シンポジウム 東京圏の鉄道の課題と展望~鉄道6社との共同研究・中間報告~

  • その他シンポジウム等
  • 鉄道・TOD

主 催:一般財団法人運輸総合研究所
後 援:国土交通省


Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2022/11/4(金)13:30~17:30
会場・開催形式 ベルサール御成門タワー3階 (及びオンライン開催(Zoomウェビナー))
テーマ・
プログラム
基調講演:
「コロナ禍の影響も踏まえた今後の都市鉄道のあり方」
森地 茂 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授

研究成果報告:
(1)高齢者の就業構造の変化が鉄道需要に及ぼした影響
 嶋田 優樹 一般財団法人運輸総合研究所 研究員
(2)コロナ禍においてテレワークが鉄道需要に及ぼした影響
 塚本 光啓 一般財団法人運輸総合研究所 研究員
(3)沿線における居住地選択要因と魅力向上方策
 室井 寿明  一般財団法人運輸総合研究所 研究員

パネル・ディスカッション:
コーディネータ:森地 茂  政策研究大学院大学 客員教授、名誉教授
パネリスト:
渡利 千春 東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役グループ経営戦略本部長
城石 文明 東急電鉄株式会社 取締役副会長 副会長執行役員
野焼 計史 東京地下鉄株式会社 専務取締役鉄道本部長
藤井 高明 西武鉄道株式会社 取締役常務執行役員鉄道本部長
立山 昭憲 小田急電鉄株式会社 取締役常務執行役員交通サービス事業本部長
鈴木 孝郎 東武鉄道株式会社 取締役常務執行役員鉄道事業本部長

開催概要

 少子・高齢化の進展、利用者ニーズの多様化、高齢者・女性就労の進展に加え、コロナ後の行動変容といった社会情勢の変化を踏まえ、いかにして沿線魅力の向上を図り、また、運賃設定も含め、どのような鉄道サービスの向上に向けた戦略を展開していくべきか。今後の東京圏における持続可能な鉄道運営のあり方を考える。

プログラム

開会挨拶
宿利正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利正史
 運輸総合研究所 会長

開会挨拶
来賓挨拶
藤井直樹<br> 国土交通省国土交通事務次官

藤井直樹
 国土交通省国土交通事務次官

来賓挨拶
基調講演
森地 茂<br> 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授

森地 茂
 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授

コロナ禍の影響も踏まえた今後の都市鉄道のあり方
研究成果報告(1)
嶋田 優樹<br> 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

嶋田 優樹
 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

高齢者の就業構造の変化が鉄道需要に及ぼした影響
研究成果報告(2)
塚本 光啓<br> 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

塚本 光啓
 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

コロナ禍においてテレワークが鉄道需要に及ぼした影響
研究成果報告(3)
室井 寿明<br> 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

室井 寿明
 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

沿線における居住地選択要因と魅力向上方策
パネル・ディスカッション

<コーディネータ>
 森地 茂  政策研究大学院大学 客員教授、名誉教授
 


<パネリスト>
 渡利 千春  東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役グループ経営戦略本部長
  
 
 城石 文明  東急電鉄株式会社 取締役副会長 副会長執行役員
 

 野焼 計史  東京地下鉄株式会社 専務取締役鉄道本部長
 

 藤井 高明  西武鉄道株式会社 取締役常務執行役員鉄道本部長
 

 立山 昭憲  小田急電鉄株式会社 取締役常務執行役員交通サービス事業本部長
 

 鈴木 孝郎  東武鉄道株式会社 取締役常務執行役員鉄道事業本部長
 
閉会挨拶
佐藤善信<br> 運輸総合研究所 理事長

佐藤善信
 運輸総合研究所 理事長

閉会挨拶

当日の結果

■基調講演 「コロナ禍の影響も踏まえた今後の都市鉄道のあり方」

森地 茂 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授

今後の東京圏を支える鉄道のあり方に関する調査研究は、鉄道6社との共同研究であり、概ね30年後を見据えた東京圏の将来像、東京圏の都市鉄道の課題と解決に向けた方策、アジアの大都市における日本の鉄道事業者の貢献のあり方の検討が目的である。現在は、人口動向と鉄道需要に及ぼす影響の分析、地域の持続的成長に関する検討、社会動向(イノベーション等)が鉄道需要に及ぼす影響分析、コロナ禍の影響分析、海外の鉄道事業展開に関する検討に取組んでいる。

