地方都市・社会を持続可能とするための地域鉄道の持続可能化方策を考える ~新型コロナウイルス感染症を契機として~

  • 運輸政策セミナー
  • 鉄道・TOD

第77回運輸政策セミナー(オンライン開催)

Supported by 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION

日時 2021/9/10(金)15:00~17:00
開催回 第77回
テーマ 地方都市・社会を持続可能とするための地域鉄道の持続可能化方策を考える ~新型コロナウイルス感染症を契機として~
講師 1.基調講演
テーマ:地方の都市・社会を持続可能にしうる鉄道のあり方と制度的知見
講師:金山洋一 国立大学法人富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授(学科長)
都市政策支援ユニット長
地方鉄軌道等再生支援センター長
運輸総合研究所 研究アドバイザー

2.講  演
テーマ:アフターコロナにおいて持続可能な地方と鉄道
講師:伊東尋志 前えちぜん鉄道株式会社専務取締役

テーマ:アフターコロナを見据えた地域鉄道あり方~ひたちなか海浜鉄道のこれまでと今後~
講師:吉田千秋 ひたちなか海浜鉄道株式会社代表取締役社長

3.パネルディスカッション及び質疑
モデレーター:金山洋一 国立大学法人富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授(学科長)
都市政策支援ユニット長
地方鉄軌道等再生支援センター長
運輸総合研究所 研究アドバイザー

パネリスト :講演者

4.全体講評
山内弘隆 運輸総合研究所所長

開催概要

 少⼦⾼齢化等の進展により地域鉄道を取り巻く環境は極めて厳しい状況にあり、廃線となる路線がある⼀⽅、維持したいとの地域の声により存続が図られている路線もある。このような中、新型コロナウイルスの影響により、鉄道利⽤者が減少するなど、ますます地域鉄道は厳しい状況に置かれている。これにどのように対応するのか、また、持続性のある地域鉄道とは何かを議論し、今後の取り組みを提⽰した。

プログラム

開会挨拶
宿利 正史<br> 運輸総合研究所 会長

宿利 正史
 運輸総合研究所 会長


開会挨拶
基調講演
金山 洋一<br> 国立大学法人富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授(学科長)<br> 都市政策支援ユニット長<br> 地方鉄軌道等再生支援センター長<br> 運輸総合研究所 研究アドバイザー

金山 洋一
 国立大学法人富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授(学科長)
 都市政策支援ユニット長
 地方鉄軌道等再生支援センター長
 運輸総合研究所 研究アドバイザー


講演資料『地方の都市・社会を持続可能にしうる鉄道のあり方と制度的知見

講演者略歴

講演1
伊東 尋志<br> 前えちぜん鉄道株式会社専務取締役

伊東 尋志
 前えちぜん鉄道株式会社専務取締役


講演資料『アフターコロナにおいて持続可能な地方と鉄道

講演者略歴

講演2
吉田 千秋<br> ひたちなか海浜鉄道株式会社代表取締役社長

吉田 千秋
 ひたちなか海浜鉄道株式会社代表取締役社長


講演資料『アフターコロナを見据えた地域鉄道のありかた

講演者略歴

パネルディスカッション及び質疑

<モデレーター>
 金山 洋一
  国立大学法人富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授(学科長)
  都市政策支援ユニット長
  地方鉄軌道等再生支援センター長
  運輸総合研究所 研究アドバイザー

   
<パネリスト>
 伊東 尋志 前えちぜん鉄道株式会社専務取締役
 吉田 千秋 ひたちなか海浜鉄道株式会社代表取締役社長
全体講評
山内 弘隆<br> 運輸総合研究所所長

山内 弘隆
 運輸総合研究所所長

閉会挨拶
佐藤 善信<br> 運輸総合研究所 理事長

佐藤 善信
 運輸総合研究所 理事長


閉会挨拶

当日の結果

1.基調講演 金山洋一 国立大学法人富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン
            学科 教授(学科長)都市政策支援ユニット長 地方鉄軌道等再

