと思っている。やはり、この太平洋を越えた関係といったものは、課題もありつつ、まだ続いていくと考えている。

(2)清野 智氏 日本政府観光局(JNTO)理事長
・パンデミックの影響もあり訪日客は落ち込んだが、今後JNTOでは、ポストコロナを見据え、「サステイナブル・ツーリズム」をベースとし、「アドベンチャートラベル」、「ラグジュアリートラベル」を柱として取組を行っていく。サステイナブル・ツーリズムのゴールとしては、「地域の『環境』を守る・育む」、「地域の『文化』を守る・育む」、「地域の『経済』を守る・育む」を掲げている。アドベンチャートラベルは「アクティビティ」、「自然」、「文化体験」のうち、最低2つを含む旅行のことを指しており、今年9月にはATWS(Adventure Travel World Summit)といわれる世界大会が北海道で開催され、世界各国から多くの関係者が参加される予定である。また、ラグジュアリートラベルは、地域の伝統文化や世界的に有名な建築、また自然に触れていただくことで自らの知識を深めたり、インスピレーションを得られることを重視するものである。
・パンデミック前において、訪日客の約5割~6割が、東京~京都~大阪といったいわゆるゴールデンルートに集中していたが、それ以外にもぜひ米国の方々に見ていただきたいもの、体験していただきたいものがあるので紹介したい。
・日本各地には、世界遺産にも指定されている姫路城のほか、建設されてから数百年を超える城が大切に保存され、今も数多く残されている。また、温泉も多く存在しており、なかには、猿が温泉につかることで有名な観光スポットもある。その他にもお寺、遺跡、地域の自然・文化を活かしたアクティビティも存在している。
・日本の桜についても紹介する。現在東京でも桜は満開となっているが、日本では桜前線といって長きにわたって桜を楽しむことができる。また、秋には紅葉もあり、10月から12月にかけて各地で見ることができる。
・豊かな自然に恵まれた日本では、各地域に根差した食文化が発達しており、懐石料理や寿司といった伝統的なものはもちろん、最近では回転寿司やラーメンなどリーズナブルに楽しめる日本食も人気である。
・アドベンチャートラベルのコンテンツとしては、巡礼の道、しまなみ海道でのサイクリング、富士山をバックにしたパラグライディングやラフティングがある。また、秋から冬には、トレッキング、かまくらでのレストラン等、日本ならではの体験が数多くある。
・ラグジュアリートラベルについては、愛媛県の大洲城に一泊できる等、日本の伝統的なお城やお寺に宿泊できるプログラムがあり、今後も拡大する予定である。
・1952年の事務所開設以降、米国の方々へ日本の多様な魅力を発信し、また我々日本人も同様に、米国の魅力を知り、多くの日本人が米国を訪れている。昨年は岸田総理がニューヨークを訪れ、日本の食文化をアピールしたが、今後も米国は常に最も重要なパートナーの一つと捉えている。


4.パネルディスカッション 『人と人との交流の意義とその強化・再構築に向けて』
(1)相 航一氏 在米日本国大使館 公使(総務、広報文化)
・日本の若者の海外留学を支援する取組みとして、「トビタテ!留学JAPAN」プログラムがあるが、今後の展望として、さらに情報発信の充実化を図るべきだと考える。特に、日本に比べて米国の大学の学費は高額であるため、学費・奨学金に関する情報を増やすべきである。
・文化的な課題について、海外との文化交流は国際関係の中心にあり、ただ単に行えばよいというものではないと考える。政治、経済といったシリアスな面と同様に、文化交流も中核を担っている。
・日米間の人的交流を重要視している理由について、観光業が国・地域にとって経済効果をもたらすことは自明であるが、それ以上に人との繋がりをとおしてお互いの国の文化の理解が深まり、友情が築けると考える。これはどんな国との間でもいえることだが、特に日米関係において重要だと思われる。
・パンデミック中はオンラインで仕事を行い、ZOOM上で交渉も行ったが、これは、パンデミック前に人間関係を築いていたからこそできたことである。パンデミックをとおして、直接人と会うことの重要性を実感した。外交は一貫した形でコンスタントに仕事に取り組んでいくことが大切であり、人と人とのやりとりが究極的にいうと外交的な取組みの中心なる。そのなかで、文化的な交流はどんな国際関係においても重要であり、信頼関係を築くうえで必須である。
・大使館では様々なプログラムを実施し、米国に対して日本の文化を伝えているが、やはり多くの人が日本を訪れてほしいという思いが中心にある。漫画やアニメといったポップカルチャーは若年層が日本に関心をもつ良い機会であり、さらにそこから日本語を学びたいという気持ちに繋がっていく。また、生け花やお茶、歌舞伎等日本の伝統文化に興味を持ちだすと、日本に訪れたくなる傾向があるので、そこを意識したアプローチもとっている。
・魅力的なコンテンツを紹介するうえでは、キュレーターのような専門家が橋渡し役を担うことも重要である。これは学会でも同じであるが、社会科学、ポリティカルサイエンス等の学問において、まだまだ日本の研究者が少ないと思われる。
・日本への訪問者を増やし、また米国への留学生を増やすためには、まだまだ実施すべきことが多い。日米のステークホルダーとの意見交換をとおしながら、日米関係を戦略的に強化していくことが必要である。

