新型コロナウイルス感染拡大下における米国の交通機関支援
- 運輸政策コロキウム
第142回運輸政策コロキウム~ワシントンレポートⅩ~(オンライン開催)
日時 | 2021/6/3(木)10:00~12:00 |
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開催回 | 第142回 |
テーマ・ プログラム |
新型コロナウイルス感染拡大下における米国の交通機関支援 |
講師 | 講 師:沖本 俊太朗 ワシントン国際問題研究所主任研究員 コメンテーター:日比野 直彦 政策研究大学院大学教授 <質疑応答> コーディネーター:山内 弘隆 運輸総合研究所所長 |
開催概要
米国は昨年3月以降新型コロナウイルスの感染拡大が続き、感染者数・死者数ともに世界最大となっている。これは社会・経済に極めて大きな影響を及ぼし、中でも、交通・運輸関係の産業には甚大なダメージを与えている。本報告では、感染拡大が米国の交通機関(鉄道、バス、航空等)にもたらした影響について日本との比較もしながら統計分析を行ったうえで、連邦政府が既存制度や新制度をどのように用いて交通機関への支援を行ってきたかについて、米国と日本の公共交通に対する考え方の違いなどにも触れながら紹介した。
また、感染拡大による社会への影響の今後の見通しに関する米国内での言説などについても併せて紹介し、米国の交通機関がコロナ禍で直面している状況について理解を深めることで、日本で交通業界や関係者がそれぞれ向き合っている課題についての解決の視点を提供した。
今回のコロキウムは大学等研究機関、国交省、交通事業者、コンサルタントなど446名の参加者があり、盛会なコロキウムとなった。
プログラム
開会挨拶 |
宿利 正史 開会挨拶 |
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講 師 | |
コメンテーター | |
コーディネーター |
山内 弘隆 |
閉会挨拶 |
奥田 哲也 閉会挨拶 |
当日の結果
ワシントン国際問題研究所の沖本主任研究員から「新型コロナウイルス感染拡大下における米国の交通機関支援」というタイトルで発表がありました。発表のポイントは次のとおりです。
○米国における新型コロナウイルス感染拡大の状況
・米国の新型コロナウイルスの累積感染者3300万人、死者50万人は、日本の約20倍の被害であり、政府による長期かつ多方面の行動制限等もあいまって、社会全体が深刻なダメージを受けた。
・それによる鉄道旅客、バス旅客への影響は、日本との比較においても相当大きい。バス旅客は2020年4月には28%(前年同月比)まで、鉄道旅客は11%(同)まで落ち込み、それぞれ直近でも50%、30%までしか回復していない。
・物流はいずれのモードも好調であり、経済対策において旅客輸送支援が焦点になった。
○従前からの米国の交通機関への財政支援
・連邦公共交通局の支出の8割を占めるのが、全国の交通事業者への、フォーミュラ補助金、残りの部分の多くを占めるのが鉄道やバス高速交通システム(BRT)の新設、延伸のための資本投資補助金である。
・米国の公共交通サービスは、利用者数が少なく大都市圏を含めてその費用を営業収入により賄えない一方、公共交通は社会的弱者の足であるという考え方が浸透しており、そのサービスを担う公的主体に連邦や州から補助金交付がされている。連邦からの補助金がこのフォーミュラ補助金であり、州との協調補助である。
・この補助制度は、バス、鉄軌道、パラトランジットなど広範囲のモードの資本費を対象に補助しており、一部の例外を除き、運営費に充てられないものとされている。
○感染拡大後の交通機関への財政支援
・感染拡大以降、米国では累次の大型財政出動がなされた。
・昨年3月のCARES法は2.2兆ドルという米国史上最大規模の広範囲にわたる経済対策であり、策定の発表がされてから約10日で成立したというスピードの速さに特徴があった。
・交通関係ではエアラインへの支援が経済対策全体の中でも主要項目として取り扱われた。他の各モードにおいても、年間予算を大きく超える水準の規模で措置されている。
・昨年12月の0.9兆ドルの経済対策法は、基本的にCARES法の措置の延長である。