            生支援センター長 運輸総合研究所 研究アドバイザー

 地域鉄道の経営状況は極めて厳しく、そこにコロナのインパクトがあり、大きな打撃を与えている。コロナ発生前において赤字事業者が7割あり、事業者への補助が前提になった姿と言え、所謂、企業等に対する「補助」の域を超えていると考えることもできる。コロナは、地域鉄道に対する再認識の契機にもなった。つまり、コロナがなければ長期的に利用者や人口が少しずつ減って、サービスレベルも更に下がった状態になるので、困る人が少ないため廃線される流れにあったかもしれないが、コロナ禍で運行を取りやめるといった事態が短期間で現実的な話題になったことで、人々の生活や都市に与える影響が大きいことが実感されることとなった。
 富山ライトレールについて紹介する。LRT化だけでなく、使いやすいダイヤとしたことが大きな特徴である。従来は運行頻度も少なく、不定期のダイヤで使いにくかったが、LRT後はダイヤをパターン化し、ピーク時間帯も本数を増やし使いやすくなっている。結果として、利用者は平日で約2倍、休日で約3倍に増加した。まちづくりの視点でも、中心市街地及び公共交通沿線居住推進地区の人口は転入超過に転じ、人口減少が進む地方都市における、持続可能化の実現方策の一つであると言える。低廉な定期券「おでかけ定期券」を販売し、外出を促すことで医療費の削減や、介護予防にも繋がっている。コンパクトシティ政策により中心市街地が活性化され、0.4%の面積内で、都市計画税の22.5%が生まれており、都市経営の観点からも効果的と言える。東京圏の夜間人口、従業人口が鉄軌道沿いに多いことを見ても、鉄道は居住立地を促しやすいと言える。
 続いて、北陸新幹線の開業に伴う影響について紹介する。開業によって、全国平均に比べて出生率が大きく向上している。また、就学先にも影響を与えており、関東12県からの志願者数も増えている。
 こうしたことから、鉄道が人々・都市に与える効果として、就学選択先の増加など、人々の意識や行動に与える影響や、居住立地や出生率向上など都市、社会に与える影響がある。
しかし、こうした効果は、現在採用されている費用対効果分析の評価外と言え、地域においてはこうした観点も含めた総合的な議論が必要と考えられる。
 地域鉄道の現状の課題については、サービスレベルの低さや、施設の老朽化など様々視点での課題がある。実際の運行本数を見てみると、三セクや上下分離鉄道も含め、ほとんどの事業者で、富山ライトレール並みの60本/日を下回っている。
 続いて、都市経営基盤としての交通を考える。現在の大きな問題として人口減少問題がある。人口は社会の最重要事項であり、能動的に出生率を増やすような意識が必要である。求める未来の姿を描いてみると、いずれもモビリティが関係していることが分かる。モビリティは個人や企業の経済力にも繋がり、結果として出世率の向上にも繋がるものである。
 海外に視点を向け、地域における公共交通の日本と欧米の違いを見ると。事業者経営にて提供する公衆交通である日本に対し、欧米は、地方政府が利便性の観点も踏まえて提供するものであり、日本も欧米の公共交通「Public Transportation」として位置づけることが重要である。
 公共交通と都市経営について、ロジカルシンキングとして、なぜデパートのEV,ESCがいつも動いていて無料なのかを考えてみる。EV,ESCを別会社として運賃を取って自立経営させると、客が減るので、コスト削減で稼働時間を減らすだろう。すると、更に客が減るので更に稼働時間を減らしていき、やがてEV,ESCの経営は行き詰まるだろう。デパートの経営も成り立たなくなるかもしれない。これは近年までの日本の地方交通の推移に類似することである。公共交通は、あるかないかだけではなく運行頻度といったサービスレベルが重要であり、また、都市経営の一環とすることに合理性があることがわかる。
 制度設計論について解説する。制度設計の基本的な考え方として、鉄道事業者の実情を踏まえた制度であること、インセンティブ・コンパチブルなメカニズムが安定的に機能するものであることが必要である。都市の持続可能化を図るには、鉄道の制度も持続可能である必要があるからである。官民分担型上下分離の考え方では、路線維持・整備は、社会経済領域として公的機関が、輸送サービスは市場経済領域として民間事業者が、各々の適正が発揮されるように分担・連携する。リスクマネジメントの観点でも、相対的にリスクをよりコントロールし得るものがリスクを負うよう分担するので符合する。線路使用料の考え方としては、事業者による運行、すなわち納税者の財産である公的施設の使用によって発生する収益や既存ネットワークの反射損益を対象とする受益相当額とすることで、民間の利益に転嫁されないこととなる。そのため、公的措置が可能であり、また、使用料を一定期間固定することで、民間のインセンティブを発揮させることもできる。
 今後の取り組みの方向性について、都市・住民に寄与する利便性が提供できているかどうか、持続可能性があるかどうかで既往施策の得失を把握する必要がある。ただ、限界が見られるので、官の役割が果たせる選択肢の提供は必要である。官民分担型上下分離はその解となっており、類似例として都市鉄道等利便増進法もある。公有民営としてもサービスレベルや利便性が高いものでなくてはならない。問題が顕在化する前に措置する方が、回復は早くコストも少ないが、顕在化するとコストもかかり、回復も困難になる。人口減少が進む各地方都市がどこにいるのかを把握する必要がある。