(2)マーク・キーム氏 米国商務省次官補代理(旅行・観光)
(代理出席)カート・コトル 連邦商務省国家旅行・観光室上級政策アナリスト
・2022年6月、米国連邦商務省が「全国旅行・観光戦略2022(National Travel Tourism Strategy2022)」を発表した。旅行・観光業界がパンデミックで最も打撃を受けたことから国家的な戦略が必要と考えられたためである。
・当戦略には4つの柱があり、米国を旅行地として世界中に知らしめていくための内容が記載されている。1点目の柱は「旅行先としての米国を宣伝する」という点であるが、米国の旅行施策をどうしたら能率化できるのか、誰を対象に訴求していくのか検討する必要がある。2028年には米国でオリンピックが開催される予定であるため、そこを目指して注力していきたい。2点目の「米国への旅行及び米国内の旅行を円滑化する」は主に技術的な内容が中心で、米国への入国と米国内の移動をより安全で効率的にすることを目標としている。3点目は、「多様で包括的でアクセシブルな観光体験を確保する」ことである。多様性や包括性については商務省だけでなく政権全体の目標にも含まれており、こちらにおいても様々なパートナーと連携して実現していきたいと思う。また、パンデミックで打撃を受けた地域にも公平に観光客が辿り着くようにスチュアードシップや自然保護についても力を入れていく必要がある。最後の4点目は「弾力的で持続可能な旅行と観光を促進する」ということであるが、レジリエンスとサステナビリティがキーワードである。それぞれのコミュニティが防災や災害発生後の対応について考えなければならない。また、エコツーリズムについても検討する必要がある。
・政府全体(Whole-of-government)でこれらの課題にアプローチしていくことが重要で、114件あるアクションプランのうち1年目から69件のものに着手していく予定である。残念ながら、日米間において観光客数は減少しているが、お互い対話を続けていくことが重要であり、特に旅行・観光に関するチーム同士がパートナーとして連携していく必要がある。

(3)加藤 和世氏 米国法人日本国際交流センター(JCIE USA)エグゼクティブ・ディレクター
・JCIE USAは非政府団体として、日米関係の強化や共通の課題解決に向けてコラボレーションを実施しており、2023年以降においても、どのようにすれば日米関係が将来にわたり強固なものになるか考える必要がある。
・JCIE USAが推進しているプログラムは主に2点あり、1つ目は「将来的なアメリカのリーダー・専門家達の対日理解の深化」を目的とした米議会スタッフ交流である。超党派の議員スタッフが日本へ行き日米関係を学んでいくものであり、既に210名以上の卒業生がいる。
・2点目は「共通課題に対する日米協力の推進」である。具体的には、「グローバルヘルスと人間の安全保障」、「健康でアクティブな高齢化」、「日米女性リーダーシップ」、「普遍的価値の擁護・推進」といった4つの課題において何年にもわたり取り組んでいる。特にグローバルヘルスにおいてはパンデミックを契機に大変重要な課題となり、岸田政権によってタスクフォースも設けられている。また、Hiroshima G7 Global Health Task Forceをとおして、ジェンダーの平等に関する共同声明もだしている。
・JCIE USAのアプローチとしては、今後も、非政府団体として、「長期的な投資を長期的な視野をもって実施すること」、「自由で包括的なかたちでコラボレーションを高めていくこと」、「多様な専門性と支持を求めていくこと」が中心となる。