新興国大都市圏の交通改善に関する知の拠点づくり

  • 調査研究事業(日本財団助成)

研究期間:2019 -

渡邉 敬 高橋 慶江 古田 健一

研究概要

<2019年度>
インド・東南アジア地域などの新興国大都市圏の深刻な交通渋滞問題の解決のために都市鉄道、BRTなど公共交通の導入が進められているが、その解決までには、多くの課題が存在している。公共交通の導入に必要とされる資金は膨大であるため、政府財政負担を減らす等の目的でPPPプロジェクトにおける民間セクターの役割に過度に期待した結果、想定外の事態(需要予測、運賃設定における見込み違い等)の発生を抑制できず失敗に至ったケースが散見されているなど、交通政策決定、公共交通導入計画策定、交通運用改善などの各段階における意思決定過程において、必ずしも合理的な判断がなされていないのが現状である。

その主な原因としては、

 ・公共交通PPPプロジェクトにおけるリスクに対応するための知見が政策決定等の意思決定過程で十分に活かされていない。  ・データに基づく合理的な思考により交通に関する政策課題等を解決する人材や解決策に関連する情報が不足している。
 ・交通に関する統計が十分に整備されていないこと等により、合理的な思考に必要なデータが不足している。

という点が考えられる。
これに対する解決策案として、

 ・公共交通に関する政策決定者の支援をする政府系研究機関等に対し、PPPプロジェクトにおけるリスクに対応するための知見を提供することが必要である。
 ・交通に関する政策課題等の解決に向けた統計的な思考力を備えた人材を育成することが考えられる。
 ・また、多様なデータを活用した、新興国の実情に合わせた課題解決策に関連する情報を把握することが重要である。
 ・このためには民間等が保有する未活用データを含め、課題解決に資するデータの活用に関する官民の連携を強化することが求められる。

このような状況に鑑み、近年、我が国だけでなく、アジア全体においても携帯電話およびスマートフォンが急激に普及してきており、それに伴いモバイルに関するビッグデータが着目を集めている状況にある。その一方、交通分野においては、いまだに我が国においても多くの交通計画が紙媒体による対面形式などのアンケート調査に基づいて策定されている状況であり、交通分野における交通統計の構築には莫大なコストと時間を要している。  本調査研究では、このモバイルによって収集されるビッグデータをはじめとして、多種多様なデータを交通統計に活用できないかという点に着目し、検討を進めたものである。
2019年度においては、タイ・バンコクを主要ターゲットとし、実際にタイでMBDの収集に向けた取り組みを進めてきた。本報告書はその経緯や、今後の展望についてまとめたものである。

〈2020年度〉
ASEAN各国では、経済成長に伴い、食生活が多様化、消費生活様式が変化しており、コールドチェーン物流の重要性が高まっているが、現状では、安価ではあるものの低品質なサービスが提供されており、食の安全性の低下、輸送段階における食料の廃棄率の高さなどの課題を解決する必要がある。また、域内での我が国物流事業者の現地での競争力を一層高めていくためには、我が国の物流サービスを国際標準化する等、優れたサービスが適切に評価されるコールドチェーン市場の構築も図っていく必要がある。

本研究では、国土交通省等日本政府と物流事業者が連携して策定したB to Bに関するコールドチェーン物流サービス規格「JSA-S1004」について、ASEAN各国における普及を促進するため、国土交通省と連携し、ASEANの中でも経済成長に伴い所得水準の向上や食生活の多様化が著しく、コールドチェーン物流需要が高い5か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)を中心に、同地域で展開をしている我が国物流事業者や現地物流事業者のコールドチェーン物流サービスの実態や現地認証制度に関する調査を行い、同規格の認証体制の整備、認証審査ガイドラインの策定等に関する検討を行う。


;新興国大都市圏の交通改善に関する知の拠点づくり(2019) 報告書