2.伊東尋志 前えちぜん鉄道株式会社専務取締役

 えちぜん鉄道は2003年に京福電鉄を引継ぎ運行開始した。現在は2路線、全線で53km44駅、一日約160本の運行がある。年間利用者は約360万人で、2018年に過去最高の利用者数となった。2020年はコロナの影響で利用者、収入共に約30%減少した。また、2020年は大雪や斜面崩落などの災害対応でも苦慮した年であった。コロナの対応として、夏前には自治体と協議し、減収補填をいち早く予算化して頂いた。コロナを経て、鉄道という業界だけでの問題としては対応できなく、政策的な協調の必要性を痛感した。また、政策の縦割りを改めて痛感した。地方創生臨時交付金も使用余地があると考えられたが、民間の損失補填には使えないと決められており、課題と感じた。コロナ渦で自治体との協力が進むことも期待されたが、実際は自分たちで行わなければならなかった。
 こうした経験を経て、鉄道を通じて持続可能な地域とするために、マインドセットを変える必要がある。モード間、路線間の競争の結果、廃線、撤退してしまうことは、ネットワークの分断、交通の選択肢の減少が生じる。アフターコロナにおいても、人々の生活に関わる地域社会全体の問題として考える必要がある。
 福井鉄道との相互直通運転においても、都市事業として動き出すまでに10年以上かかっており、実は社会的事業について分かっている人材が少ないのではと考えられた。そこで、その前提としてのルールの見直しが必要であると考える。ヤードスティック、総括原価を20年来用いてきたが全て競争政策である。次にどのようなルールが良いか、ゼロベースで考えて欲しい。アフターコロナにおいては交通モード同士の競争ではなく、IT化との競争である。「効率化」を求めることで鉄道は生き残れるのか、と言われるが、営業キロ当たりのコストで見ると非常に低くなっており、効率化の余地があるのかは疑問である。営業キロの対数と利用人員の関係を見ると相関が見られ、こうしたことからも既に十分効率化されているとも考えて良い。こうしたデータの見方をしていくことで、地方の鉄道が「経営効率が劣る」とは言い難くなる。さらなる効率を求めて廃線や分断を進めることは、ネットワークが欠如することとなり実は非効率になる。地域住民や利用者の効用を最大化させるためには、競争ではなく協力による考え方が必要である。