・今年3月の1.9兆ドルの経済対策法は、バイデン大統領政権が成立後ということもあり、対策規模・内容の両面で民主党の財政政策への考え方(大きな政府、弱者保護)が色濃く反映されるものとなり、それまでの2回とは異なり超党派で成立させることができなかった。
・交通関係の措置は、内容や規模も含めて、概ね業界からも好意的に受け止められている。
・公共交通に関する支援措置は、連邦補助率の100%への嵩上げ、営業費への使途拡大を認めるなど、フォーミュラ補助金の制度を基に、拡充する形で措置された。事業者にとっては、この補助金が、失った運賃収入を穴埋めするものとして機能した。
・他のモードへの支援も、既存制度の一部改正(公共交通、アムトラック、空港)、新制度の創設(航空旅客会社、大型バス等)など、前例にとらわれず、柔軟な方策がとられている。
○交通関係事業者団体による働きかけ
・全米公共交通協会(APTA)は、議会において支援策の検討がされている時期に、会員向けメーリングリストで議員への働きかけを呼び掛けたり、時宜を得たプレスリリースの発信により効果的な働きかけを実施していた。
・ワシントンDC交通局(WMATA)は、地下鉄・バス路線の運行削減、地下鉄駅の廃止などを個別・具体的に検討し、議会において追加的な財政支援策を検討中の時期にその検討内容を発表することで、世論を喚起していた。
・米国の大手航空会社による事業者団体Airline for Americaは、パンデミックによる影響発生直後から、“Tracking the Impacts of COVID-19”と称して、データ整理・ビジュアル化しており、ホームページ公開している。最新の営業基本データの掲載に加え、他業界との影響比較などもされている。
○日本における交通機関への財政支援との比較
・日本政府はパンデミック後3度にわたり補正予算を編成し、合計約73兆円の追加支出を行っている。10兆円を超える補正予算が組まれたのは過去数回であり、昨年度は極めて大きな措置がされた。
・米国連邦政府は、その日本と比べても約8倍程度となる、積極的な財政政策を行っている。
・日本の交通事業者への経営支援(予算措置)は、米国のように幅広く行うのではなく、特に状況が厳しい「地域公共交通」にターゲットを絞ったものとなっている。(地域公共交通における感染拡大防止対策(2次補正138億円)、地域公共交通の活性化・継続(3次補正305億円)など。)
○まとめ
・米国は、平時から公共交通の資本投資等を予算を用いて支援しているなど、日本とはそもそもの制度が異なっている。
・米国社会は感染拡大による影響を受け、変容している。それによりバス・鉄道等の旅客交通が受けている影響も、概ね日本より大きい。
・米国では、日本以上に積極的な財政政策が取られている。交通事業者への支援についても、営業費用への補助、連邦補助率の嵩上げなど、異例の措置が取られている。
・日本においては、感染拡大が各モードにもたらす影響、既存支援措置の効果を適時に見極めた上で、自国の実情にあった支援がされるべき。
・ただ、米国において業界団体の要望等に基づく支援がされているのは事実であり、事業者等と立法府・政府との間で、効果的なコミュニケーションが行われている点は、日本においても学ぶべきところがあるのではないか。
その後、コメンテーターの政策研究大学院大学の日比野直彦教授からは、沖本主任研究員の発表に対し、
−コロナ禍の中、多くの人が関心を持つ、時宜を得たテーマである
-航空等はこれまでに様々な報告がなされているが、あまり情報が得られていない都市内の公共交通にも着目していることは高く評価できる
-米国における公共交通への財政支援の実績が詳細に調べてある有益な内容である
-支援の実績に加え、その経緯は、日本への提言に向けては重要である
-米国と日本では、そもそも多くの違いがある。文化の違い等も踏まえて結果を捉えることが重要である
とのコメントがありました。
また、東京の状況について、日比野教授が行われている研究の紹介がありました。自動改札データと定期券情報を用い、コロナ禍における鉄道利用者の通勤行動の変化、さらには、テレワークの進展が都市鉄道需要に与える影響について分析をなされており、いくつかの研究結果を示していただきました。