社会保障・人口問題研究所の東京圏の人口予測は常に過少評価であり、東京の人口増加はまだまだ続くと思われる。また、一極集中は若年層によるものである。また、経済予測もデフレ30年間のデータを用いているため、永久に不況を再現することとなる。悲観的情報から脱却し、未来に向けた経営方針を取るべきである。

コロナ禍の影響については、コロナ前は、全国の地下鉄や大都市の都市鉄道は黒字であり、コロナ禍による利用者減は85%~95%まで回復する見込みで、その後の経済成長で増加すると考えられる。また、近年の鉄道需要は女性客が支えていて、就業率、正社員率ともに若い世代ほど高いことから、20代の女性が30年代になると今の30代より多く通勤するなどそれぞれの年代の女性利用者は増えるので、女性の鉄道利用は増え続けると考えられる。一方で、沿線の高齢化に対して、若い世代の居住者増のための鉄道会社による再開発や沿線事業展開による魅力増進が必要である。そのためには、鉄道会社の健全な経営の維持が重要で、需要減に合わせた運賃改定で、沿線開発の資金力を確保することが重要である。

 

未来へ向けては、在宅勤務や週34日出勤者の増加、女性、高齢者の鉄道利用に加え、共稼ぎ家庭増加等による短距離通勤への志向や、着席車両等の快適な通勤への志向など、価値観の変容への対応が重要である。また、駅空間デザインの変革も重要な視点で、例えば、ラッチを無くした駅構造なども実現すると思われる。その結果、高架下も駅と一体化し、空間利用の可能性も増すはずである。人口減少による人材不足への対応のため、鉄道の無人運転化やITAIの活用も重要である。

今の鉄道会社は、かつての関連事業が本業となり、総合地域活性化会社に変身していると言える。沿線の活性化は行政よりも鉄道会社に可能性があり、その方が国全体として効率的と言える。そのためには、鉄道会社が収益力を維持することが極めて重要である。かつての経済界のリーダーは電力、鉄鋼だったが、今は、鉄道会社に産業界のリーダーとして、地域活性化への貢献を期待したい。

■(1)高齢者の就業構造の変化が鉄道需要に及ぼした影響

発表者:嶋田 優樹 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

高齢化の進展を背景に、高齢者雇用安定法の改正等による高齢者の就業支援が行われ、60歳前後から人々の働き方は近年大きく変化している。このような状況を踏まえ、高齢者の就業や移動の実態を把握することは、今後の鉄道経営を考える上で非常に重要である。

本研究では東京圏の高齢者を対象に雇用形態、通勤先等の変化を把握し、高齢者の鉄道通勤利用の実態を分析した。

近年、東京圏において高齢者の就業率は上昇しており、雇用形態については、6064歳男性は契約社員、正規雇用の割合が維持されていたが、65歳以上ではパート、アルバイト等の非正規雇用の割合が増えていた。鉄道利用の通勤先について、男性について65歳を超えると居住地域内通勤が増加する傾向がみられた。鉄道通勤トリップについて、2008年から2018年にかけて高齢者層で増加していることが確認でき、高齢者就業支援の影響が鉄道利用にも表れていた。

今後も高齢者の就業増加が予想される中、鉄道通勤が足かせとなり就業をあきらめることのないよう、バリアフリールートの拡充や都心部まで行かずとも沿線内で働き場所を創出するなど、高齢者が生き生きと働けるような環境づくりについて考えることが重要である。

■(2)コロナ禍においてテレワークが鉄道需要に及ぼした影響

発表者:塚本 光啓 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

新型コロナウィルスの流行を契機として、テレワークやオンライン会議の急速な進展といった働き方の変化等様々な行動変容が発生した。こうした行動変容は、コロナ終息後も一定程度定着すると想定されている。行動変容が鉄道需要に与えた影響を把握し、将来の予測を行うことは今後の鉄道経営を考える上で非常に重要である。

本研究ではコロナ禍において鉄道需要に大きな影響を与えたと思われるテレワーク率に着目し、国勢調査や既存のアンケート調査結果を用いて、駅別の1日あたりのテレワーク利用者数を算出するためのモデリングを行った。

さらに、モデリングによる試算結果と、通勤時間帯における実際の鉄道利用者数との比較を行い、駅勢圏の就業者におけるテレワークの実施状況が、駅の乗降人員に影響を与えることを明らかにした。また、駅や地域毎に試算を行うことで地域や路線の業種別人口構成により需要減少に差があることも判明した。モデリングによる将来予測ではテレワークの定着率により3つのシナリオを設定し、駅ごとの推計を行った。