3.吉田千秋 ひたちなか海浜鉄道株式会社代表取締役社長

 ひたちなか海浜鉄道は、2008年に茨城交通から湊線の営業を引継ぎ経営している。全線14.3km/h、全11駅で、ひたちなか市内を運行している。市内には国営ひたち海浜公園などがある。市民の協力も大きく、開業前から様々な宣伝やイベント開催を行っている。商工会議所と連携したイベントでも、多くの鉄道利用者があり、市民協働が上手くいっていると言える。東京からも近く、CMやアニメにも使っていただいている。
 鉄道側の施策としても、運行運数の増加や新駅設置、年間定期券の新設等により、利用者数を伸ばしてきている。また、国営ひたち海浜公園へのシャトルバスの運行により、大きく利用が伸びている。平成30年度には利用者数は100万人を突破。過去には最終損益が2000万の赤字が出ていたが、平成29年度には黒字を達成した。
 行政の方では、5つの小中学校を統合して、駅を新設し、鉄道利用を促進させた。国営ひたち海浜公園への延伸により、更なる需要の増加、経済効果の拡大を考えている。地域鉄道は、赤字の補填ではなく、適切な投資によって大切な市民のアイテムとして生き返る可能性もあるのではと考える。
 そのような中で、コロナによる影響は大きく、輸送人員は震災時を除き過去最低、運輸収入も2億から1.3億へ減少した。観光客も戻りは鈍く、元年度比で70%となっている。茨城県の公的補助や経費削減等により、何とか赤字を圧縮している。これまで恵まれてきたひたちなか海浜鉄道でも現時点では決め手はなく、幅広く知恵を集めている。
 そこで、鉄道と沿線の付加価値の創生を考えている。行政との連携による沿線への小中学校の誘致によって利用者は増加した。また、今後も延伸計画による積極投資によって、地域の経済効果にもつなげていきたい。新駅の設置についても、予想以上に地域の利用者があり、こうしたことが付加価値の創造性に繋がると考えている。他にも、鉄道施設の潜在力を活用するため、車庫見学やふるさと納税との連携、ケータリングサービス等を検討し、地域と一体となって頑張っていきたい。
 公的助成制度の再構築については必要性を感じている。通学定期の割引によって増収になったが、割引額が事業者負担であることは課題と考える。アフターコロナに向けて現時点での決め手はないが、鉄道事業者や学識の方等との連携や市民の方からも知恵を得ながら、新しい可能性を見出すべく検討したい。
 当路線は地域鉄道の活性化のモデルにもなってきていると自負している。今後もモデルとして活性化させ、全国の地域鉄道や鉄道全体の活性化繋げたい。


4.パネルディスカッション

 金山先生をコーディネーターとして、経営の厳しい地方鉄道における課題と沿線住民や行政との連携について議論を行った。主なやりとりは以下の通り。
<地方鉄道の課題について>
・ひたちなか海浜鉄道では東日本震災時に被害を受け、多額の復旧費用が必要になった。当初は国1/3、地方1/3で残りが鉄道事業者だったが、市民の応援、市議会決議、市長による国への働きかけで結果的に、約9割を公共負担してもらった経験がある。

  • ・えちぜん鉄道でもがけ崩れの影響を受けたが、道路側の災害復旧の制度でかなりの部分は負担してもらえ、非常に大きな被害だったが、驚くほど短期間に復旧出来たという経験がある。
  • ・民鉄協がとりまとめている土木構造物保険があるが、大手と地方とでリスクに差があり、保険料と被害金額のバランスが良くないという課題がある。
  • ・同じ地方鉄道でも山間区間があるえちぜん鉄道と平坦でトンネルもないひたちなか海浜鉄道では沿線環境が異なる。相互理解も含め鉄道事業者や学識経験者などとの情報共有、課題出しなどが重要である。
  • ・期待する補償額が大きいと、掛け金がかなり大きくなるといった関係もある。


<地方鉄道の可能性と限界について>

  • ・学校が協力して生徒にチラシの配布により年間定期を推奨してくれると増収には寄与するし、沿線には観光資源があると思う。乗りに来たお客さんを運ぶだけでなく、視点を変えて自路線の魅力を考えると案外いろいろなことが見つかると思う。
  • ・ネガティブな事だけ見てもしょうがないが、大きなビジョンを持って、諦めずに少しずつ努力が必要と思う。鉄道への投資は地域全体のためになるということは、継続して言い続けているし、それを実現できるように常に社員が努力している中で、たまたまチャンスもあるということだと思う。ただ、現場の削減努力や効率化は限界だし、新しいフレームワークが必要と思う。
  • ・軌道技術者が1人しかいない鉄道事業者が見られ、似たような状況が日本全国にある。安全等に関係する技術面の課題もあるということだ。

視聴者からの質問に対してパネラーから回答を行った。主なやりとりは以下の通り。(当日、回答できなかった主な質問についても回答)
Q.地元住民から愛されるようになったのはなぜか?

