アメリカ航空産業の現状と今後の展望 ~トランプ政権下における航空政策及び旅客手続きの円滑化施策~
- 航空・空港
航空セミナー
主催 | 一般財団法人運輸総合研究所 航空政策研究会 |
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日時 | 2017/11/7(火)18:30~20:30 |
会場・開催形式 | 航空会館 7階 大ホール (東京) |
開催概要
2017年1月、米国でトランプ新政権が発足し、「Make America Great Again」をスローガンに、アメリカ国民の安全や雇用を最優先課題とする「America First (米国第一主義)」を基本方針として、アメリカ軍の軍備増強やテロ対策など国防・安全保障政策、メキシコ国境の壁建設など反移民政策、TPP脱退など保護主義的な通商政策を展開するとともに、規制緩和・大型減税・インフラ投資を3本柱とするトランプノミクスを指向するなど、従来の政権とは異なるアプローチでの様々な政策を推進しています。トランプ政権下の航空政策においても、新政権の基本方針に基づく各種施策が検討・実施されており、中東・北アフリカ諸国から米国への渡航禁止令の発令や、大型電子機器の機内持込禁止措置の実施により航空会社等に大きな影響を与えるとともに、老朽化した交通インフラの整備など官民で1兆ドル規模のインフラ投資計画や、米国連邦航空局が所管する航空管制の民営化等が検討されています。
また、米国等の空港では、航空テロ対策を強化する一方で、生体認証等の最新技術を活用した旅客手続の効率化のための施策が検討・実施されています。
研究報告では、トランプ政権下における航空政策、及び旅客手続きの円滑化施策の現状を報告するとともに、以下の課題を提示しました。
- トランプ政権発足以来、中東と北アフリカ諸国という特定の標的を対象とした政策が推 進されてきたが、連邦裁判所の差止判決等により、政策の見直しが迫られてきている。
- 1兆ドル規模のインフラ投資計画は、トランプ政権の看板政策の1つであるが、インフラ関連の許認可期間の短縮に係る大統領令は発出された一方、当初の目玉であった航空管制の民営化は、米議会で賛成派と反対派の間で合意に至らずに結論が先送りされ、今後の進展が見通せない状況。
- オバマケア廃止の失敗や、国防・国土安全保障関係以外の予算削減に対する米議会での反対等により、財源確保が難航しており、具体的な空港プロジェクト等が示されていないなど、具体的成果が乏しい現状。
- 緊張が高まる北朝鮮情勢、依然不安定な中東情勢、テロ事件の欧州等での頻発等を背景として、国防・安全保障の強化はトランプ政権の最優先課題となっている。今後とも航空分野のセキュリティ政策を拡充する方向にあると考えられ、これに適切に対応していくことが、安定的な米国便の運航に重要ではないか。
- 米国等では、生体認証など最新技術を活用した航空旅客の手続きの円滑化のための様々な施策が検討・導入されている。日本の空港でもこのような施策の導入について検討・実施すべきではないか。
- トランプ政権の航空政策等については、場当たり的でポピュリズムに基づくものであり、不確実性が大きいのではないか。
- 中東諸国とのオープンスカイ政策の再検討については、米国大手航空会社が世論を喚起し、トランプ政権の支持層の賛同を得ることができれば、動き出す可能性があるのではないか。
- 連邦航空局が所管する航空管制の民営化については、エアラインの支持をどのように得る かがポイントではないか。米国では空港の民営化が進んでいないが、その一つの要因はエアラインの反対である。
- 顔認証技術を活用した旅客手続きの円滑化施策については、世界の空港での潮流となっており、2017年10月から羽田空港で導入を開始し、2018年4月から成田空港で導入を開始予定であるが、一連の旅客手続きの全てに顔認証技術を導入することは、大規模空港では膨大な数の機器を設置する必要があり、実際には相当困難ではないか。
- 米国で試験運用が行われているCTスキャンを活用した機内持込手荷物の検査機器等については、起業家精神がイノベーションを促進しているのではないか。
- 米国の航空産業はダイナミックに動いていて変化が大きく、国際線のイールドが低下する中、米国大手航空会社のジョイントベンチャー等について引き続き注視していくことが重要である。
- 米国のLCCは、従来型から進化したLCCと原点回帰のULCCへの二極化が進行していると考えられる。
など、多様な論点について議論が展開されました。
主な参加者
参加者数:128名
プログラム
第一部:研究報告 |
坂本 弘毅 |
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第二部:パネルディスカッション |
モデレーター |