・定期券利用者については、利用者の減少が約1割、利用頻度の減少が約2割(→定期外に移行)、ほぼ利用頻度の変化なしが約7割であること
・テレワークの進展による行動の変化は、これまでほぼ毎日鉄道を利用していた人でも多く発生していること
・テレワークの進展は勤務地側の特徴に影響すること
・乗車時刻の変化はほぼ見られなかったこと
・東京都区内から横浜、さいたま等に移転が見られたこと
等が説明されました。
また、コロナ下禍での変化を踏まえ、コロナ後の変化として、テレワークの進展により鉄道利用者数の減少すること、乗車時刻の変化が見られなかったことからコロナ禍により減少した需要の戻りはラッシュ時間帯であることが予想されることから、「収入減にもかかわらず混雑対策を必要とされる」ことを示唆されました。
この結果を踏まえ、東京圏の鉄道事業者に対する支援に関しては、コロナ対策の政策の影響による鉄道利用者減少分に対する一時的な財政支援よりも、長期的に考えれば、柔軟な運賃設定、混雑対策等への支援が重要である旨の指摘がありました。さらに、需要の時間分散、逆輸送等のためにも「サテライトオフィスやコーワーキングスペースの整備、それらと鉄道利用との連携」が重要であること、「定期外利用者の回復に向け沿線の関連事業の充実」も重要であるとの意見がありました。
また、以上のコメントに併せて、日比野教授からは以下の質問がありました。
【質問】
①支援に至る経緯は? どこが主導して導入されたのか? 米国に滞在しているからこそ知り得る情報を教えていただきたい。
②大統領選挙の影響はどのようなものであったのか?
③日本では、どのようにすべきと考えているのか?
この質問に対し、沖本主任研究員は以下のとおり回答しました。
①業界が、早い段階から、様々なレベルで立法府への働きかけを実施。一例としては、航空事業者への支援策のため、経営者層や事業者団体からはもちろん、並行して客室乗務員協会等の労働組合からの働きかけも行われた。それが、支援への超党派的支持を形成したと考えられる。
②昨年11月の選挙で、大統領、両院の議会多数勢力がともに民主党となり、以降2回の経済対策には、一定程度、民主党色は出ている。国内経済政策について、伝統的には、共和党は「小さな政府」「減税、歳出削減」、民主党は「大きな政府」「(富裕層への)増税、積極歳出で富の再分配重視」という対立軸があり、公共交通は一つの象徴的な分野。また、民主党の別の重点政策であるCO2削減にも資するもの。一方で、議会の多数党・政権党に関わらず、公共交通への支援は一定程度継続的に行われている。
③「パンデミックによる影響で経営がどのように厳しくなっているか。既に日本で行われている経済対策等でカバーできないのか。」を、各モードの事業者が確認するところから検討を開始すべきではないか。米国の支援措置状況を踏まえると、モードとしては、航空事業者、中小規模の公共交通事業者、また事業者の経営活動としては、資本投資への影響が懸念点。
最後に視聴者からも質問を受け付け、日米の公共交通事業主体の違い、米国での公共交通を忌避する風潮の有無、ポストコロナの行動変容に関する議論の動向、行政等と業界の議論の場、国内の観光需要等の最新状況などについて議論がなされました。
○米国における新型コロナウイルス感染拡大の状況
・米国の新型コロナウイルスの累積感染者3300万人、死者50万人は、日本の約20倍の被害であり、政府による長期かつ多方面の行動制限等もあいまって、社会全体が深刻なダメージを受けた。
・それによる鉄道旅客、バス旅客への影響は、日本との比較においても相当大きい。バス旅客は2020年4月には28%(前年同月比)まで、鉄道旅客は11%(同)まで落ち込み、それぞれ直近でも50%、30%までしか回復していない。
・物流はいずれのモードも好調であり、経済対策において旅客輸送支援が焦点になった。
○従前からの米国の交通機関への財政支援
・連邦公共交通局の支出の8割を占めるのが、全国の交通事業者への、フォーミュラ補助金、残りの部分の多くを占めるのが鉄道やバス高速交通システム(BRT)の新設、延伸のための資本投資補助金である。