  • ・ひたちなか海浜鉄道では市民力が高かったと思う。また、鉄道は公序良俗に反しない意見は全て聞くというスタンスでやってきたので、とっつきやすい存在だったかもしれない。鉄道もギリギリの妥協をしながら取り組んできたことが受け入れられたと思う。
  • ・えちぜん鉄道では、地元の旅客が大事であった。それを重要視することを共通認識にしていた。例えば雪の時の対応や地元と協力できる草刈りなども地元と一緒に行ってきて、これの積み重ねが他社との違いと思う。


Q.行政側の理解を得るためにどのような働きかけをしているのか?

  • ・ひたちなか海浜鉄道では、行政側から積極的に関わってきてくれている。市の観光行政と鉄道を絡めてくれていて、市から鉄道への出向者が、次に観光に関わるなどの対応もしてくれている。
  • ・えちぜん鉄道は、沿線5自治体が取締役として経営に関与し、県も関与している。こうした中で行政との関係は俗人的にならないということだと思う。会社は社会の公器であるということで地域の関わり方も見直し自らが経営するというスタンスを再認識している。現在、今後10年の公的支援スキームを構築中だが民間努力は大前提で、各自治体の中で鉄道をどう考えるかということを取締役の仕組みとする形を目指している。


Q.官民上下分離等の投資手段としての鉄道経営というスキームへの受け止め方はどうか?

  • ・えちぜん鉄道では主体間の役割の明確化のために契約を行った。当初は不信感が元で文書化した。しかし10年経った時の契約は前向きな形で自治体と会社の役割を明確化した。日本的ではないが、それがないことで、余計な議論に時間を要することも多いので、重要なことだし日本でも機能すると思う。
  • ・ひたちなか海浜鉄道では役割分担の明確化がないまま、黒字化してしまったので、線引きが分からなくなっている。限界まで頑張って、国、県、市に補助をいただいて経営出来ればと思っている。


Q.自動車を使える人に鉄道を選択してもらうためには,鉄道の連続性だけでなく、乗り換えた時の初乗り運賃の割引も大切ではないか?

  • ・私的企業の利潤最大化ではなく、利用者利便性と効用の最大化を目指すために、乗り継ぎ運賃の設定は非常に重要と考えます。運輸連合的な義業連携、料金連携について、全国の先進モデルとして県だけでなく、国も実験的施策をリードするような仕組みが必要だと思う。


Q.「地方路線をもつJRなど大手鉄道会社の経営改善」について、今後、内部補助では限界があるのでしょうか?

  • ・地方部を持つ大手鉄道会社においては、収益性の低い地方部への投資や経費充当といった内部補助には、企業としての事業性や株主理解の観点等から限界が存在します。例えば、単に線路があるかないかだけではなく、仮に、そこで提供される運行本数等について鉄道として最低限の社会的基準ができれば、鉄道会社が地方部をケアしやすくなる可能性があると思う。


Q.「地方路線をもつJRなど大手鉄道会社の経営改善」について、今後、内部補助では限界があるのでしょうか?

  • ・地方部を持つ大手鉄道会社においては、収益性の低い地方部への投資や経費充当といった内部補助には、企業としての事業性や株主理解の観点等から限界が存在します。例えば、単に線路があるかないかだけではなく、仮に、そこで提供される運行本数等について鉄道として最低限の社会的基準ができれば、鉄道会社が地方部をケアしやすくなる可能性があると思う。


Q.費用対効果に現れない鉄道のメリットとして、鉄道の連結性があるのではと思う。また、大手鉄道と接続する地域鉄道はどうすれば良いでしょうか?