駅や地域による特徴を明らかにした本研究結果は、通勤時間帯の鉄道利用減少に対して、様々な施策の検討を行うにあたり有益である。

■(3)沿線における居住地選択要因と魅力向上方策

発表者:室井 寿明 一般財団法人運輸総合研究所 研究員

我が国は人口減少下にあるが、東京圏は今後もしばらく人口が増加すると考えられる。一方、鉄道の沿線や地域により一様に人口が増加しているわけではなく、鉄道沿線間で競争関係にある。人口移動量は国勢調査等で把握できるが、居住者が何故その沿線を選択したのかという要因は統計からは把握できず、沿線の定住人口増加に向けた魅力向上を考えるためには要因分析が必要である。

本テーマでは、東京圏で実際に転居を行った世帯を対象にアンケート調査を実施し、世帯属性、鉄道事業者別、転居のきっかけごとに特徴を分析し、また居住時選択モデルを構築し選択要因の差を定量的に把握・分析した。

その結果、進学・就職をきっかけとする転居は単身・若い世代が中心で、転居に伴って沿線を変えた世帯は8割を超え、遠く離れる転居を厭わず、鉄道サービスを相対的により重視することが分かった。一方、子育てをきっかけとする転居は家族・ミドル世代が中心で、転居に伴って沿線を変える人は約半数にとどまり、比較的近い距離の転居が多く、相対的に教育・沿線まちづくりを重視することが分かった。

鉄道経営という観点からは、鉄道サービスと沿線まちづくりの両輪をバランス良く取り組むことが重要であるといえる。

■パネルディスカッション

コーディネーター:森地 茂 政策研究大学院大学 客員教授 名誉教授

パネリスト:

渡利 千春 東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役グループ経営戦略本部長

城石 文明 東急電鉄株式会社 代表取締役副会長 副会長執行役員

野焼 計史 東京地下鉄株式会社 専務取締役鉄道本部長

藤井 高明 西武鉄道株式会社 取締役常務執行役員鉄道本部長

立山 昭憲 小田急電鉄株式会社 取締役常務執行役員交通サービス事業本部長

鈴木 孝郎 東武鉄道株式会社 取締役常務執行役員鉄道事業本部長

○論点①人口動向や社会情勢変化を踏まえた利用者ニーズ・行動変容について

【渡利様(JR東日本)】

2018年に策定したグループ経営ビジョン「変革2027」では、人口減少やテレワーク進展は考慮していたものの、コロナ禍で環境の変化は加速した。これに対応する取組をスピードアップさせることが大切である。加速した働き方や価値観の変化への対応として、子育て支援、バリアフリーや案内サインの改善、また、コロナで一時的に減少したものの、外国人旅行客も増加傾向であるので多言語放送等の取組を実施している。

【城石様(東急)】

東急沿線はまだ人口が延びるという予測に基づき、混雑緩和対策を進めてきたが、コロナにより状況が一変した。混雑率も下がり、運輸収入もまだコロナ前に戻り切っていない。しかしテレワークが定着しつつも対面交流のニーズの高まり、インバウンド規制緩和等で人々の動きが活発化し、賑わいを取り戻すのではないかと期待している。

【野焼様(東京メトロ)】

コロナ禍における行動変容により、リモートワーク・オンライン会議が浸透し、都心に流入する通勤需要が減少しており、感染収束後もこの傾向は一定程度定着していくと考えている。本年度に入り足元の減少幅は縮小し一部回復傾向が続いており、今後は入国規制緩和によるインバウンドの増加の影響、定期から定期外への転移も含めて定期外利用者は戻ってくると想定している。

【藤井様(西武)】

コロナ下の混雑していない電車に慣れたというお客様からの声があり、より快適性を追求していく必要がある。有料着座の施策については今後核となるので力を入れていく。またオフピーク通勤等に対して乗車ポイントサービスについても取り組みを始めた。お客さまのニーズを見極めながらより良いサービスの提供に努めていきたい。

【立山様(小田急)】

乗降人員について、全体は回復傾向である。個別の駅や地域でみると回復度合いに差があることから、テレワーク等の行動変容の影響を受けていると思われる。特急については、観光需要をうけ日中でも満席の車両が土休日に出始めている。MaaSを活用したデジタルフリーパス販売等ニーズをとらえた施策を引き続き実施していく。