・米国の公共交通サービスは、利用者数が少なく大都市圏を含めてその費用を営業収入により賄えない一方、公共交通は社会的弱者の足であるという考え方が浸透しており、そのサービスを担う公的主体に連邦や州から補助金交付がされている。連邦からの補助金がこのフォーミュラ補助金であり、州との協調補助である。
・この補助制度は、バス、鉄軌道、パラトランジットなど広範囲のモードの資本費を対象に補助しており、一部の例外を除き、運営費に充てられないものとされている。
○感染拡大後の交通機関への財政支援
・感染拡大以降、米国では累次の大型財政出動がなされた。
・昨年3月のCARES法は2.2兆ドルという米国史上最大規模の広範囲にわたる経済対策であり、策定の発表がされてから約10日で成立したというスピードの速さに特徴があった。
・交通関係ではエアラインへの支援が経済対策全体の中でも主要項目として取り扱われた。他の各モードにおいても、年間予算を大きく超える水準の規模で措置されている。
・昨年12月の0.9兆ドルの経済対策法は、基本的にCARES法の措置の延長である。
・今年3月の1.9兆ドルの経済対策法は、バイデン大統領政権が成立後ということもあり、対策規模・内容の両面で民主党の財政政策への考え方(大きな政府、弱者保護)が色濃く反映されるものとなり、それまでの2回とは異なり超党派で成立させることができなかった。
・交通関係の措置は、内容や規模も含めて、概ね業界からも好意的に受け止められている。
・公共交通に関する支援措置は、連邦補助率の100%への嵩上げ、営業費への使途拡大を認めるなど、フォーミュラ補助金の制度を基に、拡充する形で措置された。事業者にとっては、この補助金が、失った運賃収入を穴埋めするものとして機能した。
・他のモードへの支援も、既存制度の一部改正(公共交通、アムトラック、空港)、新制度の創設(航空旅客会社、大型バス等)など、前例にとらわれず、柔軟な方策がとられている。
○交通関係事業者団体による働きかけ
・全米公共交通協会(APTA)は、議会において支援策の検討がされている時期に、会員向けメーリングリストで議員への働きかけを呼び掛けたり、時宜を得たプレスリリースの発信により効果的な働きかけを実施していた。
・ワシントンDC交通局(WMATA)は、地下鉄・バス路線の運行削減、地下鉄駅の廃止などを個別・具体的に検討し、議会において追加的な財政支援策を検討中の時期にその検討内容を発表することで、世論を喚起していた。
・米国の大手航空会社による事業者団体Airline for Americaは、パンデミックによる影響発生直後から、“Tracking the Impacts of COVID-19”と称して、データ整理・ビジュアル化しており、ホームページ公開している。最新の営業基本データの掲載に加え、他業界との影響比較などもされている。
○日本における交通機関への財政支援との比較
・日本政府はパンデミック後3度にわたり補正予算を編成し、合計約73兆円の追加支出を行っている。10兆円を超える補正予算が組まれたのは過去数回であり、昨年度は極めて大きな措置がされた。
・米国連邦政府は、その日本と比べても約8倍程度となる、積極的な財政政策を行っている。
・日本の交通事業者への経営支援(予算措置)は、米国のように幅広く行うのではなく、特に状況が厳しい「地域公共交通」にターゲットを絞ったものとなっている。(地域公共交通における感染拡大防止対策(2次補正138億円)、地域公共交通の活性化・継続(3次補正305億円)など。)
○まとめ
・米国は、平時から公共交通の資本投資等を予算を用いて支援しているなど、日本とはそもそもの制度が異なっている。
・米国社会は感染拡大による影響を受け、変容している。それによりバス・鉄道等の旅客交通が受けている影響も、概ね日本より大きい。
・米国では、日本以上に積極的な財政政策が取られている。交通事業者への支援についても、営業費用への補助、連邦補助率の嵩上げなど、異例の措置が取られている。
・日本においては、感染拡大が各モードにもたらす影響、既存支援措置の効果を適時に見極めた上で、自国の実情にあった支援がされるべき。
・ただ、米国において業界団体の要望等に基づく支援がされているのは事実であり、事業者等と立法府・政府との間で、効果的なコミュニケーションが行われている点は、日本においても学ぶべきところがあるのではないか。