  • ・他社線への乗り入れは、現在では安全上のハードルが非常に高く、人的、設備的に大きな投資が必要となる。しかし、直通の列車は運行できなくても通しの乗車券や企画商品を設定することは、技術上も簡便にできると思う。特に「乗車券」でなはなく、旅行商品としての設定をWeb上で販売する方式は、設備投資も不要ですぐにでも可能です。こういう柔軟性を持つことが必要だと感じます。また、お客様サービスをできるだけ向上する、地域内での価値を最大化するという共通目標を持つべきだと思う。同じ目標のもとで、役割の設定、具体的な連携策(ダイヤ、運賃、情報提供など)を実施していくべきだと思う。


Q.「沿線の付加価値を高めるために、幅広く知恵を集めることをやっていきたい」とあったが、地域の大学に対して求めること、期待されることはありますでしょうか?

  • ・ひたちなか海浜鉄道では、メディアアートと地域及び地域鉄道の融合(みなとメディアミュージアム)など学生の知恵と才能を活かしたプロジェクトが進んでいる。また、日立製作所と連携してPBLの取り組みを行っている。若手の方に湊線の課題を見出して解決法を探る、という取り組みです。これまで気づかなかった鉄道の特質を洗い出し、鉄道運営にあたって大きなヒントになっている。


Q.鉄道の場合マイカーという競争相手をみる必要があるが、マイカーに対する政策を何か考えているのでしょうか?

  • ・湊線を例に挙げると、通勤利用にまだ自動車と競争できる余地があると感じている。通勤時間帯の運行頻度の確保や大手企業の通勤手当の実態(公共交通全額会社負担)などが鉄道の優位性です。また、県庁所在地レベルの都市の場合、市内の渋滞も相当なものであり、福井県のようにパーク&ライドが功を奏していることも好例かと思う。


Q.地域鉄道の中には1市町村で完結せず、複数市町村にまたがる路線があります。補助金に限らず地域の支援を受けるに当たり、市町村間にある温度差をどのように調整する(受け止める)とよいでしょうか。?

  • ・県が主導する、というのがひとつの答えかと思う、また、徹底した情報公開と、定期的な協議の実施が肝要だと思う。


5.講評 山内弘隆 運輸総合研究所所長

 地方鉄道が置かれている切実な状況が分かったのが一番の成果だと思う。地方鉄道を見直す機会になればよいと思う。航空会社はコロナ禍によって需要が大きく減少して大幅な赤字になり、経営のあり方、ガバナンスなども変えなければならないということが生じた。地方鉄道でも同じことが起きていると言える。これを機会に鉄道が変わることも大事だが、政策や支援のあり方も変わらないといけないということもはっきりした。
 地方鉄道の経営で重要なのは、市民との関わりだが、今回登場いただいた両社は非常に良好な関係を築いていると思われる。今回コロナで具体的に何を見直すかだが、航空会社は資本増強して財務体質を改善し、危機に備える等のことをしている。それをそのまま地方鉄道で行うのは難しいが、三セクではどのようにしたらよいかということを考え、それを日本の地方鉄道全体に広げていくのだと思う。上下分離を見直して使ったり、経営の方針を変えたりすることもあるが、それだけではなく、行政側は支援や補助のあり方を考えなければならない。例えば活性化再生法があるが、その中にバスの補助は含まれるが鉄道はそうでない。この枠組みに地方鉄道を盛り込むという考え方もあると思う。それから、鉄道、バスだけでなく、タクシーも含めて地域の交通をどう支えるかということであるが、交通体系を見直すことも重要だ。欧州では運輸連合という形で公共的交通を組み合わせて提供している例もある。つまり、地域版の総合交通体系を考えるということである。
 本日の議論では構造物に対する保険の話がでたが、かつてこの研究所で、個人研究だが、地方鉄道全体で、自然災害等の被害について保険制度を構築してはどうかという研究がなされたことがある。つまり、構造物も含めて経営面全体の立て直しに保険をかけていくという発想である。簡単ではないが一つのアイデアだと思う。
 コロナ禍は、地方鉄道をどうするかを見直すきっかけになると考える。そういう意味では皆さんから非常に大きなアイデアをいただいた。ご視聴の皆さんにおかれては、今後の制度改革や新しい地方鉄道のあり方を検討される際に参考としていただきたいと考える。



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写真左から、伊東尋志、金山洋一、吉田千秋(敬称略)