【鈴木様(東武)】

定期内では通学は回復傾向だが、通勤は一定の減少が継続傾向である。定期外は日光鬼怒川方面が感染拡大の状況に応じて利用が増減している。群馬県、栃木県は車社会であることかららコロナの影響による減少幅が大きい。群馬方面のビジネス特急りょうもう号もコロナ前には戻り切れていない。東上線のTJライナーは遅い時間帯ほど戻り切れていない状況である。

論点運賃を含む鉄道サービス向上の考え方や戦略について

【渡利様(JR東日本)】

安全確保が大事で、それを前提に、輸送改善事業、輸送安定性の向上、ICTの活用、チケットレス化の推進、オープンイノベーションによる技術革新等を進めている。これらの取組には多くの投資が必要で、これまでは鉄道利用収入に裏打ちされていたが、立ち止まってこれからの持続可能性を考える必要がある。運賃を含む鉄道サービス向上の取組みとしてオフピーク定期券やバリアフリー料金制度の活用も準備している。

【城石様(東急)】

コスト削減に取り組む中でも、安全、安心、環境面に必要な投資を継続して行うべきという考えのもと、運賃改定に取り組んだ。使用頻度を上げるべく、企画券等で需要喚起にも取り組みたい。また利用者ニーズに合わせた柔軟な運賃設定を行うため、PASMOのシステム改修が素早く行えるようにする必要があり、鉄道会社も協力していきたい。

【野焼様(東京メトロ)】

旅客運輸収入がコロナ前に戻らない前提で、求められる輸送サービスの変化を的確にとらえ、設備・業務のスリム化を図るとともに、安全の確保を前提に新技術やDXを活用したコスト構造改革を推進していく。また、収益拡大策として、新たなお出かけ需要の創出等による鉄道事業の進化を図ることで、企業価値の向上に努めていく。

【藤井様(西武)】

各社同様、安全・安心を最優先するスタンス。バリアフリー料金制度を活用し、お客様に安心してお出かけいただけるよう設備を充実させていく。鉄道は息の長い取り組みが多く、単独の鉄道会社でできることも限界がある。鉄道事業者間での連携が必要と考え、JR東日本と技術に関する協定を結んだ。垣根を取り払って取り組んでいく。

【立山様(小田急)】

少子高齢化等の社会課題に対し、子育て応援ポリシーを設定した。一環として、小児IC運賃50円化を実施。交流・定住人口増に繋げていきたい。運賃については、バリアフリー料金制度を活用し、ホームドア等を整備していく。通勤時の特急運行は維持向上させていく。さらに、チケットレスを目指す等、環境面での取り組みも推進していく。

【鈴木様(東武)】

原材料や電気代の高騰や災害などに対応した積立金のような制度等、鉄道各社と協力しながら検討していきたい。昨年から、回数券に代わる新たなポイント付与サービス「リピートマイル」を導入した。駅のバリアフリー化は来年3月から国の制度を活用して整備を拡大、加速化していく。また、スペーシアXは現行のスペーシアに比べ電力使用量を約40%削減できる。日光MaaSではモバイルによる機能拡充を検討中である。

○論点③沿線の魅力向上や駅周辺開発に関わる戦略について

【渡利様(JR東日本)】

まず、駅に便利な機能を持ってきて街の魅力を高める。次に沿線そのもの、そして品川のように、街そのものを作ることもある。また、「Beyond Stations構想」として、駅を「交通の拠点」から、お客様や沿線の皆様のくらしと“つながる”「暮らしのプラットフォーム」へ転換することを目指している。他者との連携や人を大切にすることが街を元気にするために必要だと思って取り組んでいる。

【城石様(東急)】

路線ネットワーク、有料着席サービスの拡充など、輸送サービスの高度化を実現する。高架下や駅構内の有効活用にも取り組む。また都心と郊外の移動だけではなく、自律分散型都市構造として中間拠点となる駅について、住むだけではなく、遊ぶ、学ぶ、働くの機能を付加し、鉄道と組み合わせ地域をさらに活性化させたい。

【野焼様(東京メトロ)】

虎ノ門ヒルズ駅整備による交通結節機能の強化のほか、駅と周辺のまちを使いやすくするようサンクンガーデンなどを備えたゆとりある駅前空間を創出する「駅・まち連携」については、従前より行ってきたが、引き続き取り組んでいきたい。また、有楽町線延伸(豊洲~住吉間)及び南北線延伸(品川~白金高輪間)の新線建設を進めていく。

