米国における無人航空機政策の最新動向2022
~目視外飛行における安全性の確保及び有人機との空域の共有に向けた取組み~

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第152回運輸政策コロキウム ~ワシントンレポートⅩⅤⅠ~

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2022/10/11(火)10:00~12:00
会場・開催形式 オンライン開催(Zoomウェビナー)
テーマ・
プログラム
講演およびコメント
 講  師:藤巻 吉博 ワシントン国際問題研究所 主任研究員
 コメンテーター:鈴木 真二 東京大学未来ビジョン研究センター 特任教授

質疑応答
 コーディネーター:山内 弘隆 一般財団法人運輸総合研究所 所長

開催概要

 米国では、小型の無人航空機の利用について、無人航空機が一定の性能基準を満たす場合は運航毎の安全性を評価する個別の手続無しにその運航を認める制度改正が進められている。
2021年9月21日の第143回運輸政策コロキウムにおいては、当時の米国における無人航空機政策の最新状況として、夜間の運航及び第三者の上空の運航(操縦者及び補助者以外の上空における運航)に関する制度改正の内容を報告した。また、目視外の運航の制度改正に向けて有識者委員会が設置されたことをワシントン国際問題研究所の藤巻主任研究員から報告した。
 今回の第152回運輸政策コロキウムにおいては、第143回の続編として、2022年3月に公表された、目視外の運航(目視による機体の監視が可能な範囲よりも遠い距離による運航)に関する有識者委員会の報告書について藤巻主任研究員から報告した。まず、この有識者委員会の検討の結果、目視外の運航についても、一定の性能基準を満たす場合は運航毎の安全性を評価する個別の手続を廃止して一般ルール化する制度改正の方針が決定されたこと、また、目視外の運航が今後一般化していくことに伴い、これまで禁止されていた、操縦者が複数の無人航空機を操縦することを解禁する方針が決定されたことを報告した。また、この委員会では、目視外の運航の拡大に伴い必然的に増加する、有人機(ヘリコプターなど)と同じ空域を飛行する場合(いわゆる「空域の共有」)における対応に関する制度改正の方針も決定されており、その内容も紹介した。
 続いて、コメンテーターをお務めいただいた東京大学名誉教授・同大学未来ビジョン研究センター特任教授から、各国における無人航空機に関する安全性の確保の制度設計の基礎となっている考え方や、我が国における目視外の運航の拡大に向けて進められている研究開発プロジェクトの内容についてご紹介いただいた。
  その後、山内所長のコーディネートの下、質疑応答を行った。

プログラム

開会挨拶
宿利正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利正史
 運輸総合研究所 会長


開会挨拶
講演
藤巻 吉博<br> ワシントン国際問題研究所 主任研究員

藤巻 吉博
 ワシントン国際問題研究所 主任研究員

講演者略歴
講演資料

コメント
鈴木 真二<br> 東京大学未来ビジョン研究センター 特任教授

鈴木 真二
 東京大学未来ビジョン研究センター 特任教授

講演者略歴
講演資料

質疑応答

<コーディネーター>
山内 弘隆 運輸総合研究所 所長
閉会挨拶
奥田哲也<br> ワシントン国際問題研究所長

奥田哲也
 ワシントン国際問題研究所長


閉会挨拶

当日の結果

ワシントン国際問題研究所の藤巻主任研究員から、「米国における無人航空機政策の最新動向2022~目視外飛行における安全性の確保及び有人機との空域の共有に向けた取組み~」というテーマで発表が行われた。発表のポイントは次のとおり。

・現在は、無人航空機の目視外飛行が厳しく規制されているため、目視内飛行が大半となっている。一方、将来には、規制の緩和に伴って目視外飛行が一般化し、機体数の増加と飛行範囲の拡大の相乗効果によって、空域における無人航空機の重要性やリスクが大幅に増大する。
・米国における無人航空機の運航の方法に対する規制の免除のうち、目視外飛行に係る申請は約4,000件に上るが、許可は少数に留まっている。この規制の免除に依らない一般ルール化に向けて、連邦航空局(FAA)が昨年6月に有識者による検討委員会を設置した。検討委員会では、以下の項目の検討が行われ、今年3月に報告書が公表された。
①操縦者の認定については、新たな資格を新設し、操縦システムの自動化と複数機の運航に関する知識を要求することとしている。一方、我が国では、操縦者の技能証明において自動操縦に関する知識を要求するが、複数機の運航に関する知識は含まれていない。
②許容されるリスクのレベルについては、無人航空機の目視外飛行の比較対象として、一般航空を設定することとしている。一方、我が国ではその比較対象が明確化されていない。
③リスクに基づく機体の認証の枠組みについては、リスクに応じて当局の関与レベルを直接の検査・認証、一部確認、関与なしのいずれかに決定することとしている。一方、我が国では、当局又は登録検査機関による直接の検査・認証のみとなっている。
④一人の操縦者による複数機の同時運航については、操縦の自動化のレベルに応じて、操縦者と機体数の比に上限を設定することとしている。一方、我が国では、運航管理方法に係る飛行毎の審査において、操縦者と機体数の比を判断するという個別の対応となっている。
⑤無人航空機に係る運航事業者の認可制度については、その制度を新設し、運航の監督に係る体制の整備を要求することとしている。一方、我が国では、そのような制度が未導入である。
・目視外飛行の拡大に伴う有人機との空域の共有に対応するため、米国の検討委員会では、①第三者による戦略的分離及び技術的分離に関するサービスと、②衝突回避についての検討が行われた。
①第三者による戦略的分離及び技術的分離に関するサービスについては、その認定制度を創設することとしており、また、欧州では、来年1月から認定制度の創設と指定された空域におけるサービスの利用の義務付けが行われる。一方、日本では、2025年頃を目途として、認定制度の創設を検討中という状況である。
②衝突回避については、ADS-B等の情報に基づく衝突回避を義務付けることとしている。一方、欧州及び日本では、衝突回避の一律な義務付けは行われていない。
・目視外飛行の拡大に伴う「操縦の自動化の進展」に対応するためには、組織として安全を担保する枠組みが重要であり、無人航空機の運航事業者に対する認可制度の創設と、その認可を必要とする運航の範囲の設定を行う必要がある。また、「有人機との空域の共有」に対応するためには、戦略的分離や技術的分離に係るサービスの利用促進や、有人機の位置や速度の情報に基づく衝突回避の実現が重要であり、サービスの提供者に対する認定制度の創設や、有人機におけるADS-Bの装備の促進を行う必要がある。