その後、コメンテーターの政策研究大学院大学の日比野直彦教授からは、沖本主任研究員の発表に対し、
−コロナ禍の中、多くの人が関心を持つ、時宜を得たテーマである
-航空等はこれまでに様々な報告がなされているが、あまり情報が得られていない都市内の公共交通にも着目していることは高く評価できる
-米国における公共交通への財政支援の実績が詳細に調べてある有益な内容である
-支援の実績に加え、その経緯は、日本への提言に向けては重要である
-米国と日本では、そもそも多くの違いがある。文化の違い等も踏まえて結果を捉えることが重要である
とのコメントがありました。
また、東京の状況について、日比野教授が行われている研究の紹介がありました。自動改札データと定期券情報を用い、コロナ禍における鉄道利用者の通勤行動の変化、さらには、テレワークの進展が都市鉄道需要に与える影響について分析をなされており、いくつかの研究結果を示していただきました。
・定期券利用者については、利用者の減少が約1割、利用頻度の減少が約2割(→定期外に移行)、ほぼ利用頻度の変化なしが約7割であること
・テレワークの進展による行動の変化は、これまでほぼ毎日鉄道を利用していた人でも多く発生していること
・テレワークの進展は勤務地側の特徴に影響すること
・乗車時刻の変化はほぼ見られなかったこと
・東京都区内から横浜、さいたま等に移転が見られたこと
等が説明されました。
また、コロナ下禍での変化を踏まえ、コロナ後の変化として、テレワークの進展により鉄道利用者数の減少すること、乗車時刻の変化が見られなかったことからコロナ禍により減少した需要の戻りはラッシュ時間帯であることが予想されることから、「収入減にもかかわらず混雑対策を必要とされる」ことを示唆されました。
この結果を踏まえ、東京圏の鉄道事業者に対する支援に関しては、コロナ対策の政策の影響による鉄道利用者減少分に対する一時的な財政支援よりも、長期的に考えれば、柔軟な運賃設定、混雑対策等への支援が重要である旨の指摘がありました。さらに、需要の時間分散、逆輸送等のためにも「サテライトオフィスやコーワーキングスペースの整備、それらと鉄道利用との連携」が重要であること、「定期外利用者の回復に向け沿線の関連事業の充実」も重要であるとの意見がありました。
また、以上のコメントに併せて、日比野教授からは以下の質問がありました。
【質問】
①支援に至る経緯は? どこが主導して導入されたのか? 米国に滞在しているからこそ知り得る情報を教えていただきたい。
②大統領選挙の影響はどのようなものであったのか?
③日本では、どのようにすべきと考えているのか?
この質問に対し、沖本主任研究員は以下のとおり回答しました。
①業界が、早い段階から、様々なレベルで立法府への働きかけを実施。一例としては、航空事業者への支援策のため、経営者層や事業者団体からはもちろん、並行して客室乗務員協会等の労働組合からの働きかけも行われた。それが、支援への超党派的支持を形成したと考えられる。
②昨年11月の選挙で、大統領、両院の議会多数勢力がともに民主党となり、以降2回の経済対策には、一定程度、民主党色は出ている。国内経済政策について、伝統的には、共和党は「小さな政府」「減税、歳出削減」、民主党は「大きな政府」「(富裕層への)増税、積極歳出で富の再分配重視」という対立軸があり、公共交通は一つの象徴的な分野。また、民主党の別の重点政策であるCO2削減にも資するもの。一方で、議会の多数党・政権党に関わらず、公共交通への支援は一定程度継続的に行われている。
③「パンデミックによる影響で経営がどのように厳しくなっているか。既に日本で行われている経済対策等でカバーできないのか。」を、各モードの事業者が確認するところから検討を開始すべきではないか。米国の支援措置状況を踏まえると、モードとしては、航空事業者、中小規模の公共交通事業者、また事業者の経営活動としては、資本投資への影響が懸念点。
最後に視聴者からも質問を受け付け、日米の公共交通事業主体の違い、米国での公共交通を忌避する風潮の有無、ポストコロナの行動変容に関する議論の動向、行政等と業界の議論の場、国内の観光需要等の最新状況などについて議論がなされました。