【藤井様(西武)】

おでかけ需要の喚起のため様々な施策を検討している。先日所沢駅西口の車両工場の跡地再開発に着工した。「ベッドタウンからリビングタウンへ進化させる」をコンセプトにしている。としまえんも閉園し、跡地にはハリーポッターの施設を設ける。池袋駅のリニューアルもあわせて行う。沿線開発は持続可能・サステナブルという観点が重要。沿線の資源を最大限活用して、地域と協働で取り組んでいく。

【立山様(小田急)】

小田急電鉄は地域価値創造型企業を目指す。新宿西口地区の再開発について、本格的な工事に着手した。西口駅前広場についても関係者と連携しながら推進する。沿線では、域内流動増加等を目指し、下北沢・海老名・町田・藤沢等の拠点駅の整備を進めていく。また、「EMot」を活用して、2次交通の高度化にも取り組んでいく。

【鈴木様(東武)】

連続立体交差事業による駅周辺の回遊性向上を目指し、とうきょうスカイツリー・竹ノ塚・春日部・清水公園で工事を施工している。南栗橋や獨協大学前では、まちづくりの推進を図るモデルケース作りを進めている。また、東松山市の直売所の野菜を東上線で輸送し、池袋駅構内で販売する取組みを実施中である。さらに、SLを運行している鬼怒川線の駅においては駅舎や設備をレトロ調に改修する取組みを行っている。

○論点④総括(議論を踏まえ、伝えたいこと等)

【渡利様(JR東日本)】

東京は魅力もあるし、人口増もあるので、東京の魅力を見据えて積極的に成長投資を行う。その中で様々な事業や沿線の価値向上に取り組む。また、例えば東京の素晴らしい所としてマナーの良さがある。JR東日本では声掛けサポート運動等を実施しているが、いろんな人が利用しやすい和やかな空気のある空間作りが実は大切なのではないかと思う。

【城石様(東急)】

来年3月に相鉄・東急直通線が開業予定であり、新空港線についても、事業主体となる第3セクターを立ち上げた。新幹線、空港へのアクセスを向上させ、鉄道利用をさらに活性化させたい。環境面でも東急線は再生可能エネルギー100%で運行している。鉄道事業は斜陽産業ではなく、成長産業として認識しており、今後も新たな取り組みを着実に実施していきたい。

【野焼様(東京メトロ)】

今後はコスト削減がキーワードとなる。省力化に向けた新技術の取り組みとしてCBMCBTC、長期的には自動運転の実現などがある。その際には、個別の努力だけでなく、鉄道事業社間での情報の共有や、部品の共通化、施設の仕様の統一などといった各社間で協調した取組みが必要不可欠であるため、是非とも各社様にもお願い申し上げたい。

【藤井様(西武)】

鉄道事業は日々何が起きるかわからない。昨今の動力費の問題は喫緊の課題として突き付けられている。こういった課題を解決していくには、鉄道事業の構造を抜本的に変えていく必要がある。これまで鉄道事業者単独でできることは、し尽くしてきたと考えている。今後は業界で団結し、取り組んでいく必要がある。

【立山様(小田急)】

鉄道は様々な面で、優れた輸送機関である。一方で、固定費が大きく、組織が多岐にわたる等により変化に時間かかり、環境順応に遅れる恐れがある。計画的に様々な事項を予定しておくことが必要。今後は、輸送サービスの魅力を上げ、様々なモードとの連携や競争を通し、サービスの選択肢を増やす。このようなことが大事だと思う。

【鈴木様(東武)】

コロナ禍になり3年ほど経つが、最初の1年は非常に苦しく費用の削減等が急務であり、運賃改定や閑散線区の話などができない状況であった。しかし、最近はそれらの検討や議論ができる環境へ変化しているように感じている。また、今後鉄道各社とは可能な部分は同じ設計や部品、制度を協業するなどの協力体制をとっていきたい。

○ディスカッションのまとめ

【森地先生】

各社が様々な工夫をし、様々な戦略を考えて取組み、都市の活力になっている。考えておくべきことの一つに防災。首都直下、水害時の対応など共同で考えることが必要だ。また、EV化に伴う世界のガソリン税の議論の基本的方向性はロードプライシングで、一般道での料金徴収の方向と思われる。わが国でも、今後、交通の負担、鉄道の負担のあり方は間違いなく議論になる。その際、防災も考えれば鉄道の健全な収益力が必要である。

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