 その後、コメンテータである東京大学未来ビジョン研究センターの鈴木特任教授から、以下の説明と質問が行われた。
【説明】
・ドローンを含む次世代エアモビリティに関する安全確保の方策は、次の3つの基本的な考え方に基づいている。
①リスクの影響度と発生頻度の組合せに応じた方策を行うこと。同一の機体であっても、飛行する環境によってリスクは異なり、リスクに応じた安全策が必要となる。このリスクベースのアプローチにおいては、欧州航空安全局(EASA)の取組みが進んでおり、無人航空機の運航をOpen、Specific、Certifiedの3つのレベルに分類し、それぞれの要件を定めている。
②機体や利用方法を含む運用の枠組み(Concept of Operations、ConOps)を定義し、その枠組みに対応したリスク評価を行うこと。EASAでは、各国当局が参加する無人航空機の規則検討組織であるJARUSが策定したリスク評価手法である、SORAを採用している。福島ロボットテストフィールドでは、このSORAを基に、日本の制度に対応したリスク評価ガイドラインの策定を進めている。
③パフォーマンスベースの基準に対して、業界団体が策定した適合性証明方法を活用すること。従来の方法では、各社からの新技術の提案に対して、航空当局が基準への適合性を個別に審査する必要があったが、パフォーマンスベースの基準では、標準化団体において新技術に対する共通の適合性証明方法を策定することにより、航空当局による個別の検討が原則不要となる。日本でも、無人航空機の安全基準等に対応した適合性証明方法を研究するため、NEDOのプロジェクトを通じた検討を行っている。
・今後の課題としては、ドローンの運航事業者の定義と認証、国際的な整合、運航管理、大型無人機の制度化が挙げられる。特に運航管理に関しては、ロードマップに従った運航管理の導入を進めるとともに、NEDOのプロジェクトを通じて、一人の操縦者による複数機の運航や、有人機との空域の共有のための技術開発を行うこととしている。

【質問】
①米国の検討委員会において、完全には合意されなかった部分はどの部分か?
②検討委員会での答申が新たなルールになるまでに、通常どの程度の時間がかかるのか?
③欧州と米国でルールに違いが散見される理由と、国際的なハーモナイゼーションへ動きがあるか?
④公的利用における目視外飛行のルールはどのような状況か?

この質問に対し、藤巻主任研究員は以下のとおり回答した。
①完全には合意されなかった項目として、「通行の優先権の見直し」や「プライバシーの保護」が挙げられる。「通行の優先権の見直し」とは、常に有人機が無人航空機に対して通行の優先権を有する現状の規則に対し、一定の条件に該当する場合には、無人航空機に通行の優先権を認めること。この点に対して、有人機には関連する機器の装備が困難であるものや運動性能が低いものがあるため、無人航空機が引き続き回避を行うべきとの意見があった。また、「プライバシーの保護」については、業界が自主的に優良事例の普及啓発を実施するということに対し、運航の目的やどのようなデータを収集するのかについて、情報公開を義務付けるべきとの意見があった。
②リモートIDのケースでは、答申から正式な規則化までに約3年を要した。目視外飛行のための規則については、業界からの強いニーズを受けていることから、このケースよりは迅速に進むのではと考える。
③全般的に、米国が具体的なニーズの解決を目指すアプローチである一方、欧州は将来的なあるべき姿に対して必要となる要素を段階的に導入するアプローチを志向している。また、無人航空機に関するニーズや環境が各国で異なるため、規制の枠組みを完全に統一することは困難であるが、機体やシステムの認証など各国で共通して利用される部分に関しては、米国の基準に基づく適合性証明方法を欧州が許容することや、標準化団体が米国と欧州の両方の基準に対応可能な標準を策定することなどの取組みが進められている。
④現在、米国における公的機関による無人航空機の目視外飛行については、商業用と同じ規制の枠組みに従い規制の免除を受けて実施する方法と、公的運航者としての特別の許可を受けて実施する方法がある。また、どちらの方法であっても、公的機関が許可範囲を超える運航を緊急に実施しなければならない場合に対応するために、特別なプロセスが用意されている。

最後に、視聴者からの質問を受け付け、無人航空機とヘリコプターとの空域の共有、目視外飛行のための規則に係るパブリックコメントの時期の見通し、有人機におけるADS-Bの装備に対するインセンティブ、無人航空機と有人機との衝突防止のための具体的な方法などについて更に議論が行われた。